平成27年2月6日(土)、前回の取材に引続き今回は、ソーシャルワーカー(個人・組織)の立場から体験した東日本大震災のこれまでについて、お話を伺ってきました。今回ご協力頂いた方は次の方です。

・一般社団法人 宮城県社会福祉士会常任理事・災害支援委員長 西澤 英之 様

 

今回、取材の趣旨・これまでの取材事業及び地域活動等の例をお伝えして取材の申入れをさせて頂いたところ、快く承諾頂きました。

当初事務局の方に、取材依頼の状況を伺った際には「これまで相当数全国から取材や視察の依頼が来ている」とおっしゃっていました。学生や学校関係者からの学術研究としての調査活動としての申入れもあるそうで、やはり日本中から注目度が高かった事を改めて感じさせられました。

 

■社会福祉士会とは?

公益社団法人日本社会福祉会ホームページでは、次の様に伝えております。

・『公益社団法人日本社会福祉士会は、「社会福祉士」の職能団体です。1993年1月に任意団体として設立され、1996年4月に社団法人格を取得し、2014年4月に公益社団法人となりました。全国47都道府県に社会福祉士会があり、36,000名を超える社会福祉士が、すでに都道府県社会福祉士会の会員となっています。私たちは、自己研鑽を積み、力を結集して、医療・保健・教育・司法行政等の関係機関の専門職の人たちと力を合わせ、福祉を必要とする方が、地域で安心した生活をおくれるよう支援しています。』

今回お話を伺った宮城県社会福祉士会は、全国組織の地域セクションです。組織体制としては、(地域社会福祉士会全般的に)日本社会福祉士会とは別に一般社団法人として独立した事業活動を行っています。

 

■一般社団法人宮城県社会福祉士会の概要

・本部 宮城県仙台市青葉区三条町10-19 PROP三条館

・平成4年宮城県社会福祉士会 発足

・平成20年12月一般社団法人化

・組織体制 正会員537名(H26.12月末現在)

事務局/法人対策委員会/災害支援委員会/研修委員会/障害支援委員会

/実習指導委員会/ぱあとなあ宮城権利擁護センター/地域包括支援センター支援委員会

組織活動としては、社会福祉士への教育研修支援等の他、宮城県からの委託事業として「宮城県障害者権利擁護センター」の運営を行っています。

また、同じく宮城県からの委託事業として「宮城県サポートセンター支援事務所」運営事業も行っています。こちらは、宮城県社会福祉士会の直轄事業としての災害支援事業とは別に、宮城県の事業として震災被災者に対する支援活動をサポートする各種団体の事務局活動を行っています。

これら委託事業は、近年の組織としての中心事業となっているとのことです。

 

■横断的な災害支援活動

宮城県社会福祉士会は、特定非営利活動法人宮城県ケアマネージャー協会と協働にて、震災発生後今日まで災害支援活動を県内各地で展開しております。支援活動に従事した両組織の人員は延べ1,500人を超えています。

【表1 一般社団法人宮城県社会福祉士・特定非営利活動法人宮城県ケアマネージャー協会における 災害支援状況(事例) 平成25年12月31日現在】

地域 支援内容 時期・期間
東松島市 総合相談 平成23年3月30日
石巻市(雄勝) ニーズ調査 平成23年4月3日
亘理町 総合相談(福祉避難所) 平成23年4月5日
気仙沼市 避難所運営(課題分析) 平成23年4月9日~7月23日
石巻市(雄勝) ニーズ調査 平成23年5月2日~9月30日
東松島市 健康調査 平成23年5月5日~5月31日
岩沼市 健康調査 平成23年5月16日~7月19日
石巻市 外出支援 平成23年5月19日~10月18日
女川町 地域包括支援センター支援(課題分析総合相談) 平成23年6月1日~6月17日
石巻市(桃生) 総合相談(準福祉避難所) 平成23年6月2日~6月16日
亘理町 総合相談(仮設住宅) 平成23年6月25日~7月24日
女川町 地域包括支援センター支援(ケアマネジメント支援) 平成23年9月2日~9月20日
石巻市(稲井・渡波) 総合相談(仮設住宅) 平成23年8月20日~11月12日
女川町 総合相談(仮設住宅) 平成23年9月17日~10月29日
南三陸町 健康調査 平成23年10月1日~10月2日
東松島市 総合相談支援(4,166世帯) 平成24年1月18日~3月7日
東松島市 総合相談支援(5,171世帯) 平成24年9月1日~10月31日
東松島市 総合相談支援(1,741世帯) 平成25年7月1日~10月31日

