今回は、昨年夏に続き公益財団法人不動産流通推進センター(推進センター)に赴き、現在の不動産取引を支援する事業のトレンドについてお話を伺って参りました。

推進センターが行う、不動産業者支援策には様々な施策があります。今回は昨年の、「公認不動産コンサルティングマスター」と同じく教育事業のもう一方の柱である「宅建マイスター」が、この8月から初めて資格認定試験制度に移行します。
今回はこちらの話題を中心に、その他スキルアップ支援策の概要についてお話を伺いました。

  logo2017宅建マイスタートップ(小) (宅建マイスターの公式ロゴと専用WEBページの一部)

 
【ご協力頂いた方】
○公益財団法人不動産流通推進センター 事業推進室広報推進課長  黒川 眞理 様
○公益財団法人不動産流通推進センター 教育事業部開発課長    津原 寿文 様
【取材場所】
○公益財団法人不動産流通推進センター本部(東京都千代田区永田町1-11-30 サウスヒル永田町 8階東京都)
【訪問日時】
○平成29年5月25日(木)14:00~

 ■推進センターの概要
不動産業界で長い業務経験がある方はご存知だと思いますが、次の通り改めて推進センターの事業内容をお伝えします。
【設立の目的】
推進センターは、国民生活の安定向上と不動産業の振興に寄与することを目的に、国庫補助と不動産業界などからの出えんによって、昭和55年11月1日に設立されました。
それ以来、安全・安心な不動産取引を実現する不動産業の発達支援を行い、一般消費者の利益になる事業を行っています。
【事業のあらまし】
●調査・研究
(1)不動産流通の推進に関する調査・研究の実施(不動産流通センター研究所にて実施)
(2)不動産ジャパンの運営(物件情報検索・取引実務情報公開等の総合サイト)
(3)価格査定マニュアルの作成・普及の推進(WEB形式で公開/有償)
(4)指定流通機構制度の支援(REINSシステムの仕様の整備)
(5)不動産取引からの反社会的勢力の排除(連絡協議会の運営)
●不動産相談
消費者や不動産業者からの不動産取引一般に関する幅広い相談に専門の相談員が応じています。相談内容のうち他の参考となる事例については、Q&A化し、HPで公開なども行っています。
●教育事業
(1)講習・研修事業(WEBを活用した通信講座の開設他)
①受講生のレベルに応じた多様な研修
②宅地建物取引士の登録に必要な登録実務講習
③不動産流通実務検定“スコア”
(2)不動産コンサルティング技能試験・登録事業及び普及活動等
推進センターでは、国土交通省大臣への登録に基づき試験・登録を行っています。
技能試験合格者で登録要件を満たしている方は、「公認不動産コンサルティングマスター」として認定されます。
(3)教育支援事業(講師派遣等)
(4)出版事業
①研修・講習テキスト等の出版
②不動産業に係る各種統計情報「不動産業統計集」等をHPで公開
●債務保証・助成
不動産業者等が共同で行う事業等に対する金融サポートとして債務保証事業を行っています。
●地域再生等支援事業(地域の再生・振興等の事業を共同で実施する資金)
●協業化事業円滑化事業(不動産の証券化を目的とした特定資産を取得するための資金)
【リンク】公益財団法人不動産流通推進センター

■様々な支援策

推進センターでは、「不動産業の健全な発達に関する支援を行うこと」を事業の目的としており、その一環として様々な教育プログラムを実施しています。
これにより、不動産業者の継続教育及び技術の研鑽をサポートしています。
●体系的に学ぶ継続学習
推進センターでは、不動産コンサルティング分野における「公認 不動産コンサルティングマスター」、宅地建物取引業における「宅建マイスター」を頂点として、教育体系のもと、継続学習のための各種プログラムを実施しています。
さらに、一度切りの資格認定で終わらぬ様、継続的な能力判定&スキルアップのツールとして、「不動産流通実務検定“スコア”」を定期的に実施しています。この“スコア”は、業界のさまざまな資格や研修の横串として、「得点」で表示するという、言わば不動産流通業界版のTOEICを目指しています。

教育体系図(小)

(全体の教育体系図)

