前回から引き続き今回も、武蔵野市内で行われている地域の活性化事例(小地域福祉活動の現場訪問)体験ということで、地域居住者の居場所となる住宅にお邪魔してきました。
これまで、何度もお世話になっている武蔵野市福祉公社高齢者総合センター所長様のご紹介の御縁で、本日も取材訪問を実現させて頂きました。心より感謝致します。
また、プロジェクトの皆さんの発案とご厚意で、今回は昼食をご一緒させて頂きました。後のコメントにも通じますが、食事を共にしながら自分の殻を破って近づくことによって、より皆さんの熱意を身近に感じられたと実感しました。
ひびのさんちの理念は、①自由で自然な交流を通じてまち(地域)をつくる ②交流を通じて「人が変わる」環境つくりを支援する という2つの大きなテーマとしています。またこの活動には、前回の取材にも覗えた「都市部における空屋の再活性化」の柱もちゃんと存在しています。
ひびのさんちは、大野田福祉の会で行われる「居場所プロジェクト」の一環で、今年4月にはオープン後7年目に突入しております。地域活動の継続はとても大変なことなので、ここに一番の英知と価値が集約されているのではないかと感心致します。
【取材に協力頂いた方】
○大野田福祉の会 居場所プロジェクトチームの皆様(家主 日比野小夜子 様)
■ ひびのさんちとは?
武蔵野市地域社協の一つである大野田福祉の会が取組んでいる「居場所プロジェクト」の一環で、文字通り地域の方が自由に立ち寄れる寄合所です。
こちらは、家主の方も活動に賛同されご自身も住まいながら、空き部屋などを活用した部分的空き家再活性化事例といえる活動です。
今年4月には開所7年目を迎え、これまで他市・他地域の社会福祉協議会などからも多数視察に訪れるなどの、都市部における居場所づくりの先進事例の一つと言えます。
極力自由に・気楽に地域の方が立ち寄れる居場所をコンセプトとして運営されており、大きなものは目指さず、「運営側」「利用者側」と区別を撤廃することによって皆の負担を抑えることが継続できたポイントになっています。
【ひびのさんちの概要】
○ひびのさんち
○住所:東京都武蔵野市吉祥寺北町4-10-31(JR三鷹駅から徒歩18分)
○事業内容:地域交流所(利用料:無料)
○運営者:大野田福祉の会 居場所プロジェクト
○開設時期:平成21年4月
○開所時間:毎週火曜日 午前11時~午後3時
(建物の外観)
(かわいらしい手製の表札)
■ 大野田福祉の会 居場所プロジェクトの概要
社会福祉法人武蔵野市民社会福祉協議会(市民社協)では、より地域に密着した福祉活動を展開すべく市内13地域を小ブロックに住民組織を構成しています。市民社協では、これら組織を「地域社協(各地域の福祉の会)」を名づけ、地域住民の福祉への関心向上・互助共助を広げる活動を行っています。
大野田福祉の会は、主に吉祥寺北町1~3丁目の一部と吉祥寺東町の一部で活動する組織で、参加する方々は地域の有志ボランティアの皆さんとなっています。
大野田福祉の会では、地域交流・地域生活支援を目的としてこの「居場所プロジェクトチーム」を平成19年に発足させ、気軽に立ち寄り共に食事をし悩みを相談し合い…そんなふれあいの場・居場所として「ひびのさんち」をオープンするに至りました。その後同プロジェクトでは、同様に「みどりの縁がわ(武蔵野市緑町1-5-22)」もオープンしています。
■ ひびのさんちの特徴
1.ハード面:
○オーナーの個人居宅の居住区域(プライベートエリア)以外を活用。オーナーがご子息の独立後独居となった事が、自宅の有休スペース(一部)を地域に開放という形で地域活動に参加するきっかけとなった。
○オーナーは自身の生活の確保と地域活動との棲み分けを、プロジェクトメンバーと共に協議した結果自宅(ひびのさんち)は週一日の開放としている。
○活動のために特段のリフォームは行わず、開放するリビング・ダイニング・客室は現況利用である。
2.ソフト面:
○「従業員・運営スタッフ⇔利用者」という形態はない。オーナー・プロジェクトメンバー・地域居住者が自然な流れで役割を分担している。
