今回は、昨年の訪問に続き、今年もメンタル系フットサル・サークル「MKエフシー」の練習会に伺って参りました。MKエフシーでは、サークル活動を通じ「地域での居場所づくり」の機能を提供しています。

前回の訪問から、「何か変化はあったのか?」或いは「変わらず続けているものはあるか?」を中心にお話を伺いました。今回は、これまでと違い、午後3時からの練習会だったので、外のその気温がいつもより高かったせいなのか、練習会場の熱気が一段と強く感じました。

(試合形式の練習風景)

(試合形式の練習風景)

 

【ご協力頂いた方】
○MKエフシー 代表 降屋 守 様
【取材場所】
○船橋市立運動公園体育館Cコート(千葉県船橋市夏見台6丁目4-1)
【訪問日時】
○平成29年6月5日(月)15:00~

 ■MKエフシーとは?

MKエフシーは、メンタル的な部分の悩みを抱えた方・または関心を持っている人を中心に結成されたフットサル・サークルです。
代表の降屋様は、以前取材でお伺いさせて頂いた「NPO法人セカンドスペース(若者の社会復帰・就労支援の事業を運営)」に職員として所属しており、MKエフシーはNPO法人での活動のかたわら、降屋さんが個人で主催されています。
活動においては、「まったり蹴ったり出合ったり」をキャッチフレーズとした自然体でのソーシャルインクルージョンをモットーにしており、フットサルの様なスポーツ交流を通じて、精神障がい者や精神疾患を抱えている方、不登校・ひきこもり・ニート等の当事者や元当事者の居場所と出会いづくりの活動を行っております。

【リンク】MKエフシーブログ

(MKエフシーのシンボルマーク)

(MKエフシーのシンボルマーク)

 

■最近の動向

●現在は、月曜日の15:00~17:00と平日のに練習会を開催

MKエフシーには現在約80名を超える方が登録されています。ただし、登録されている方々の生活スタイルも変化しており、それに伴って練習会に来るメンバーの顔触れも変わってきています。特に、今年の新年度に就職・再就職した方が多く、現在では古参の方に交じって、新しく参加した方も多いそうです。
MKエフシーで生活の居場所を見つけ、就職を通じ社会にも再び居場所を見つけている方がメンバーに沢山いらっしゃった事には、社会的意義が非常に大きいと感じます。この事について降屋さんは、『精神障がい者の一般就労に対する世間の理解が、ある程度深まっている背景があるのではないか?』と語っておりました。

●1年ぶりに練習会に参加するメンバーも

前述の通り、MKエフシーでは、このところで就職・再就職をされたメンバーが多いですが、就職後に仕事とフットサルを両立させるのは、心身共にタフな事です。職場という新たに得た環境を優先せざるを得ず、どうしても練習会に参加する回数は減ってしまいます。
MKエフシーの強みは、そんな生活環境・社会環境の変化で、しばらく足が遠のいた方にも「まったりと、緩やかに待つ姿勢」が根付いている点です。根気強く、且つ緩やかに待つ文化が定着しています。また、デイケアや福祉施設のような支援施設と異なり、「好きなこと(フットサル)」で繋がっているので、就職したり症状が安定した後も関係が途切れないという事です。

●エンジョイ系フットサル・サークルとしてのMKエフシー

MKエフシーは、そのコンセプトを「まったり蹴ったり出合ったり」としています。ここには、結果を求める競技志向ではなく、あくまでサークルとして幅広い志向の方を受け入れるエンジョイ系(志向)です。
一方、サッカー王国の千葉では、メンタル系フットサルのチームでも競技志向をコンセプトとしたチームも少なく無く、MKエフシーに登録・参加するメンバーでも競技志向の方もいます。中には、MKエフシーと競技志向のチームとを掛け持ち活動しているメンバーもいます。

●フットサルオープンリーグ(+交流会)2017の開催

この大会は、MKエフシーが共催者として活動しています。主催は、千葉『共に暮らす』フットボール協会(トモフト)で、フットサルを通じた地域共生の活動を長年行っている、精神科医の佐々毅医師が理事長を務める組織です。
毎年行っているこの大会ですが、今年は去る5月4日(祝)に、千葉市にある千葉ポートアリーナ・メインアリーナ3面で開催されました。当日は80名程の参加者でチーム分けを行い、フットサルゲームやその他ワークの時間を共にしました。県立千葉高校サッカー部一年生の皆さんもプレイヤーとして参加し、開会式には熊谷俊人千葉市長も来てくださり、今年もイベントが大成功だったそうです。

(フットサルオープンリーグ2017の大会ポスター)

(フットサルオープンリーグ2017の大会ポスター)

 

■現在の課題

MKエフシーは、普段の練習会の実施に加え、サークルとして定期的な交流会の合同開催や参加者の増加など順調に運営を行っています。今後の継続や発展にあたっての課題を降屋さんに尋ねてみました。

