今回は、子どもたちへの学習支援活動を行っているNPO法人キッズドアの2018年度事業報告会に参加した際の模様をお伝えします。

キッズドアは、2009年10月のNPO法人認証から10年が経過しました。今回の事業報告会では、これまで培ってきた実績をベースに次の10年へ向けた新たな取り組みの紹介などもなされました。

また、全日本不動産協会東京都本部の公益事業の一環として、キッズドアの活動支援を行っており、昨年2月に行われたシンポジウム(キッズドア主催「東日本大震災から7年」~被災地の子どもたちのこれからの支援を考える~)では、会場の提供をいたしました。

 

(報告会終了後に撮影された集合写真)

 


 

【ご協力頂いた方】
○特定非営利活動法人キッズドア 広報担当者様
【取材場所】
○会場:シャングリ・ラ ホテル東京 ボールホール(東京都千代田区丸の内1-8-3丸の内トラストタワー本館27階)
【訪問日時】
○令和元年7月22日(月)15:00~17:00

 

イベント概要
学習支援を中心としたキッズドアの2018年度の事業活動報告会です。当日は、日頃から寄付や寄贈などの支援を行っている個人・法人の支援者の方々が参加されました。
〇主催:特定非営利活動法人キッズドア
(法人本部:東京都中央区新川2-1-11 八重洲第1パークビル7階)
〇TEL:03-5244-9990 〇MAIL:pr@kidsdoor.net
〇会場提供:シャングリ・ラ ホテル東京
【リンク】NPO法人キッズドア公式ホームページ

 

(今回の会場となったシャングリラ・ホテル東京ボールホール)

 

●当日のプログラム
1.開会挨拶
NPO法人キッズドア 理事長 渡辺 由美子 氏
2.2018年度事業活動報告
NPO法人キッズドア 事務局長 松見 幸太郎 氏
NPO法人キッズドア 東北事業部部長 對馬 良美 氏
3.卒業生代表からの挨拶
4.生徒へのインタビュー動画
5.学生ボランティアの話
6.キッズドアスタッフとの交流会
7.休憩
8.2019年度事業展望
NPO法人キッズドア 理事長 渡辺 由美子 氏
(新理事会・アドバイザリーボードメンバーの発表)
9.ボランティア代表による締めの言葉
10.閉会・記念撮影

 

■2018年度の活動実績
東京都と宮城県で行う学習支援を中心に、2018年度における活動拠点は65ヵ所、登録生徒数1,907名、ボランティア数1,267名の実績となっています。
学習支援は、子どもたちが各拠点へ通学して勉強を行う「学習会型」のほか、子どもたちの生活支援の役割も発揮する「居場所型」の2つが主な支援形態となります。
学習会型には、高校受験対策講座(タダゼミ)・大学受験対策講座(ガチゼミ)・English Drive(英語塾)などのプログラムがありますが、自治体からの委託事業では、小学生を対象とした学習会も行っています。
また居場所型には、世帯構成や経済的な理由により、家庭に学習環境や居場所がない子どもたちに対し、学習支援+食事の提供も行うプログラムもあります。
今回は、これら学習支援を含めた2018年度の主な活動実績を、次のカテゴリに分けて報告致しました。

 

活動実績①「高校生世代支援」
義務教育以後の高校生世代を支援することは、本人の自立につながるだけでなく、経済的損失の回避と社会福祉関連のコストの抑制にも繋がり、その結果日本社会全体への効果は大きいと考えています。
そのためキッズドアでは、セーフティネットが弱まる高校生世代を支援する様々なプログラムを実施しています。
●Reline(足立区竹ノ塚)
中学生からの要望により、卒業後の受け皿として発足した学習会です。高校の中退防止・キャリア教育を目的としています。
●Sりびんぐ(宮城県仙台市)
被災地から転居してきた中高生たちが、気軽に集える第3の居場所として発足した自習室を昨年リネームしました。心の拠り所と自由な学習スペースを提供しています。
●リファインド(新宿区四ツ谷)
高校を中退した子どもたちや、定時制・通信制高校に通う生徒などに学び直しの企画を提供している居場所型学習支援。生活支援として食事の提供も行いました(2018年度で終了)。
●ガチゼミ(新宿区四ツ谷)
経済的な理由で塾に通えないが大学受験を目指す高校生に対する無料の学習支援です。昨年度は合計43回の学習会を実施し、生徒登録数は36名に及びました。
●志翔学舎(宮城県南三陸町)
宮城県志津川高等学校の中に開設された無料の公営塾です。町と高校が協議を経て設立し、キッズドアが受託運営を行っています。

 

