2012年9月27日
《来月、世界一の美少女が来日します》
このような表記だったと思う。
普段、通勤で使用している地下鉄の階段の途中にあった宣伝予告だった。
暫し時間が経ってしまったが、過日、上野にある東京都美術館で開催されていた『マウリッツハイ
ス美術館展』(現在は終了)に行ってきた。
訪れたタイミングがわるかったせいか、博物館の外まで長い行列…館内に入ってもまだ並んでいると
いう盛況振りだった。
ゆうに一時間は待ったと思う。
お目当ては当然のごとく、巨匠フェルメールの傑作『真珠の耳飾りの少女』である。
ライスダールやレンブラントの作品を鑑賞し、1Fの奥に彼女はいた。
その前を多くの人々が係員の誘導に従いながら、一瞬の出会いに遭遇する。
多く来場者のため、実際は立ち止まって鑑賞することはできず、規制ロープに沿って見ながら歩いて
通りすぎると言った感じだった。
まさに一瞬だった。その間にどれだけ多くの人と目があっただろう。
青いターバンを巻いた真珠耳の耳飾りをした少女が、物憂げにこちらを見ている。
背景には何もない。
そして口が開いているようにも見える。何か語りかけているのだろうか。
いつの時代でどんな状況か。今、何をしているのか。
問い返そうとしても、すでに彼女は筆者から次の訪問者に視線を移していた。
何世紀にもわたり彼女は見るものに問いかける。
おそらくはもう逢えない。
世紀の出逢いは感動だけではなく、どこか愁いがつきまとう。
最後に列を外れた後も、遠目から彼女を眺めた。
美術館で長居したのも筆者にとってめずらしかった。
もし、彼女が天真爛漫な笑顔の被写体だったら、ここまで名画と謳われなかったかもしれない。
館内から退出した後も外にはまだ行列が続いていた。
無意味な憶測をする前に美術館を後にした。
【通りすがりの職員T】