「特別企画」矢田美英中央区長インタビュー

~中央区の現状と将来について~

 

■ 中央区の歴史と沿革

本日はお忙しい中、貴重なお時間いただきましてありがとうございます。

早速、インタビューをはじめさせていただきます。まず初めに、中央区の歴史と沿革についてお聞かせ下さい。

1590年(天正18年)に徳川家康が江戸へ入城し、1603年(慶長8年)に神田山(駿河台)を切り開いて豊島洲﨑が埋め立てられ、現在の日本橋浜町から日本橋・京橋・新橋付近に至る江戸の下町一帯ができあがりました。

以来400年以上にわたって中央区は日本の文化・商業・情報の中心として発展を続けてきました。中央区の誕生は昭和22年3月15日です。この年の東京都はそれまでの15区制から22区制(8月には23区制)となり、日本橋区と京橋区が統合されて中央区が誕生しました。

■ 定住人口回復のための施策

平成23年8月1日時点における中央区の人口は119,256人、世帯数は68,909世帯。

平成9年(1997年)には約72,000人だった人口が今や12万に達しようとしています。矢田区長の定住人口回復に対する一貫した政策と遂行力は有名です。矢田区長が推進された定住人口回復の施策と増加の背景についてお聞かせ下さい。

首都東京の中でも、本区は都心中の都心であることから、バブル経済時代はオフィスビルの建設が進み、定住人口の減少が深刻でまちの空洞化を真剣に心配する時代がありました。昭和28年に17万2千人であった本区の人口は、平成9年4月には71,806人まで減少し、定住人口回復はこの時期の区政の最も重要な課題でありました。

昭和62年に初めて中央区長に就任し、翌63年には「定住人口回復対策本部」を設置し、「都心に人が住めるようにしよう」を合言葉に区をあげて住環境の整備を中心に総合的な施策に取り組みました。その結果、平成10年には45年ぶりに人口が上昇に転じ、以来14年連続で力強く増え続け、本年8月1日では119,256人と12万人達成も目前になっています。

◎ 「女性に好かれるまち」を

 中央区は良好な「遊・職・住」環境と世界のブランドが集積した魅力的なまち。

引き続きどのようなまちづくりを推進されますか?

「都心に人が住めるようにしよう」ということで、それに伴う環境作りを徹底し、都心であっても安心して暮らせるまちを目指してきました。

こうした「安全・快適・清潔」なまちは、特に女性の方々に好評で、まさに「女性に好かれるまち」となっています。

今後は、「遊・職・住 世界に発信中央区」という将来像に向けて、安定した財政基盤のもと、あらゆる世代が快適な都心居住を楽しめる気品と風格あるまちづくりを推進していきます。

■ 「地域協働」~「まちづくり協議会」

地域協働の概念は、行政単独では解決できない問題や市民だけでは解決できない問題などがある場合、相互に補い協力しあって課題解決に向けた取り組みをするなど、まちづくりに不可欠なものとして唱えられております。中央区における「地域協働」はどのような内容ですか?

本区は、東京駅前の八重洲、日本橋、銀座などのわが国を代表するオフィス街・繁華街、築地市場という食の拠点、佃、月島、晴海等のウォーターフロントなど、数多くの魅力的なスポットを抱えています。

こうした本区特有の事情から、住宅・都市整備分野については旺盛な民間活力を活かしたまちづくりが基本となっています。市街地再開発事業等の都市整備事業について、区として積極的に支援しているところです。

また、区内を12のブロックに分け、地元町会等地域の代表の方々とともに、「まちづくり協議会」を開催してさまざまな情報共有を行うなど、ソフト面を含めて「地域協働」のまちづくりを推進しています。

昨年10月には「まちづくり基本条例」を施行し、開発事業者に対し、計画段階から地域住民との話し合いの結果を計画に反映させることや、地域温暖化の防止・ユニバーサルデザインの推進などに協調して取り組むことを義務付けました。

これらの取組みの一例としまして、銀座三越にある「銀座テラス」という空中庭園があります。地域温暖化防止の一部ということで官民一体となった事業の一つですが、こちらは3.11の震災の時には帰宅困難者の避難場所としても機能しました。他には、現在建築中の京橋2丁目にある清水建設㈱本社ビルについても、子育て支援施設が入る予定になっているなど、それぞれのプロジェクトの立地特性に応じた地域貢献がなされています。