○形から入らない運営がコンセプトであるが、概ね一日のイベントは①昼食(炊事・食事・片づけ)②意見交換・相談援助③軽作業(水墨画ほか)などである。
○昼食の食材は当日参加する各自が持ち寄り、台所で全員分を調理する。
○食事をしながら自然な会話を通じ、皆が交流できる雰囲気を作る。
○参加は自由。登録の必要もなければ、参加の予約も不要である。個人情報を管理せず、自己紹介など自分で開示した情報をみんなで共有する。必要以上の情報は求めない。
【事業案内・パンフレット(PDF)】
居場所プロジェクト
みどりの縁がわ・ひびのさんち
■ 運営の方針
「自由で自然な交流」をモットーに運営されています。参加当初あまり心を開かない(開き方がわからない)様な方でも、何回か参加するうちに自然な笑顔や会話が増えるなどのことも多いそうです。プロジェクトの方は、このような現象を自然な交流を通じて「人が変わる」と語っておりました。
また、その自由な文化を継続するため、次のような独自のコンセプトを実践されていました
①各自が持ち寄る食材費は各自負担となるが、参加費は無料で行うため建物(増改築等)・運営費は最小限に抑える。現状はオーナー負担の範囲で運営。
公的又は民間の運営費補助の導入も考えていない。外部から資金調達すると、管理の目が多くなり、自由な運営の文化が損なわれやすいと考えている。
②この事業者は、地域社協の事業としてスタートしているが、同じく自由な運営の文化を続けるため、市民社協とは程よい距離感でお付き合いしている。
③既存の介護サービスの様に制限や、運営者⇔利用者の様な線引きはしない。高齢者・障害者も含め、参加者各自が出来るとこを少しずつやって行けるように支援したい。
(当日頂いた昼食。非常に美味しかったです。さすがですね~)
■ もうひとつのふれあい居場所「みどりの縁がわ」
大野田福祉の会・居場所プロジェクトでは、ひびのさんちの他もう一つ「みどりの縁がわ」も運営しています。ひびのさんちが住宅地の中に位置しているのとは違い、こちらはグリーンパーク商店街の一角に拠点を構えています。
(武蔵野市緑町1-5-22)
この商店街は、当時近隣の団地の設置ともに賑わってきたところですが、団地住民の高齢化や近隣に大手スーパー(京王ストア・サミット)が進出してきた事などが関係して、現在ではいわゆるシャッター商店街になっています。
当初、プロジェクトの方々が2ヵ所目の居場所拠点を探していたところ、ご縁があり閉鎖した1階店舗部分(オーナーご家族の設計事務所のギャラリーと時間別で併用)を貸して頂けることとなり、開所に至ったそうです。
特に大がかりな広告をしている訳ではないですが、商店街の一角である立地からふらっと参加される方も多いとのことです。みどりの縁がわの参加者は、子育て世帯のママさんもいらっしゃって、お子さんの面倒を他の参加者で見ることもあるそうです。また、こちらには普段気軽に集えるコミュニティとしての居場所を見つけにやってきた外国籍の方もいらっしゃるそうです。比較的近いエリアでも、ひびのさんちとも違った文化となっています。
■ 今後の展望は?
今後の大きな目標は特に持たず、日々起こる参加者・地域に関する課題を皆で共有して、一つ一つ解決して行ければ良いと語って頂きました。7年の実績を基に文化を継続させることが目標とのことです。
不動産業界に対しては「地域の不動産オーナーさんで地域交流支援と空き不動産の活用に理解のある方を見つけて欲しいですね。」と希望されていました。
◎おわりに
前回の取材では、事業化も視野に考えた地域活動の現場を訪ねましが、今回は自由で無料な地域活動の現場を拝見させて頂きました。違ったコンセプトもありますが、両方に通じたものは「既存の制度から飛出し自由な交流を支援すること」でした。
また、ハード面をみると「空き家1棟の再利用」「低利用の住宅の部分的利用による再生」「市街地商店街の活性化」など様々なシチュエーションがあったことが興味深く感じれら勉強になった点です。
これからも色々な地域活動の現場を拝見していきたいと考えております。
~誰でも笑顔になれる中央区を目指して~
文責:中央支部広報委員会