今年3月で東日本大震災発生からから9年が経過しましたが、昨年は日本全体を大型台風が相次いで発生し、震災被災地域以外の広い範囲にも大きな災害が及びました。東日本大震災の被災地域では、復興支援から地域福祉・日常生活支援に移りつつあります。
今回は、宮城県社会福祉士会が取組んできた多職種でのチームケアを通じ、災害時の被災者支援活動についてお話を伺ってきた際の模様をお伝えします。
【ご協力頂いた方】
〇一般社団法人宮城県社会福祉士会
常任理事(地域福祉・災害対策委員会委員長)西澤 英之 様
【取材場所】
〇南中山地域包括支援センター(宮城県仙台市泉区南中山 3-2-15)
【訪問日時】
〇令和2年3月18日(水)12:00~13:30
■宮城県サポートセンター支援事務所の活動
「宮城県サポートセンター支援事務所」は、東日本大震災発生後、宮城県社会福祉士会が宮城県から委託を受け2011年9月に開設されました。
宮城県サポートセンター支援事務所が設立された目的は、仮設住宅に暮らす人たち見守りや生活相談・サロン活動などを行うサポートセンターやそのスタッフ(LSA等)へのバックアップを行うことでした。
その後今日まで、協力団体と連携・協働しながら「福祉コミュニティ創生・再生」「そのための体制整備」などの支援活動を継続しております。
●宮城県サポートセンター支援事務所の概要
〇設置者:宮城県(一般社団法人宮城県社会福祉士会に運営委託)
〇開設:2011年9月5日(月)
〇住所:宮城県仙台市青葉区本町3-7-4宮城県社会福祉士会館3階
〇TEL:022-217-1617 〇FAX:022-217-1601
〇関連機関:一般社団法人 パーソナルサポートセンター/社会福祉法人 宮城県社会福祉協議会/仙台弁護士会/宮城県ケアマネジャー協会/宮城県/宮城復興局 ほか
【リンク】宮城県サポートセンターホームページ
●宮城県サポートセンター支援事務所の事業内容(令和元年度)
①被災者支援の取組報告と今後の被災地のコミュニティ形成に向けた提言 ②地域福祉コーデイネート研修等の実施 ③アドバイザー、コーデイネーターの活動 ④専門職派遣(サポ弁ほか) ⑤市域福祉マネジメント研究会の開催 ⑥各支援者と連携しての被災者支援・協働化とネットワーク化 ⑦定例会議開催等 ⑧熊本地震、西日本豪雨等の被災者支援に係る支援者等との連携強化 |
●一般社団法人宮城県社会福祉士会の概要
〇本部住所:宮城県仙台市青葉区三条町10-19 PROP三条館
〇TEL:022-233-0896 ○FAX:022-393-6296
〇沿革:平成4年(宮城県社会福祉士会として発足)/平成20年12月一般社団法人化
〇正会員数:596名(H31年3月31日現在)※出典:日本社会福祉士会データ
〇組織体制:事務局/法人対策委員会/災害支援委員会/研修委員会/障害支援委員会/実習指導委員会/ぱあとなあ宮城権利擁護センター/地域包括支援センター支援委員会
【リンク】一般社団法人宮城県社会福祉士会ホームページ
■2019年台風19号豪雨の被害状況
令和元年10月12日、大型で強い台風19号(ハギビス)は午後7時前に伊豆半島に上陸した後、各地に記録的な強風と大雨をもたらしながら北上し、翌13日朝に福島県付近から太平洋に抜けました。
記録的豪雨により各地で浸水や土砂崩れが発生し、関東・東北地方を中心に計140箇所で堤防が決壊するなど、多くの河川が氾濫しました。また、人的被害も大きく、100名を超える多数の死傷者や、3,000棟(全壊)を超える住家被害も出ました。
※出典:総務省消防庁(令和2年2月12日現在)
●宮城県内の被害状況
人的被害 | 死者 | 19人 |
行方不明者 | 2人 | |
重傷者 | 8人 | |
軽傷者 | 35人 | |
住家被害 | 全壊 | 304棟 |
半壊 | 2,974棟 | |
一部破損 | 2,718棟 | |
床上浸水 | 1,587棟 | |
床下浸水 | 12,300棟 | |
非住家被害 | 公共建物 | 17棟 |
その他 | 61棟 | |
罹災証明交付 | 10,731件 | 交付率101.0% |
※出典:宮城県総務部危機対策課(令和2年3月2日現在)
■被災地でのチーム活動
宮城県社会福祉士会をはじめ、宮城県・県社会福祉協議会など56団体で構成する県災害福祉広域支援ネットワークは、2019年台風19号で甚大な被害を受けた丸森町のほか、大崎市鹿島台の避難所・旧鹿島台第二小学校に、介護福祉士や社会福祉士などから構成された「県災害派遣福祉チーム(DWAT)」を派遣し、被災地域での支援活動を行いました。
●DWATとは?