◎ 高齢者向住宅の整備の推進

さらに、都心居住を推進する本区においては、すべての人々が地域に愛着を持ち「住んでよかった」「住み続けたい」と思える住環境づくりを進めることが大切であると考えております。このためには、さまざまなライフステージに対応した住宅の確保が必要ですが、特に、今後高齢者の増加が予想される中、高齢者向け住宅の整備の推進が求められております。こうしたなか、高齢者向け優良賃貸住宅制度を活用した民間賃貸住宅の整備について2件(27戸)の実績があります。

また区事業における不動産関連団体との連携については、貴協会による「不動産取引相談」をはじめ、「高齢者住み替え相談」における全日本不動産協会さん、「高齢者あんしん入居制度」における東京都防災・建築まちづくりセンターさんなどの例があります。

◎ 住宅・都市整備分野について

本区は早くから市街化が進んでいるため、建築年次が古い建築物も多く、また月島地区などには木造のものも多く存在しているため、建築物の耐震化の促進が急務となっています。3月11日の大震災を踏まえ、地震に強い安全・安心なまち中央区を実現していくために、緊急対策として、建築物の耐震化を強力に推進します。具体的には、この6月末に補正予算の区議会の議決を頂いたところですが、木造建築物の耐震診断の完全無料化やマンションの耐震診断の限度額を倍に引き上げるほか、耐震工事費の限度額引き上げ等の大幅な施策の拡充を行っております。

総合的な防災対策の充実に加えて、喜びを持って安心して子育てするために子育て支援と教育の充実、健康診断や予防対策を重点とした区民の命と健康を守る取り組み、介護予防や特養の整備、商工業の活性化などが重要な課題であります。

  

◎ 築地市場について( 鮮魚マーケット構想 )

 

3月の都議会において築地市場の豊洲への移転関連予算が議決され、移転の方向が明確になりました。区としては「断固築地を守る」ため、移転後も築地が活気と賑わいを維持し、世界に誇れる食文化の拠点・観光スポットとして一層発展し続けられるよう総力をあげて取り組んでいきます。

中央区案としは次のような計画があります。(プラン図を拝見させていただく)

鮮魚マーケット、賑わい施設については、割烹やすし店の経営者など「食のプロ」が集まる食文化の拠点と世界中の人たちが集う観光スポットを目指し、東京都と協議していきます。

■ 全日本不動産協会中央支部が協働できる分野は?

住宅・都市整備分野においては、不動産事業者の方々を主体とする全日本不動産協会の皆様と連携、協働させていただく機会が多いと考えています。

不動産事業者の皆さんは、地域に根ざした事業を展開され、賃貸ビル・マンションのオーナー、借り手、購入者などと密接な関りを持たれています。このため、たとえば、まず、耐震対策の助成やマンションに対する支援など区の諸施策について情報提供していただいたり、逆に現場からのニーズを区へお伝えいただいたりするなどの情報提供、啓発普及について、積極的に区と連携を図ることなどが考えられます。

また、事業者として、住宅を見つけにくい高齢者向けの優良賃貸住宅の整備や障害者も含めて転居しやすい環境づくりを行っていただいたり、任意の共同化や都市開発の中での地域への貢献についてご協力いただくことなどが考えられます。

和光支部長

今後の高齢者向け優良賃貸住宅などについては、現状は賃貸住宅の賃料のギャップがある為、生まれ育った中央区を離れなければならない方々もいらっしゃるので、その辺りについては、全日本不動産協会として具体的な対策プランを提示させていただきますので、今後とも宜しくお願い致します。

現在行っている月1回の区役所での不動産取引相談の他に、中央支部事務所においても税理士、建築士による不動産取引相談を今期から行っていきたいと考えております。

小畑  

本日は、長い時間ご協力いただきまして誠にありがとうございました。今後も広報委員会と致しましては、継続的に矢田区長との対談をお願いしたいと考えております。

今後共、宜しくお願い致します。