●課題は「エンジョイ志向と競技志向のレベル差の調整ですね。」

MKエフシーには様々なプレイヤーが集まっているので、レベル差やガッツリ度合も温度差があります。それこそ、走るのもおぼつかない方もいれば、高校時代サッカー部のキャプテンだった人もいます。
また、エンジョイでまったりやりたい人や、真剣にプレイしたい人など、そういったサークル内でのフットサルスタンスの温度差をどう調整するかが、当面の課題だと教えて頂きました。

■参加メンバーインタビュー

前回取材でお伺いした時にも、参加メンバーの方にMKエフシーに参加した日常がどんなものか、についてお話を伺いましたが、今回もメンバーの方にお話を少し伺いました。

●競技志向のチーム作りを準備しているYさん

トモフト理事長の精神科医佐々毅氏が運営を監修するフットサルチーム「Blue Sky」現キャプテンにお話を伺いました。Blue Skyは、競技志向のチームです。

現在Yさんは、第4代キャプテンとしてチーム編成&チーム運営に奔走しています。兄弟チーム的なMKエフシーや、佐々医師が主催するプログラム(フットサルを通じた初心者向けクリニック等)・その他オープンリーグや競技志向の精神障がい者フットサル大会「千葉コルツァカップ」への参加など、練習会・試合の場は数多くこなしていますが、単独の運営を主催ようになる事が当面の目標です。訪問当日も、Yさんはその流れで、MKエフシーの練習会に参加されていました。
そのため、Blue Skyのメンバーは、個人単位でこれらの練習会に参加し技術を高めています。近日中に行われるチーム内ミーティングで運営の方針・細部を固め、これまでより主体的な運営を行っていく予定です。
Yさんが、MKエフシーの活動を知ったのは、先輩からの紹介だったそうです。Yさんは現在20代後半ですが、高校までサッカー経験があり、メンタル疾患を抱えながら(回復者を含め広く参加できる)サッカーなどを本格的に行える「居場所」を探していました。MKエフシーに出会うまでは、地域の子供たちとの草サッカーなどで時折プレイしていたそうです。MKエフシーでの交流は1年半になりますが、キャプテンであるBlue Skyとしては競技志向を目指しています。

●「メンバー集め」「練習場所の確保」が大変

YさんにBlue Skyとしての現在の課題を伺うと、メンバー集めと練習場所の確保だと教えてくれました。先ほどの通り練習会を単独開催していない状況なので、メンバーは他のチームと掛け持ちで日程がバラバラに練習しています。
また、練習場所の確保も大変だという事ですが、これはMKエフシーの降屋さんも同じことを言われていました。練習場所を確保するというアクションの中に、施設との折衝や事前のチームメンバーとのスケジュール調整など細かく大変な作業が含まれます。
これら一連の作業は、負担を伴いますが、同時に社会で必要な日常生活マネジメントでもあるので、リハビリプログラムとしての意義は大きいといわれます。

■MKエフシーの今後の動き

●第8回千葉コルツァカップの開催

この大会は、フットサルオープンリーグと同じトモフトが主催し、MKエフシーが運営サポーターとして活動しています。毎年秋(10月下旬~11月下旬)に開催されている大会で、オープンリーグとは一線を画し、こちらはガチンコ勝負(関東大会出場の選考を兼ね競技性を重視)の大会です。NPO法人日本ソーシャルフットボール協会が共催しています。
普段は、エンジョイ派のMKエフシーですが、大会が近づくと大会参加者の支援として、練習会は、競技志向の参加者向けの内容を色濃く取り入れていきます。

●ダイバーシティ・フットサルカップ参加を通じたビッグイシュー基金との交流

MKエフシーがトモフトの一団体として昨年から参加しているイベントに、ダイバーシティカップがあります。

この大会は、ホームレス支援で有名なNPO法人ビッグイシュー基金等が主催しているイベントで、2015年からホームレスの人にとどまらず、若年無業者、うつ病、LGBTなど様々な社会的困難・背景を持つたちを対象としたフットサル交流を続けています。
MKエフシーでは、ダイバーシティカップの参加だけでなく、主催団体と定期的な交流やミーティング参加を行っており、運営方法などについて相互に意見交換なども行っています。

 

(体育館の外はまさに快晴でした!)

(体育館の外はまさに快晴でした!)

 

■おわりに

今回は、6月上旬の訪問でも30度近い気温でしたが、降屋さんは、これからの夏季(7月~9月頃)が一番体力を消耗する時期であり、そこを凌ぐと体の切れが増すため、頑張りどころだとおっしゃっておりました。

近頃は、MKエフシーの活動が生まれた精神科クリニックにおけるデイケア内のプログラムだけでなく、障害者総合支援法に基づく地域活動支援センターのプログラムとしてフットサルを取入れている事例も全国で広がりを見せております。

MKエフシーは、この様な制度上の制約がどうしても付きまとう支援を一旦離れ、参加する人達の垣根のない運営を理念としております。この中には、先ほども触れたように、たまには競技志向も狙うが基本はエンジョイ系」の他、「制度上規定された精神障がい者だけでなくフットサルが好きな普通の市民も自由に参加」などの理念も含まれています。

小さい力ですが、この様な活動のサポートに今後なれる様、交流を続けて行きたいと願っています。

 

(文責:広報委員会)