今回は、当協会(公益社団法人全日本不動産協会)宮城県本部を訪問し、東日本大震災からの復興状況や、地元支部として取組む支援活動などについて、お話を伺ってきた模様をお伝え致します。宮城県本部への訪問は2016年2月以来8年ぶりとなります。

私ども中央支部では、これまで東日本大震災が発生した2013年から、不定期で地元の皆さまに復興過程の活動状況について取材を通じてお話を伺ってきましたが、東日本大震災が発生した5年後に熊本地震が発生し、また今年の元日には能登半島地震が発生し地元地域には甚大な被害を及ぼしております。

皆さんが行ってきた復興支援から日常生活のリカバリーへ向けた活動を通じて、これらの軌跡や課題に向き合う姿勢を共に学んでいくことが出来れば幸いです。

 

(宮城県庁の向かい側の立地にある全日本不動産宮城会館)

 


 

【ご協力頂いた方】

○公益社団法人全日本不動産協会 宮城県本部     本部長 佐藤 昌市 様

○公益社団法人全日本不動産協会 宮城県本部    副本部長 小林 英樹 様

○公益社団法人全日本不動産協会 宮城県本部      理事 佐藤  寛 様

○公益社団法人全日本不動産協会 宮城県本部 事務局  局長 工藤 祐介 様

【取材場所】

○全日本不動産宮城会館会議室(宮城県仙台市青葉区上杉1丁目4番1号4階)

【訪問日時】

○令和6年1月12日(金)13時00分~14時30分

 

■全日本不動産協会宮城県本部の概要

●創立60周年を迎えた組織体制

宮城県本部は、昭和38年11月の設立から昨年60周年を迎えました。宮城県本部は約226万人(令和5年12月現在)が暮らす宮城県民の生活に資する不動産に関する公益事業や地域に貢献する様々な活動を行ってきました。

平成29年3月には、より一層地域に根差した活動を行っていける様に、これまで賃貸で使用してきた事務所ビルを取得し、名称を「全日本不動産宮城会館」としました。

○設立:昭和38年11月25日

○所在:宮城県仙台市青葉区上杉1丁目4番1号 全日本不動産宮城会館4階

○TEL:022-266-3358 

○本部長:佐藤昌市 氏

○組織:北ブロック/中ブロック/南ブロック/全日宮城青年部会/全日宮城女性部会

○会員数:799社(令和6年1月現在)

○事業内容:不動産に関する調査研究・情報の収集/宅地建物取引業者に対する研修・指導/災害の被災者その他の社会貢献活動 ほか

【リンク】公益社団法人全日本不動産協会宮城県本部WEBサイト

 

■宮城県における東日本大震災関連被害の状況等

東日本大震災(地震名「平成23年東北地方太平洋沖地震」)は、平成23(2011)年3月11日午後2時46分に三陸沖で発生しました。宮城県栗原市では最大震度7が観測されたほか、広範囲で強い揺れや大津波が発生し沿岸地域をはじめ甚大な被害をもたらしました。

 宮城県おける東日本大震災の被害状況等

*出所:宮城県復興・危機管理部防災推進課危機対策班資料(令和5年10月11日公表)

人的被害

死者(直接死・関連死)

行方不明者

重傷

軽傷

10,571人

1,215人

502人

3,615人

住家・非住家被害

全壊

半壊

一部破損

床下浸水

非住家被害

83,005棟

155,131棟

224,202棟

7,796棟

26,796棟

被害額

(令和3年9月30日確定)

9兆968億円

 

■宮城県本部が取組んできた復興支援と活動で得た課題

●地域における官民連携・専門機関との機能連携

宮城県本部では、東日本大震災発生当時から被災者らへの復興支援策として、宮城県・仙台市など各自治体や商工会議所・他住宅関連団体等との連携を図りながらこれまで地域の復興支援を行ってきました。
具体的な支援としては、自治体との連絡協議会を定期的に持ち、応急仮設住宅(民間賃貸住宅借上)情報の提供・無料不動産相談会の開催・もちつき大会などの地域イベントへの参加など多様な形を継続的に展開しています。
また、これら東日本大震災の復興支援に加え、平成27年年9月に発生した「関東・東北豪雨」の被災者支援の一環として、宮城県へ義援金の拠出も行いました。

 ●沿岸部の復興にはまだ時間が必要

東日本大震災の発生から今年の3月で13年が経過しますが、被害の大きかった宮城県沿岸部では昔の生活を取り戻すまでの課題が大きく、まだまだ復興には時間が必要と考えられます。

