今回は、中央区立子ども家庭支援センター「きらら中央」に伺い、自治体としての子育て支援の様々な施策や、中央区での子育て環境に関する特徴などについてお話を聞いてまいりました。

少子高齢化は、国が抱える慢性的な社会の共通課題ですが、中央区に関しては人口の増加傾向が続いています。マンションの開発ラッシュの影響から、乳幼児をはじめとする小さなお子さんと暮らすファミリー層の増加が特に目立っています。

そのため、中央区内では子育て支援の様々な機能が整備されており、公的サービス以外にも、NPOやボランティア組織が運営する幅の広いサービスが展開されています。

(きらら中央内にある「あかちゃん天国(子育て交流サロン)の風景」)

(きらら中央内にある「あかちゃん天国(子育て交流サロン)の風景」)

 


 

【取材場所】
○子ども家庭支援センター「きらら中央」(東京都中央区勝どき1-4-1 3階)
【訪問日時】
○平成30年8月17日(金)

■子供家庭支援センターの役割とは?
児童福祉法における児童相談業務は、これまで地域の児童相談所が担っておりましたが、近年の児童虐待件数の増加等により、児童相談所ではより高度な専門的対応が求められおり、それ以外の一般相談と業務を棲み分けるニーズが高まっていました。
この流れを受けて、平成16年11月の児童福祉法改正により、子どもと家庭の相談支援業務が区市町村業務に加えられました。

こうしたなか東京都では、平成7年から都の独自事業として、子供家庭支援センター事業を開始しました。また平成15年には、児童虐待の予防と早期発見・見守り機能を付加した「先駆型子供家庭支援センター」を創設しました。

子供家庭支援センターでは、区市町村における子供と家庭に関する総合相談窓口として、18歳未満の子供や子育て家庭に関するあらゆる相談に応じるほか、ショートステイ等の子供家庭在宅サービス、子育てサークルや地域ボランティアの育成などを行っています。

■子ども家庭支援センター「きらら中央」事業内容
きらら中央は、前述の通り、中央区が 平成19年に設置した先駆型子ども家庭支援センターです。主な事業は次の通りです。

 (1)子どもと子育て家庭の総合相談
18歳未満の子どもと子育て家庭に関するあらゆる相談支援の実施。相談の内容に応じて、保健・心理・福祉などの専門相談員が個別対応。

(2)子育て支援サービスの提供

種類

事業名 対象

内容・費用等

預かり保育サービス 一次預かり保育 生後57日から未就学児まで 冠婚葬祭や育児リフレッシュでの利用。800円/時間。
緊急保育 入院など緊急時に一時的な保育を実施。2,000円/日。
トワイライトステイ 2歳から小学校6年生まで 仕事などにより帰宅が夜間となる場合の一時保育。2,000円/回。
子どもショートステイ 生後7日から中学校3年生まで 区が委託した施設・協力家庭での短期保育。1泊2日6,000円。
病児・病後児保育 生後7カ月から小学校3年生まで 区が委託した医療機関での一時療養保育。2,000円/日。
ヘルパー等派遣 育児支援ヘルパー 母子健康手帳交付時から出産後6カ月以内の家庭 区の契約事業者がホームヘルパーを派遣。1日2時間。
緊急一時保育援助事業 生後4カ月から未就学児まで 緊急一時的にベビーシッターを派遣。1日9時間以内。
ファミリーサポートセンター事業(中央区社協へ委託) 【依頼会員】生後57日以上小学6年生以下【提供会員】満20歳以上で子育て経験あり 子育ての援助が必要な家庭と子育ての援助ができる人との相互援助活動(会員登録要)。800円/時間。

(3)親子の交流・活動支援、情報提供

事業名

対象

内容・費用等

子育て交流サロン「あかちゃん天国」 乳幼児(0歳から3歳になった最初の3月31日までの乳幼児)とその保護者、妊娠中の方 子育てに関する情報交換と居場所作り、及び育児相談への対応。無料。
情報交流室 パンフレット等で情報提供。
地域活動室の貸し出し 区内の子育て支援活動を行う方やグループ 地域活動室を無料で貸し出し。

(4)子どもほっとラインの設置
児童虐待情報専用電話として「子どもほっとライン」を設置し、児童虐待の早期発見・早期対応。

(5)赤ちゃん・ふらっと事業
「赤ちゃん・ふらっと」とは、小さなお子さんを連れた方が安心して外出できるよう整備された、おむつ替えや調乳・授乳のために立ち寄ることのできるスペースの愛称。
区の施設では、きらら中央のほか、築地・新川・堀留町・浜町・月島・勝どき・晴海の各児童館、及び女性センター(ブーケ21)にて実施。