活動実績②「学習支援の成果調査報告」
キッズドアの行う学習支援の成果を検証するために、有識者・専門機関の協力のもと、事業活動の効果測定を行いました。
●教育格差背景調査
キッズドアの学習会等に通う中学生とその保護者を対象とし、所得や家庭環境と子どもの学習習慣や学力の調査を実施しました。調査の結果、子どもたちが学習会に通うことによって「気持ちの変化」「学力面の変化」などが確認できました。
この調査結果は、2018年10月2日に文部科学省記者クラブでメディア各社へリリースされました。
●社会的インパクト評価
事業の有効性を確認するため、キッズドアが行う「English Driveプロジェクト」と「学習支援機能付き居場所(足立Reline・仙台Sりびんぐ)」について、社会的インパクト評価(事業活動が社会へもたらす効果の検証)を実施しました。
社会的インパクト評価を実施した結果、「ロールモデルとの出会い」「将来の選択肢の広がり」など、子どもたちに大きな影響を与えていることが確認できました。

 

活動実績③「『こども宅食』を通じたコレクティブ・インパクト」
こども宅食は、経済的に厳しい状況にある子どもたちとその家族に無料で食品を届ける事業です。運営は、キッズドアをはじめ東京都文京区と5つの非営利団体からなるコンソーシアム*¹が担っています。
食事の配送をきっかけに、子どもとその家庭を必要な支援につなげ、地域や社会からの孤立を防ぐ効果を目的としています。事業の原資は、ふるさと納税を活用(ガバメント・クラウドファンディング)したモデルです。
昨年度の延べ配送世帯数は、2,965世帯*²(H29年度実績:延べ442世帯へ配送)に上りました。*²出展:東京都文京区子育て支援課

*¹【こども宅食コンソーシアム加盟団体】

団体名 ミッション
NPO法人フローレンス 全体企画/広報・寄付調達
NPO法人キッズドア 物流管理
一般社団法人RCF 社会事業コーディネート
NPO法人日本ファンドレイジング協会 社会的インパクト評価
一般財団法人村上財団 ファンドレイジング
セイノーホールディングス株式会社 食料配送
文京区 ふるさと納税受付・申込案内

【リンク】こども宅食紹介ページ

 

卒業生代表からの挨拶

当日は学習会の卒業生を代表して、お二人がスピーチをされました。

●『過酷な環境を支援者の方と共に乗越えた経験を次の世代に伝えていきたい』(Gさん)

最初のスピーチは、現在都内の学習会で学生ボランティアとして活動している方からの体験談報告でした。

ひとり親世帯のGさんは、区の紹介ではじめて中学3年生の時にキッズドアの学習会に参加し、希望の高校に進学、その後高校生になってからも通い、無事に大学受験をパスしました。

高校入学時には、大学受験や通学が現実的な事とは想像できませんでしたが、相談先の区の担当者や、学習会のボランティアの方たちの力強いサポートが現在の結果を導いたと言います。

●『来月からチェコ共和国の大学へ留学』(Hさん)

次のスピーチは、今年春に高校を卒業したばかりの方からの体験談報告でした。

Hさんは中学3年生の高校受験時にキッズドアの学習会に参加しました。当時、周りのみんなは進路のことを色々話していましたが、Hさんは経済的な問題から自分にストッパーを掛け、やりたい事や将来のビジョンを描けないでいました。しかし、キッズドアの学習会を通じ、次第に自信を深め「留学」に興味を持つ様になりました。

Hさんはその後、東京都の支援プログラムの選抜も見事パスし、アメリカの学校への1年間の留学も果たしました。今年秋からは、チェコの大学への進学を予定しています。

 

(卒業生代表スピーチの模様)

 

■今後の展望
キッズドアでは、今年からは「次の10年プログラム」を始動させ、これまでの主力事業に加え新たな取り組みを行っています。

①教育支援事業の着実な実行
これまでの学習会・居場所型プロジェクトの事業継続に加え、新しい支援プロジェクトがスタートしています。
●高校生世代相談室Sacuらぼ(江戸川区委託事業)
高校未進学・中退・不登校・転校・就職などに関する相談支援。
●くも屋カフェ(東京都委託事業)
リファインド(自主事業)として行っていた居場所型学習支援のプログラム。
●IT Drive
生活困窮世帯の小中高生を対象としたコンピュータプログラムミング教室。
●柏市子どもの生活・学習支援事業/小学生コース(柏市委託事業)
小学校高学年生を対象とした学習支援。千葉県内で行う初の学習会。

②「社会を変える」に挑戦
「ひとり親を救え!プロジェクト」「給付型奨学金の創設」など、社会が抱える課題の解決を訴え実現させました。今年は「ソーシャル・ウェンズデー・プロジェクト」を立ち上げる予定です。

③経営基盤の強化
組織運営の強化を図るため、理事会の強化(増員)及びアドバイザリーメンバーとの連携強化を実施します。

④キッズドア基金の設立
これまで培ってきた経験から得た、「無料学習支援だけでは解決できない問題の存在」「子どもたちのために金銭的な支援の必要性」との想いから、キッズドア基金を設立しました。基金では、英検の受験料補助などを行っていきます。

 

 

文責:中央支部広報公益委員会