■今年から試験制度に移行する「宅建マイスター」
宅建マイスターの認定は、実務経験と取引に内在するリスクを予見し、トラブルを未然に防ぐ幅広い知識を備えた上級宅建士としての能力を証明した資格として実施されてきております。
これまでは、通信講座と3日間の集合研修を受講し、最終日の試験に合格した方を認定しておりましたが、参加者の声を取入れて、筆記試験の結果のみで技量を諮る内容に変更しており、業務で多忙な方々でもチャレンジしやすい制度となりました。今年から、新しい試験制度が初めて実施されます。
今後は、毎年200人~300人の合格者の輩出を目標にして行きます。

●宅建マイスターとは?
宅建取引士証取得後5年以上の実務等経験を有し、幅広い宅建業務の知識はもちろん、論理的思考を持ち、リスクを予見することで不動産トラブルを未然に防ぎ、公正で合理的な不動産取引を行うことができる「上級宅建士」として、推進センターが能力を証明した方です。
●試験概要
○受験申込期間:平成29年6月下旬~平成29年8月15日(火)<Web申込>
○試験実施日:平成29年8月24日(木)
○受験資格:現在、宅建業に従事している方のうち以下の要件のいずれかを満たしている方で、試験当日宅地建物取引士証を提示できること。
・宅地建物取引士証取得後、5年以上の実務経験を有していること。
・実務経験は5年未満だが、当センターが実施する「不動産流通実務検定”スコア”」で600点以上を得点していること。
○受験手数料:8,000円(消費税等込)
○合格発表日:平成29年9月下旬(予定)
【リンク】宅建マイスター試験要綱 専用サイト

 試験パンフレット 小

(第一回 宅建マイスター認定試験パンフレット)

 ■今後あらたに実施する「フェロー制度」と更に推進する「スコア制度」
推進センターでは、これまで触れてきたように「ブラッシュアップ(技術の研鑽)」に今後より一層力を入れて行くとの事です。継続したブラッシュアップが不動産業者を営む者のステイタスを高め、それが一般消費者の保護に繋がる仕組みを作ることになります。
また、これら施策を推進するための具体的なプログラムは次の通りの内容を進めています。

●「宅建マイスター・フェロー」へステージアップ
宅建マイスター認定試験の合格者は、自動的に「宅建マイスターメンバーズクラブ」会員となり、 専用サイトで有益な実務関連情報を提供・更なる実戦力アップを目指した勉強会への参加等様々な特典が付与されます。
クラブの利用を3年間継続し、論文提出などの要件を満たした方は、「宅建マイスター・フェロー」に認定され、宅建コースの最高峰として推進センターWEBサイトでの紹介などを通じて、自己の有する専門的技能の証明を、内外に提示し易い環境を作ることが出来るようになります。予定では、今年冬に最初のフェローが誕生します。
【リンク】宅建マイスターメンバーズクラブ(フェロー制度含め)専用サイト
●不動産流通実務の総合力を測るテスト「スコア(不動産流通実務検定)」
「スコア(不動産流通実務検定)」は、安心・安全な不動産取引に必要な実務知識・行動規範・実戦応用力が身に付いているかを測る不動産流通業務のあたらしい指標です。1000点満点の得点と8科目の科目別正答率でいまの実力を判定するものとして、推進センターが、2015年度から実施しています。
スコアは、実力の道標としてその後の「不動産コンサルティングマスター」や「宅建マイスター」の認定試験受験の際の検討材料になります。
スコアの位置づけは、TOEIC(国際コミュニケーション英語能力テスト)におけるスコア制度をベンチマークとしております。実践的な活用事例としては、大手不動産事業者等が優秀な人材を中途採用する場合の指標として注目されています。

スコア 小

(スコアの位置づけチャート)

■おわりに(全日本不動産協会との連携)
不動産流通の適正化と推進を図る目的で、推進センターは全日本不動産協会の公益事業で連携しています。
具体的には、今年9月に推進センターが実施する実務者向けフォローアップ研修の会場に全日大阪会館を提供し、運営の一部を協働し連携体制を推進しています。
今後も、教育研修などの専門知識向上・技術研鑽分野を中心に、さらに連携を進め業界が社会全体に寄与する仕組みづくりを共に進めていく計画です。

(文責:広報委員会)