DWATとは、「Disaster Welfare Assistance Team」の略で、災害発生にともない、避難所で生活する災害時要配慮者(高齢者や障がい者・子ども等)に対し、福祉支援を行う、民間の福祉専門職で構成されたチームのことです。
今回派遣されたDWATの事務局は、宮城県社会福祉協議会に置かれ、旧鹿島台第二小学校避難所では、避難所開設から15日目の2019年10月26日(土)からチーム支援の活動を開始しました。
DWATでの支援活動は、11月11日(月)までの計17日間にわたり、終結後は大崎市鹿島台地区の社会福祉協議会職員や市職員の方に引き継がれました。
●DWATの初期派遣活動(宮城県伊具郡丸森町)
10月13日(日) | 宮城県担当者や宮城県災害福祉広域ネットワーク事務局担当者と連絡を取り、初期派遣として被災地に赴く事の連絡調整を行う。 |
10月14日(月) | 宮城県社会福祉士会地域福祉・災害対策委員会として、委員1名と丸森町に向かう。現地状況確認と福祉専門職員の安否確認を行う。 |
10月15日(火) | 改めてDWATの初期派遣として、派遣指示書に基づき宮城県社協事務局1名(他1名)と丸森町に向かい、宮城県より事前連絡済の避難所を担当する地域包括支援センター所長と面談を行う。 |
●大崎市での活動
10月26日(土)より、宮城県社会福祉士会・宮城県社会福祉協議会事務局・地域包括支援センター(大崎市社会福祉協議会)などのメンバーからなるDWATが現地である旧鹿島台第二小学校避難所に入り、支援を開始しました。
17日間に及ぶ活動期間を1~4のクールに分け、複数の専門職の人たちが相談支援を担いました。
DWATのチーム活動が終結した後は、大崎市社会福祉協議会職員・地域包括支援センター職員が日中の支援を行い、夕方は大崎市の保健師が支援を行う形で引継がれました。
■避難所での支援活動を通じて得た所感と今後の課題
●第3クール活動の所感
〇環境整備等による生活環境の向上とあいまって、被災者同士の関係性がそれぞれの生活機能の維持に好影響を及ぼしていると感じた。
〇一方で、今後みなし仮説等への移住により、コミュニティの変化や崩壊等による身体面・精神面での活動低下が危惧される。 |
●第4クール活動の所感
〇健康状態の他、精神的なサポートも支援者間ミーティング等で共有できた事が良かった。
〇単身での避難者もいたため、夕食時の孤食が気になっていたが、テレビのある場所等に集いの場を作ったところ、配布された弁当を持ち寄って食事をする姿が見られた。 |
●今後の課題
最後に、今回のDWAT派遣の経験を踏まえた災害時の専門職チーム支援について、次の様な課題を挙げていました。
①派遣登録者及び実働可能な専門職の確保
②平時からの防災計画・防災訓練を通じた派遣チームの定着
③社会福祉士会より派遣した社会福祉士の保証
文責:中央支部広報公益委員会