(6)児童館の運営
区内の18歳未満の児童に健全なあそび場を提供し、健康の増進・豊かな情操の育成を目的に、区内で8ヵ所児童館を設置運営。児童館では、「乳幼児クラブ」「学童クラブ」、及び「あかちゃん天国(未実施館あり)」事業に加えて、児童館まつりを始めとした様々なイベントを実施。

(7)ほっとファミリー(養育家庭制度)の普及・啓発
保護者がいない、または事情により保護者の家庭で育てられない子どもたちを一定の期間家庭で養育する支援者(東京都の愛称「ほっとファミリー」)の募集活動と普及啓発の実施。

(きらら中央パンフレット①)

(きらら中央パンフレット①)

 

(きらら中央パンフレット②)

(きらら中央パンフレット②)

 

【リンク】子ども家庭支援センター「きらら中央」事業案内ページ

■中央区の子育て事情と支援の特徴について
●人口増加と出生数の増加
中央区の人口は、160,922人(H30年8月1日時点)となっており、人口が最少だった平成9年時点(71,806人)からこれまで毎年増加の傾向にあります。また、これに付随する形で出生数も増加しており、平成29年には2,079人の新生児が産まれています。

ファミリーサポートセンターの利用ニーズ
ファミリーサポートセンターの利用で最も人気が高いのは「子どもの習い事等の場合の援助(H29年度実績)」となっています。これは、保護者が仕事などで不在の際に、子ども達の習い事への送り迎え時にサービスを利用していることで、中央区の特徴の一つと言えます。

レスパイトケアとしての一時保育利用
レスパイトケアとは、介護者や保育者が心身の疲れを癒す支援のことですが、中央区においても、保護者の方が自分の用事や育児疲れを癒す目的で、一時保育を利用するケースが多くなっています。

■中央区の子育て環境に関する課題
●保育施設ニーズの増加
中央区の乳幼児人口は、10,546人(平成30年4月1日時点)でとなっており、平成24年からの6年間で約49%増加しています(平成24年実績7,054人)。

一方、中央区ではこの状況に対応すべく、この間保育施設の整備も進めており、認可保育所の定員数は6年間で2,637人分の増加(平成24年時点1,974名⇒平成30年時点4,611名)を実現しました。しかし、待機児童は188人おり、また中央区ではマンション開発が続き、今後もニーズの増大が予想されます。

ファミリーサポートセンター提供会員の確保
ファミリーサポートセンターは、区民同士で子育てを支援する相互扶助の仕組みです。提供会員とは、ファミリーサポートセンターの子育て支援者のことで、中央区から委託にて事業を運営する中央区社協が実施する講習会を受講した方が、提供会員として登録されます。

この提供会員数は、平成29年度実績で248名(「両方会員」:依頼会員兼提供会員は別途176名)にのぼっておりますが、利用実績が増加傾向にあるため、今後支援を続けて行くためには、提供会員の確保が重要なポイントとなります。

児童虐待防止の難しさ
子ども家庭支援センターの主な事業のひとつに、「子どもと子育て家庭の総合相談」があります。その中で、虐待に関する相談(被虐待相談)は、平成29年度では176件ありました。虐待に関する相談は年々増加傾向にあります(平成28年度実績は104件)。

児童虐待相談への支援では、多くの件数に対応する苦労もありますが、相談案件が「児童虐待に該当するかの 確認」あるいは「保護者からの協力」など、支援の答えが一様ではない難しさがあります。

■わたしたちに求められる支援とは?
これまでにお伝えしてきたように、中央区における今後の出生数の増加により、認可保育所をはじめとする保育施設のニーズが高まることが予想されます。それらニーズを補完するために、施設整備を支援する役割(情報開発・施設整備など)が期待されています。

また、区内在住・在勤者の方には「生活者として日常生活での気づき」が、地域での児童虐待を未然に防止する有効策として機能するため、自治体と日頃からのフラットな情報連携の関係づくりが必要になっています。

(地域SNSを活用し、子育て世代のつながりづくりを促進するため、SNS運営会社と中央区は協定を締結しました。)

(地域SNSを活用し、子育て世代のつながりづくりを促進するため、SNS運営会社と中央区は協定を締結しました。)

 

(子ども家庭支援センター「きらら中央」のエントランス付近)

(子ども家庭支援センター「きらら中央」のエントランス付近)

 

(現地近くの勝鬨橋から望む隅田川の景色)

(現地近くの勝鬨橋から望む隅田川の景色)

 

みんなで「働きやすく、住みやすい、誰でも笑顔になれる中央区」にしませんか?

(文責:広報公益委員会)