今回は、認知症について地域の人たちに「身近に」「楽しく」知ってもらうための、カフェスタイルの地域サロンイベントに伺っていた際の模様をお伝えします。
オレンジリングで知られる、認知症サポーター養成講座は平成17年の事業化から10年以上が経過し、活動が広く知られる所となりましたが、今回のイベントは、実際のカフェを会場にし、認知症サポーター養成講座を中心に、認知症の方も行えるヨガのプログラムをミックした、新しいサロン活動で今回が、サローネ グラツィエの初陣となりました。
会場が本格的なカフェでもあるので、途中のティータイムには、伝統的なエスニックスタイルのお茶を頂けるなど、自然に楽しめるイベントとなりました。
【ご協力頂いた方】
〇介護家族キャリアカウンセラー 都丸 光子 様
(一般社団法人きらめき認知症トレーナー協会シスター)
〇公益財団法人日本健康スポーツ連盟 ヨガ講師 鈴木 めゆ 様
〇Galleria Caffè U_U(ガレリア カフェ ユウ)オーナー 民谷 ナオキ 様・愛希子 様
【取材場所】
〇Galleria Caffè U_U(住所:東京都文京区小日向4-7-20 1F)
【訪問日時】
〇平成30年1月17日(水)13時~
■ 現在の認知症を取巻く環境
厚生労働省が公表しているデータによると、2010年時点では200万人程度といわれてきましたが、専門家の間では、すでに65歳以上人口の10%(242万人程度)に達しているという意見もあります。
今後、高齢者人口の急増とともに認知症患者数も増加し、2020年には325万人まで増加するとされます。
■ 認知症サポーター養成講座の概要
厚生労働省では、認知症の人が住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らし続けるために必要としていることを、7つの柱に沿って、施策を総合的に推進していくこと(認知症施策推進総合戦略「新オレンジプラン」)を実施しています。
この施策に基づいて、平成17年度より「認知症を知り地域をつくる10ヵ年」構想の一環である「認知症サポーター100万人キャラバン」を開始し、認知症サポーターを全国で100万人養成することを目標に推進してきました。
この養成講座を受講した市民が、認知症サポーターとして地域で活躍していく事になります。
認知症サポーターの役割は、普段の暮らしの中で、家族や友人を始めとした、地域住民に対して、認知症を正しく理解しもらうための啓蒙活動を行い、地域における認知症の当事者である方の生活を見守る環境づくりをサポートする担い手となる事です。
国の施策に基づき、全国キャラバン・メイト連絡協議会(以下「協議会」)では、都道府県や市区町村など自治体と全国規模の企業・団体等と協催で認知症サポーター養成講座の講師役(キャラバン・メイト)を養成しています。
養成されたキャラバン・メイトは自治体事務局等と協働して「認知症サポーター養成講座」を開催します。
キャラバン・メイトになるためには、協議会が実施する「キャラバン・メイト研修」を受講し登録する必要があります。キャラバン・メイト(講師)及び、認知症サポーター(受講者)は、共に、専門職ではなく地域で暮らす一般市民です。
協議会の公表データによると、認知症サポーター数は、平成29年末現在で9,835,590人となっています(うちキャラバン・メイト数 147,674人)。
■ サローネ グラツィエとは?