沿岸地域では、住宅や事業所の建設に制限が課せられているエリアも多く、被災地区の街並み整備の遅滞だけでなく、それが起因となり産業の未整備から地元経済の停滞が続き、復興を阻害している現状もあります。

その他、沿岸地域の水産加工等の産業に従事する働き手が不足しており、外国人労働者を招いても、彼らは災害住宅の入居要件に該当せず、人材が定着しない課題などもみられます。

これらの課題に対しては、日政連(全日本不動産政治連盟)を通じ宮城県本部では、地元自治体に公的支援を働きかけていますが、真剣に課題解決を実現させるためには国を動かし、実効性のある支援制度を作り上げる必要があると感じています。

 

(東日本大震災発生後に宮城県本部で開催された「理事会」の模様 2011年3月当時)

(宮城県本部のもとに寄せられた「被災者への支援物資」の模様 2011年3月当時)

(東日本大震災発生後に宮城県本部で開催された「復興支援特別委員会」の模様 2011年9月当時)

(宮城県本部では東日本大震災発生直後から県内各地域の被災地区へ災害対策巡回支援業務を行いました)

(宮城県本部では会員間が連携して東日本大震災発生直後から被災者への住宅斡旋を積極的に行いました)

 

 

■特徴ある地域支援の活動

●青年部会の活動実績

宮城県本部では、平成5年7月から「親会(おやかい)ではできないことを、若くエネルギッシュな推進力で実現し、県本部を盛り上げよう」との想いから有志メンバーからなす「青年部会」を発足させました。初代会長には菊地耕治氏が就任し地域貢献活動を精力的に行ってきました。小林 英樹副本部長は、第七代の青年部会長を務められております。

全日本不動産における全国の青年部会では、横断的な協議体を組織しており、定期的な会合の他、合同青年部会主催のイベント開催や、被災地域への相互支援なども精力的に行っています。

【リンク】公益社団法人全日本不動産協会宮城県本部 青年部会WEBページ

●女性部会の活動実績

宮城県本部のもう一つの特徴は「女性部会」の活動です。

宮城県本部の女性部会は、平成10年12月19日に発足した「カトレアの会」が基となっており、現在まで25年の活動実績があります。
女性部会では、ホワイトリボン活動支援(途上国の妊産婦の健康と生命を守る国際協力運動)をはじめ、女性ならではの視点に立った問題を取り上げた研修会や、気軽に参加できるプチカルチャー教室などを開催しています。
平成25年11月に「全日東北地区女性部会交流会」を開催し、平成26年4月には東北地区で初めて開催された「ウーマンフェスタ」にもブースを出展するなど、活動範囲は更に広がっています。

【リンク】公益社団法人全日本不動産協会宮城県本部 女性部会FBページ

 

(青年部会による宮城県への「公益寄付活動」の模様 2012年2月当時)

 

■60周年誌発行プロジェクト

●新型コロナウィルス感染症のまん延で中断

本来、東日本大震災の発生から10周年の節目を目標に何らかの形で、震災記録をまとめる計画が進められていましたが、2021年は新型コロナウィルス感染症まん延していた時期と重なり、計画は中断されていました。

昨年5月の新型コロナウィルス感染症が5類に引き下げられたタイミングと、宮城県本部の創設60周年を迎える年が合ったタイミングで、震災記録のまとめを公表すると共に記念誌の発行を行うことになりました。

●「震災記録誌」として編纂

平成26年3月に発行された50周年誌では、東日本大震災での体験談なども交えつつ、宮城県本部の50周年の歴史とこれからの活動の紹介したバランスに配慮した構成となっていましたが、60周年誌は「震災記録誌」としての役割を柱とした構成にする予定で、佐藤昌市宮城県本部長と旧知の佐藤仁南三陸町長との震災にまつわるテーマなどについて対談した内容も盛り込まれています。

今回の記念誌は「震災記録誌」なりましたが、これは協会員をはじめ全国各方面支援頂いた多額の義援金の使について、誌面を通じて公表することで、寄付をされた方々へ感謝の意を表したい想いを込めた理由からこの様な構成としました。

「震災記録誌」は、来月開催される60周年記念式典で内容が発表され宮城県本部の会員の方などに進呈される予定です。

 

(平成26年に宮城県本部が発行した「五十周年誌」)

 

 

 

文責:広報公益委員会