今回は、2年前にもこの取材事業で訪問させて頂いた社会福祉法人石巻市社会福祉協議会へ伺い、この間の東日本大震災の被災からの復興状況や、新たに形成された地域コミュニティの特徴・課題などについてお話を聞いてきた際の模様をお伝えします。

 

石巻市には、事前に約束していた日程での行程でしたが、訪問予定日の数日前に、今回日本列島を襲った台風19号の直撃を受け、石巻市社会福祉協議会に災害ボランティアセンターの設置がなされるなど、慌ただしい最中にお話を伺うことになりました。

 

(石巻社会福祉協議会本所の一室でお話を伺いました)

 


【ご協力頂いた方】
○社会福祉法人石巻社会福祉協議会 地域福祉課 課長補佐 平塚 信一朗 様
【同席者】
○公益社団法人全日本不動産協会 宮城県本部   本部長 小林 妙子  様
同  所             監事 齋藤 晋   様
【取材場所】
○石巻社会福祉協議会本所(宮城県石巻市南中里三丁目11番1号)
 【訪問日時】
○令和元年10月18日(金)AM10時30分~
 

■社会福祉法人石巻市社会福祉協議会の概要
○設立:2005年4月1日(石巻市の1市6町の合併に伴い新たに設立)
○本所/事務局:宮城県石巻市南中里三丁目11番1号
○支所:石巻支所/河北支所/雄勝支所/河南支所/桃生支所/北上支所/牡鹿支所
○職員数:258名(2018年4月現在)
○主な組織内容:総務課/地域福祉課/在宅福祉課/ボランティアセンター/復興支援課

現在の石巻市は、平成17年4月1日にこれまでの1市6町が合併し、新たに誕生しました。この合併のより、石巻市社協も合併し、本所と6支所(河北・雄勝・河南・桃生・北上・牡鹿)の体制となりました。

【リンク】社会福祉法人石巻市社会福祉協議会ホームページ

 

(石巻市社協の本所建物)

 

■「復旧支援」から「生活支援」へ
●震災発生当時の災害ボランティア・復旧支援活動
石巻市社協では、東日本大震災発生時には本来業務を一旦停止して、職員総出で災害ボランティアセンターの運営や、応急仮設住宅入居者の居住支援などの復旧支援を中心に活動を行っておりました。
その後、石巻市社協をはじめ、NGO・NPOその他任意団体の有志の方々が、石巻の復興支援のために組成した石巻災害復興支援協議会(※)における活動は、「石巻モデル」「石巻方式」と呼ばれ、災害発生時・復興における地域支援活動の新しい形として全国で注目されました。
※立上げ当初の名称は「石巻NPO・NGO連絡調整会議」。現在は、「公益社団法人みらいサポート石巻」へ改称。

●地域福祉コーディネーターが地域のコミュニティづくりを推進
東日本大震災から8年目を迎え、復興事業の進展と併せ、石巻市社協では今年度の活動目標に「地域共生社会の実現」をあげており、地域コミュニティ形成・再構築が大きな柱となっています。
地域コミュニティ形成のための活動では、小地域における交流会・サロン活動の実施を支援(専門職員のアウトリーチや各サークルへの助成金支援など)しています。

平成25年に10名が配置されスタートした域福祉コーディネーターは、これまで応急仮設住宅・復興公営住宅住民への被災者支援業務や、既存自治会も含めた新たな地域コミュニティ形成のための地域支援活動を行ってきました。

また、介護保険法の改正で事業化された、「生活支援コーディネーター」を平成28年4月より兼務し、高齢者に対しての支え合いの仕組みづくりや地域包括支援センター等の専門職と連携して、要介護状態にならないよう健康を維持する介護予防への取り組みも進めています。

 「応急仮設住宅等生活相談支援業務(石巻市委託事業)」については、仮設住宅入居者の減少に

伴い復興公営住宅への支援に移行しており、引き続き地域福祉コーディネーター地域生活支援員等が復興公営住宅を中心に、巡回訪問支援と各種情報提供などの生活支援を行っています。

 

 

(「地域福祉コーディネーター兼生活支援コーディネーター集いの場(サロン等)支援活動一覧」より一部抜粋/平成28年度石巻市社協 資料)

 

■石巻における現在の東日本大震災の影響
●東日本大震災の被害状況(出所:宮城県総務部危機対策課防災対策班 資料)
*令和元年9月30日現在
【人的被害】

被害内容 石巻市 宮城県
➀人口(H22年10月国勢調査) 160,826人 2,348,165人
➁死者合計 3,552人 10,565人
(直接死) 3,277人 9,637人
(関連死) 275人 928人
③行方不明者 420人 1,220人
④負傷者
(重傷) 不明 502人
(軽傷) 不明 3,615人
 (その他) 不明 28人

 

【住家被害等】

被害内容 石巻市 宮城県
➀全壊 20,044棟 83,005棟
➁半壊 13,049棟 155,130棟
③一部破損 19,948棟 224,202棟
④床下浸水 3,667棟 7,796棟
⑤非住家被害 調査中 26,796棟