 

○東松島市での災害支援における実例

前述の平成25年の東松島市にける災害支援においては、宮城県社会福祉士会や宮城県ケアマネージャー協会・仙台弁護士会法テラス・宮城県サポートセンター支援事務所等が協同して総合相談支援に対応しました。

そこでは、実践的な相談支援の対応のみならず、実践専門家を育成・スキルアップするために「現場実習」も同時に行っております。文字通り総合支援の実例です。

災害支援を経験した専門家は、将来の日本の財産です。この活動は非常に素晴らしいものだと考えさせられました。

【活動の概要】

東松島市の民間賃貸住宅の応急仮設住宅扱いの世帯(みなし仮設)を社会福祉士及びケ

アマネジャーが,訪問支援員及び生活支援相談員(LSA)と同行訪問し,健康・介護・福祉・法律等の生活支障・生活ニーズを把握して総合相談支援をおこないます。

また,今後の支援活動の多様性・重要性に対応するために,訪問支援員及びLSAのス

キルアップ研修をおこないます。

*リンク:H25 東松島市支援概要

*資料:一般社団法人宮城県社会福祉士会ホームページより

 

■復興しつつある分野もあるが、まだそうではない分野もある。

復興の手応えについて、西澤委員長にお話を伺ったところこの様なお答えでした。前述の見守り(特に独居高齢者や孤立対策としての)機能は今でも継続されており、しっかりサポートなされていると言えます。

一方、被災者の方の住宅課題は解消されたとは言えない状態です。例えば、苦労して得たチャンスで災害復興支援住宅に入居が出来たとしても、制度的にはそこを一生の我が家とすることは出来ません。未だライフプランを立てられない状態と言えます。

災害復興支援住宅には、政策的に集会場が備え付けられているケースが多いですが、活動したくてもスペースや時間的制約からそこで暮らす全ての人が均等に使えるわけではありません。現状では、世代間や種類別の活動で不便を強いられている例が窺えました。ハードとしての支援体制は整っていますが、それを公平に活用するソフト面での支援(ルールやリーダーシップなど)がまだまだ必要であると感じました。

興味深いエピソードとして、「災害復興支援住宅の格差」の問題がありました。これは、正に不動産的価値の不公平問題と言い換えることができます。住宅の立地や建物設備仕様・スペックが物によってまちまちな事が原因と考えられます。大手住宅メーカーが施工した災害復興支援住宅は人気があったそうです。災害復興支援住宅の整備は行政措置のため、市場原理が機能しないことから招いた課題の一例です。

 

■災害発生後に一番必要だったものは?

地域福祉の専門家として具体的支援活動の任務当たらなければいけない立場として一番欲していたものは「ガソリン」ということでした。

先ず被災現場行く⇒現状分析して課題を拾い上げる⇒関係者と連携して支援活動の計画を立てる⇒支援を実施する…これら一連の流れに車が必要です。郊外や周辺地区では被害が大きく、公共の交通機関が使用できない状況を多く見られました。宮城県社会福祉士会の幹部の方は、震災発生当時、新潟県まで出向いてガソリンを調達してきたそうです。

これら意見は、やはり当時~現在まで現場の最前線にいた方の説得力のあるコメントであると認識させて頂きました。

現在の仙台市営地下鉄南北線泉中央駅前

泉中央②(小)

 

宮城県社会福祉士会ホームページ

 

 

宮城県社会福祉士会(HP表紙)_01

 宮城県サポートセンター支援事務所ホームページ

宮城県サポートセンター支援事務所|HOME_01

【リンク】

○被災者支援 宮城県サポートセンター支援事務所

○一般社団法人宮城県社会福祉士会

 

(おわりに)

今回忙しいなかご丁寧に対応頂いた西澤様に感謝すると同時に、今後の地域復興のご尽力を心より願っております。

 

文責:広報委員会