今回は、武蔵野市にある「公益財団法人武蔵野市福祉公社・権利擁護センター」に伺い、事業内容や現状についてお話を聞かせて頂いた模様をお伝えします。

現代社会では、少子高齢化の加速や核家族化の進行、高齢家族に対する親族による保護機能の減衰、社会からの孤立などにより、公的支援や社会福祉サービスのサポートを受けながら、様々な方が住み慣れた地域で日常生活を送るニーズが増えて来ました。

権利擁護センターでは、独居高齢者や障害をかかえて生活する方などに対して、地域での生活サポートを提供しています。頼れる親族・知人等が、身近にいることが少なくなった今日において、その需要は増えています。

 

(地域活動機関が複数入居する事務所エントランスは明るい吹抜けです)

 


 

【ご協力頂いた方】
○公益財団法人武蔵野市福祉公社 在宅サービス課 課長 服部 哲治 様
【取材場所】
○武蔵野市福祉公社権利擁護センター(東京都武蔵野市吉祥寺北町一丁目9番1号2階)
【訪問日時】
○令和2年1月20日(月)AM10時~

 

■権利擁護センター の役割とは?
●権利擁護センター
権利擁護センターとは、第二種社会福祉事業に規定された「日常生活自立支援事業(国庫補助事業)」や成年後見事業等を実施する地域の支援機関です。

権利擁護センターは、社会福祉協議会や公益法人等の各地で地域福祉活動などを展開する組織が運営主体となっています。

●日常生活自立支援事業
日常生活自立支援事業では、日常生活に不安のある高齢者や障害者の方々が、住み慣れた地域で安心して暮らせるように、福祉サービスの利用援助や権利擁護相談・日常的金銭管理や財産保管サービス・成年後見制度の利用相談・福祉サービス利用に際しての苦情対応など、各種支援を一体的に行うサービスを行っています。

そのほか権利擁護センターでは、日常生活自立支援事業に加え、地域によって異なるニーズに応えるために、独自のサービスも数多く実施しています。

 

■権利擁護を取り巻く状況
権利擁護の実施状況を「日常生活自立支援事業*¹」と「成年後見制度*²」の各制度の利用者数の結果は次の通りとなります。

*¹出所:社会福祉法人全国社会福祉協議会地域福祉推進委員会「平成30年度日常生活自立支援事業実態調査報告書(平成31年3月)」
*²出所:最高裁判所事務局家庭局「平成29年1月~12月成年後見関係事件の概況(平成30年3月)」

●日常生活自立支援事業利用者数

平成29年度 割合 平成27年度
実利用者(契約件)数 53,484 100.0% 51,828
(認知症高齢者等) (23,414) 43.8%
(知的障害者等) (12,596) 23.6%
(精神障害者等) (14,640) 27.4%
(その他) (2,834) 5.3%

●成年後見制度利用者数

平成29年

(1~月12月)

うち申立容認件数
申立件数 35,737 35,417
(後見開始) (27,798) (26,411)
(保佐開始) (5,758) (5,400)
(補助開始) (1,377) (1,294)
(任意後見監督人選任) (804) (652)

日常生活自立支援事業は、平成11年10月に「地域福祉権利擁護事業」としてスタートし、制度開始から20年を超えました。上記と同じ調査によると、制度開始間もない平成13年度における実利用者数は4,143件となっており、ここ16年間で12倍を超える増加となっています。

また、成年後見制度利用者数に目を向けると、同じ調査では前年の申立件数が34,249件となっており、こちらは前年比4%程度の増加となってます。

 

■武蔵野市福祉公社権利擁護センターについて
●センターの概要
○運営主体:公益財団法人 武蔵野市福祉公社(設立1980年12月1日)
○沿革:2015年10月それまでの「後見係」の名称を「権利擁護センター」へ変更
○所在地:東京都武蔵野市吉祥寺北町一丁目9番1号2階
○営業時間:午前8時30分から午後5時15分
(土曜日・日曜日・祝休日 年末年始(12月29日~1月3日)を除く)
○電話:0422-23-1165 ○FAX:0422-23-1164

【リンク】武蔵野市福祉公社権利擁護センター紹介ページ(公式WEBサイト)