 

●被災者における住宅確保の状況(出所:石巻市福祉部生活再建支援課・石巻市建設部住宅課対策課防災対策班 資料)
【仮設住宅入居状況】*令和元年10月1日現在

団地名 着工戸数 入居戸数 入居人数 住所
仮設蛇田西部第1団地 32戸 1戸 2人 石巻市茜平三丁目10番地
仮設南境第7団地 487戸 1戸 1人 石巻市南境字新小堤25番地1、字外谷78番地1
(合計)2団地   2 3  

 

【石巻市復興公営住宅入居状況】*平成31年3月末日現在

供給戸数 入居世帯数 入居者数 1世帯当たりの平均人数 高齢化率 独居の割合
4,456戸 4,212世帯 7,788人 1.85人 42.84% 47.88%

応急仮設住宅とは、宮城県が災害救助法に基づき一時的に住宅を供与する措置ですが、石巻市などの震災被害が大きかった5つの自治体(石巻市・気仙沼市・名取市・東松島市・女川町)については、国との協議を踏まえ、住宅の供与期間を2021年3月31日まで延長する事が決定されました。

 

■地域福祉活動で感じる現況と課題及び今後の展望
●人口減少と世帯の増加
石巻市でも、他の地域と同様に少子高齢化による人口の減少が続いています。震災のあった平成23年に153,452人だった人口が、8年後の平成30年には144,823人に減少しました(出所:石巻市市民課 資料/データは各年9月末時点)。

これは、この8年間で約5%の減少率になりますが、震災発生以前から人口の減少傾向は続いており、石巻市においては、震災の発生が人口の減少に及ぼす影響は大きくありません。

ただし、国勢調査における中間世代(15歳~64歳まで)の人口は、平成22年の調査と平成27年の調査を比べると、11,279人減少しております(平成27年当時の人口比率で約▲7.6%)。このことから、若者・働く世代の流出の課題が見えてきます。

世帯数については、平成23年に58,142件だった世帯数が、平成30年には61,348件となっており、逆に約5%増えています。今回、平塚さんからのお話でも、「世帯分離による世帯数の増加と、高齢者を含む独居者の見守りの課題」について言及されていました。

その他、世帯数の増加要因として、「被害の大きかった沿岸部における親世代(生業業)と子世代の分離」、「仮設住宅・復興住宅の申込み(世帯別申込)」、「離婚率の増加」等が考えられます。

●住宅事情から見た復興状況
復興公営住宅の家賃は、公営住宅法等に基づき、入居世帯の収入や住宅の立地、規模、経過年数、設備によって算出されます。

所得月額が8万円以下の低所得世帯は、建物管理開始から5年間は家賃が最大7割減額される国の特別家賃低減事業が適用され、6~10年目に補助が段階的に縮小する仕組みとなっています。

一方、被災者であっても、入居3年後に所得月額が15万8,000円を超えると「収入超過世帯」と認定され、4年目以降は収入に応じて段階的に家賃が引き上げられることになります。

これに対し、被災地の各自治体では、復興交付金の積立基金やその他自治体の予算措置などを財源として、収入超過世帯に対する家賃据え置きの延長などを行い、人口流出の対策を講じてきました。しかしながら、自治体が策を講じる前に転居していった世帯は多く、復興公営住宅の「高齢者世帯」「低所得世帯」の割合が高まる結果となっています。

●域コミュニティの再構築が課題
前述の通り石巻市社協では、地域福祉コーディネーターや地域生活支援員等が中心となって、住民主体の地域交流活動を支援してきました。

東日本大震災で被災し、住み慣れた自宅を失い、復興公営住宅や既存の住宅団地に転居した方などは、「新たなコミュニティの形成と居場所の確保」「既存コミュニティとの融和」の問題が生じます。

石巻市社協では、話し合いの場の提供や新旧住民同士の交流会の運営支援などを通じ、コミュニティの再構築支援を行っていますが、住民間の生活習慣の違い、または自治会運営の限界など、コミュニティが自立するにはまだまだ課題が多い状況です。

 

(石巻市社協の行う「地域サロン活動支援事業助成金」の案内チラシ)

 

●今後の展望
石巻市社協では、今後力を入れて行くテーマに、「地域福祉の推進」「地域福祉コーディネーターのアウトリーチ」を挙げています。

目指すゴールは大きなものですが、それに向かう第一歩として、地域福祉コーディネーターなどがそれぞれ担当する地域へ出向き、地元の協力者の方々と一緒になって、地域特有の課題を共有しながら、着実に地域づくりを進めていく予定です。

その結果、近い将来には地域の持つ力が向上し、地域が自立していくことを目指しています。

 

(JR石巻駅構内に設置されている漫画家石ノ森章太郎氏ゆかりの漫画キャラクター像)

 

(以前はさくら野百貨店石巻店が入居していた現在の石巻市役所本庁舎)

 

 

◎文責:広報公益委員会