認知症のこと、及び認知症予防について、一般の人たちにor知識が行き届いていない人たちに「身近に」「楽しく」知ってもらうための様々な人たちが集う交流イベントです。
前述のとおり、認知症サポーター養成講座を中心としておりますが、文字通り参加者が楽しく・自然な形で知識を得やすいように、瀟洒なカフェを拠点にしています。
また、認知症の予防・介護者のケアと並行して、認知症当事者の方にも有効なヨガ(おひるねヨガ)の講習パートも取入れおり、「特徴のあるスタイル」のプログラムとなっています。ヨガの講師の方は、現在認知症高齢者の通所施設でも、ヨガのプログラムを実施・指導している方です。
会場となった、ガレリア カフェ ユウでは、カフェ事業とタイアップして様々なイベント(個展・音楽ライブetc.)を実施しており、特徴のある空間となっています。
Galleria(ガレリア)とは、イタリア語で「画廊」「回廊」「歩行者通路」などの言葉を指し、会場となったお店でも、「人々に見せる(表現する)動きのある空間」を感じ取ることができます。
●イベント概要
○イベント名称:~こころを繋げよう手を差し伸べよう~「サローネ グラツィエ」
○当日のプログラム(参加費:6,000円/人)
【第1部】認知症サポーター養成講座
第1部講師の都丸さんは、自ら認知介護者の当事者としての経験を活かした講義を行っており、認知症に関する情報の提供から、街で認知症の方が困っている状況に遭遇した際の心得などについてもお話して頂きました。
【第2部】おひるねヨガ
第2部講師の鈴木さんは、自治体や介護事業者等からの要請があり、認知症高齢者でも楽しめて実践できるヨガを開発しました。今回のヨガ・プログラムにも「座ったままできる」「リラックスが脳を活性化させる」をコンセプトに取入れています。
また、この講座の中心理念には「介護者やスタッフ、ケアする側も一緒にできる」があります。
【第3部】認知症予防講座&座談会
第3部では講師の都丸さんから、ユニークな手製のポンチ絵を題材に、認知症の方と接する際の心得(テクニック)や、実は認知症に罹患しても健康に天寿を全うした方の事例紹介などの講義がありました。
プログラムの際の提供された「徳し人メニュー&ドリンク」は、脳活性化を助ける役割があると言われているスーパーフードや、自然派のライフスタイルの食事習慣として、注目されているマクロビオティックの考え方を採り入れたメニューです。
■ 他の地域イベントで知り合った仲間が地域を超えて立ち上げた交流サロン
都丸さんがこれまで行っていた、認知症サポーター養成講座での交流に加え、昨年文京区で行われた他の地域交流イベント(RUN伴:らんとも)を通じて親交を深めた3人がチームを結成して、今回のイベント開催の運びとなりました。組織の形態としては、三者がそれぞれの組織(事業主体や個人として)での参加となる任意組織です。
この「RUN伴」は、認知症の方や家族・医療福祉関係者が一緒にタスキをつなぎ、日本全国を縦断するイベントで、特定非営利活動法人認知症フレンドシップクラブが運営主体となっています。
■ コンセプトは「自然な交流」「楽しめる時間」の共有
主催の皆さんにお話を伺うと、自治体や福祉の専門機関が主導して実施する認知症カフェとは一線を画し、参加者が気軽に交流できる環境をサローネ グラツィエのコンセプトに取入れことを当初より考えていたそうです。
●「私たちが目指しているのは、人づくり。」(民谷さんへのインタビューより)
「『地域交流』という言葉がありますが、一般的には『ある一定の地域=地元』に限定したものと言うイメージがあると感じています。
私たちが、店で目指しているのは地域づくりというより、大きく言ってしまえば人づくりです。様々な場所からここに集まった人たちが、ここで何かを得て自分の場所に戻り、それぞれが元気に愉しく生きて行くこと、それが地域づくりにも繋がる、みたいなことを想っております。
自治体や地域の人のグループではなく、様々な場所から様々な人が集まるカフェだからこそできる…みたいに思っているところがあります。」
■ 今後の展望
●継続すること
取材訪問した当日が、初回のイベントとなりましたが、今後もカフェの常連さんや、地域のネットワーク及びSNSでの発信等を通じた周知活動を行い、この地域交流イベントを継続していく予定です。
●他の拠点でも開催(ユニットを出前)
「キャラバン・メイト」「ヨガ・インストラクター」「カフェ・オーナー」という特徴のある皆さんですが、現在の拠点以外にも、お声頂ければ積極的に他の地域へも出向き、出前講座のスタイルで、地域交流のイベントを展開していきたい構想を持っています。
文責:中央支部広報公益委員会