地域で暮らす方々から寄せらせる次のような相談に対応するために様々な事業を行っています。

➀「一人暮らしで物忘れをするようになった。預金通帳を紛失する。金銭管理を手伝ってもらいたい。」

②「生活費のやりくりがうまくいかないので相談したい。」

③「身近に何でも相談できる人がほしい。」

④「急な体調不調、入院などを手伝ってくれる人がほしい。」

⑤「身寄りがいないので、いざという時に誰に頼み事をしたら良いか悩んでいる。」

⑥「成年後見制度を使いたいけれど仕組みが分からない。」

⑦「後見人になってもらいたい。」

⑧「障害を持つ子どもの親なき後が心配だ。」

⑨「老いじたくを完璧にしたい。」

⑩「没後の全てを託せる信用できる人を捜している。」

⑪「延命治療、過剰医療を断りたい。」

 

●事業内容

1.つながりサポート事業
独居高齢者、高齢者のみの世帯等に対し、日常生活に関する様々な相談援助や緊急対応、入院入所支援等のサービスを提供します。
2.成年後見事業
成年後見制度の総合的相談や申立手続きの支援、法人による後見人等の受任や、市民後見人養成等を実施します。
3.地域福祉権利擁護事業
認知症や知的障害、精神障害者等をお持ちの方に対し、自立した生活の支援や必要な福祉サービスの利用とそれに付随する日常生活の金銭管理のお手伝いを実施します。
4.生活困窮者自立支援事業
社会資源を活用し、生活の再構築と自立にむけた支援を行います。生活に困りごとや不安を抱えている方に個別の支援プランを作ります。
5.老いじたく講座
高齢者が直面する生活課題とその解決について、権利擁護センター職員が講師となってご説明します。(定期開催・出張)

 

 

 

(権利擁護センターのパンフレット①)

 

(権利擁護センターのパンフレット②)

 

(権利擁護センターのパンフレット③)

 

(権利擁護センターのパンフレット④)

 

■老いじたく講座
権利擁護センターが行っている事業には、前述の通りいくつかありますが、その一つに、「老いじたく講座の開催」があります。
これは、高齢者の方が直面するテーマについて、権利擁護センターの職員が講師となって講義をする勉強会です。

定期講座には、毎月1回実施する「基礎講座」「エンディングノート講座」があり、武蔵野市報でご案内しています。そのほか、5名様以上のグループを対象に1時間半程度の出張講座(事前に電話等にて相談)も実施しています。
●講座内容の例
○成年後見制度とは
○遺言書、書いてますか?
○入院時に必要な手続き
○葬儀について
○エンディングノートの書き方 ほか

(老いじたく講座年間スケジュール)

 

■事業実施における課題と今後の展望

●支援現場が抱える課題
権利擁護センターでは、法人後見(組織で成年後見人等を受任)業務を行っています。現在、受任する被後見人等の方は131人(令和元年12月末現在、累計261人)にのぼります。

市民が制度を理解しそれが普及するに伴って、受任件数の増加とニーズの多様化が進んでいます。これら、複雑化する支援を実施する現場では「深刻な人材確保の問題」がありますが、同時に支援を受ける側の市民にも、自助努力で「一般常識としての終活知識の習得」することなどが求められます。現在これが不十分であることが課題です。成年後見制度を利用しなくても、適切な老い支度で、自己完結的に人生を全うできるからです。

また、適切な支援の実施には、制度理解と信頼関係が必須です。

●今後の展望
権利擁護センターでは、独り住まいなどの方に対し、元気なうちから見守り・暮らしのサポートを提供する「つながりサポート」を強化していきたいと考えています。

つながりサポートが入口機能となって、その後、利用者の心身状況や生活環境等に問題が発生しても、同センターの権利擁護(成年後見人等受任・地域福祉権利擁護事業・生活困窮者自立支援事業等)の各種サービスに繋げ、解決する事例も少なくありません。この流れを強化し、切れ目のない支援を提供することが最も肝要です。その大前提は、利用者が元気なうちからの相互信頼関係の醸成です。

 

(つながりサポートのパンフレット①)

 

(つながりサポートのパンフレット②)

 

 

 

(文責:広報公益委員会)