今回は、東京の地産地消を掲げ、都市農園と地域をつなぐことで社会貢献を目差す「東京いちば」を運営するサンタ・カンパニー合同会社が、地域包括支援センターと共催する「白金deオレンジカフェ」の現地に伺った際の模様をお伝えします。
このイベントは、優っくり村高輪台を会場にした、東京地産の新鮮野菜を直売する東京いちばと、地域の区民が自由に来訪できるオレンジカフェ(認知症に関する相談会)の合同プログラムとなります。
地域包括支援センターは高輪地区を管轄とする港区立地域包括支援センター白金の森、会場となった優っくり村高輪台は、小規模多機能介護と認知症グループホーム、区民協働スペースが整備された複合施設で、共に社会福祉法人奉優会が運営(地域包括支援センターは指定管理者)しています。
「白金deオレンジカフェ」は、マルシェとオレンジカフェを同時開催することにより、区民の方に認知症に関する相談がしやすい環境を創り出す効果が期待されます。
【ご協力頂いた方】
〇サンタ・カンパニー合同会社 代表 大串 哲人 様
【取材場所】
〇優っくり村高輪台(東京都港区高輪3-10-16)
【取材日時】
〇令和5年3月22日(水)15時~17時
■都市農園の現状
●減少が進む農地と高齢化が進む農業者
農地は、東京都の生活者に多くの役割を果たしている一方で、都内の農地は都市化の影響や相続などを契機として年々減少を続けています。
都内では、平成17年からの10年間で1,210haの農地が失われ、平成27年の農地面積は7,130ha(減少率 14.5%)となっています。
特に、宅地化農地の減少率は38.3%で、都市部農地の減少傾向は今後も続くと考えられます。
また、東京の農業者の平均年齢は63.9歳(平成27年)で、10年間で3.3歳上昇し、高齢化が進んでいます。しかしながら、新品種や新技術の導入、販路の開拓など、創意工夫による経営改善に取り組む農業者は増加しています。
●意欲的な農業者の増加
東京都では、都市農業に対する施設整備費補助を柱とする「都市農業パワーアップ事業(平成22年度~平成27年度)」「都市農業活性化支援事業(平成28年度から)」を実施しています。
この様な自治体の支援の効果もあり、区市町村の認定を受けて経営改善に取り組む「認定農業者」は1,506経営体(平成28年3月現在)となっており、10年間で2.1倍に増加し、地域の農業を支える農業者として期待されています。
大串さんは、サンタ・カンパニーの事業を通じて「東京の都市農業を守るためにも、東京の人に東京の野菜をもっと食べて欲しい。」との想いで、活動を行っています。
*出典:サンタ・カンパニー調査/東京都産業労働局農林水産部農業振興課 資料
■「東京いちば」の概要
「東京いちば」は、サンタ・カンパニー合同会社が運営する、福祉施設を拠点に東京の地産地消を掲げ、農産物の定期配送、直売(tokyoマルシェ)、ネット販売を展開しています。
東京いちばのコンセプトのひとつとして、東京都内の採れたて新鮮野菜を都内の高齢者福祉施設を通じて、地域住民へ提供し、地元東京の土でできる味わいを楽しんでいただき良さを再確認もしくは発見してもらうことです。
tokyoマルシェでは、高齢者福祉施設のご利用者が接客などの手伝いをしたり、福祉施設が展開する子ども食堂との共同開催、施設のケアマネや地域包括支援センターなどが開催する地域向けのセミナーや認知症予防などの啓蒙活動との協業といった、通常の直売と異なり、施設と地域とをつなぐ拠点としての役割も担っています。
この様に、東京いちばでは「地域と人をつなぐ」支援を行い社会へ貢献することを目指しています。
● 組織の概要
〇運営主体:サンタ・カンパニー合同会社
〇代表者:大串 哲人 様
〇本部:東京都小金井市桜町2-4-11-202
〇主な事業内容:ベジ・デリバリー、地域密着型EC、マルシェ・収穫体験の企画運営、地域密着型ネット通販
〇設立:2019年7月
〇e-mail:info@santa-company.jp
■「白金deオレンジカフェ」の内容
●イベント概要
〇名称:白金deオレンジカフェ
〇内容:認知症に関する相談会と東京都産野菜の直売会〇開催日時:2023年3月22日(水)午後2時30分~午後4時
〇会場:優っくり村高輪台(東京都港区高輪3-10-16)
〇費用:無料
〇共催:港区立地域包括支援センター白金の森/サンタ・カンパニー合同会社
●tokyoマルシェ
「tokyoマルシェ」は、サンタ・カンパニー合同会社が運営する東京産新鮮野菜の直売会です。その日の朝に収穫した野菜をその日の午後に販売します。
都内高齢者福祉施設の敷地内で地域住民と施設利用者や職員など関係者に向け、採れたて野菜を販売しています。
目的は、地域のケア拠点である高齢者福祉施設が東京都産野菜により、地域住民と食を通じて交流を図る、「地域密着型マルシェ」です。
コロナ禍の2020年9月に第一回目のマルシェを世田谷区にある高齢者施設で開催しましたが、商品は2時間程で完売しイベントは大盛況でした。現在では都内各所(文京区・北区・港区、調布市)へ会場を拡げています。
■当日の模様
●暖かく晴天の下開催
当日は、晴天の桜満開時期ということもあり、その日の朝採れた新鮮野菜を販売するマルシェには、オープン早々多くの方が来場していました。
同時開催のオレンジカフェの利用者・職員などの関係者の方々もマルシェに来られ、「市場らしい」にぎわいのある現場となりました。
オレンジカフェを主催する優っくり村高輪台では、運営法人の理念のもと、利用者である認知症など介護が必要な高齢者の方に、サービスを受けるだけの参加ではなく、自らも主催者の立場でとして主体的に参加することが、社会参加であり本人の活性化にもつながると考えた運営を行っています。
当日も利用者の方が、マルシェの運営補助を行う場面も見られました。
また、マルシェには、近隣居住者の方や常連のお客様も来られ、商売を通じた身近な地域交流がしっかり形になっていました。
■今後の展望
●東京いちばの目標は「地域の課題解決が私たちのゴール」
東京いちばでは、これまでの地域活動の中で感じている身近な社会課題の解決に取り組むため、そしてSDGsの達成に向け、これからも事業を通じ何ができるかを考え各種プログラムを実施していきます。
●「tokyoマルシェ」「収穫体験」など各種プログラムも継続
tokyoマルシェは、都内複数の拠点で開催していますが、今後も高齢者施設等を会場としてオレンジカフェと同時開催のプログラムに力を入れていく予定です。
また、新型コロナウィルス感染症の影響で収穫体験のプログラムなどは活動自粛中でしたが、感染状況の緩和傾向を考慮し徐々に再開する予定です。
(文責:広報公益委員会)