今回は、先日訪問させて頂いた公益財団法人武蔵野市福祉公社・権利擁護センターが行っている中心的な事業の一つである「エンディングノート講座(市民向け公開講座)」に参加してきた模様をお伝えします。
 
エンディングノート講座は、老いじたく講座と二本立てで開講されています。
講師は権利擁護センター職員です。地域の高齢者の生活課題の発生を、予め適切に事前準備することにより未然に防ぎ、或いは重度化を防止することが目的です。
エンディングノートは残された家族への事後の指針の提示でもあります。日頃の高齢者支援から獲得した知見、ノウハウを説明し、関連する情報を提供します。

 

(武蔵野市福祉公社1階に掲示してある「老いじたく情報提供パネル」)

 


 

【ご協力頂いた方】
○公益財団法人武蔵野市福祉公社 在宅サービス課 課長 服部 哲治 様
【取材場所】
○武蔵野市福祉公社1階会議室(東京都武蔵野市吉祥寺北町一丁目9番1号)
【訪問日時】
○令和2年2月7日(金)13:30~15:00

 

「エンディングノート書き方講座」とは?
エンディングノート書き方講座は、武蔵野市福祉公社権利擁護センターの主な事業の一つで、1年間を通して行われている市民向けの啓発定期講座です。
テーマ別に「老いじたく講座」「エンディングノート講座」に分けて開催しています。

今回はエンディングノート書き方講座が開催され、現場で実務を担当している職員の方が講師となって一連の説明を行いました。
参加者は市報などで募っていますが、当日は普段よりも多くの方が参加されました。座談方式で参加者とフランクに意見交換しながら、没後に親族や社会が困惑しないように、予めの対策、重要事項を確認していきます。

●イベント概要
〇主催:武蔵野市福祉公社権利擁護センター
〇会場:武蔵野市福祉公社1階会議室
○対象:一般市民の方(事前申し込み制)
〇参加料:無料
○備考:「基礎講座」「エンディングノート講座」をそれぞれ毎月1回開催

【リンク】権利擁護センター「老いじたく講座」「エンディングノート講座」紹介ページ 

 

(エンディングノート講座テキストの表紙)

 

(サブテキスト表紙/発行:武蔵野市)

 

●プログラム内容
【第1部】テキストを使った講義
○テキストの目次と内容

テーマ 内容
1.まずチェックしてみよう! 万一のことがおこった際に連絡する人や意思表示について
2.様々な分野にわたる老いじたくの項目 医療・福祉・葬祭・法律・家族や自分の想い、思い出などについて
3.エンディングノートについて 「ノートを見れば大切な情報がわかる」「もしものときの備えとして年齢に関係なく書く」
4.もしものときのチェックシート まずはチェックシートを記入して意思表示の資料として活用

【第2部】権利擁護センターの説明
○活動内容や相談支援体制についての説明
【第3部】質疑応答
○特養や民間の有料老人ホームなどの種類に関係なく相談する機関(相談所)はどこにあるか?
○適正な葬式費用や適切な葬儀のやり方は?
○残される家族へ今のうちから意思表示したいが、どうすれば良いの?

 

「遺言」と「エンディングノート」は別物
「エンディングノート」については、民法などの法律等で規定はなく「法的拘束力はない」といわれています。没後の財産の帰属である相続や遺贈に関しては遺言で行うことになります。

遺言以外の事項について、遺言に付帯する「付言事項」として意思表示する方法はありますが、エンディングノートは、自由な形式で意思表示することができる特徴があります。
エンディングノートは、残された人たちに想いを伝える終活のツールとして認知度も高まっていますが、作成の対象年齢に決まりはなく、若年者でも「もしものときの備え」として作成するケースもあります。

 

地域に広がるエンディングノート講座とその上手な活用術
●地域が一体となった支援体制
武蔵野市福祉公社では、エンディングノート講座を含めた老いじたくに関する市民向け講座や相談会を、一年を通して行ってきました。
これからは、高齢世代の方々以外にも、現役で働いている世代や子ども世代の市民に向けた声掛けも増やしていき、幅広い世代へエンディングノートの活用を周知していきます。
この動きは、「第4次武蔵野市民地域福祉活動計画(2019年~2024年)」の策定委員会で取り上げられています。

また、昨今、社会問題化している空き家問題に関連して、武蔵野市の「空き家利活用等の普及啓発や相談事業」にも協力しています。
エンディングノートや遺言を活用して、没後の家屋の取り扱いを明示しておくことは、将来の空き家対策の一環にもなるからです。組織を越えて地域全体で情報の共有、及び支援体制が整備されています。
 
●武蔵野市緊急医療情報キットの活用
エンディングノート講座では、「武蔵野市緊急医療情報キット」の配布を通じこの制度の普及啓発も行っています。
万一、自宅で急に倒れてしまって救急車を呼んだ時などに、本人の意識がなかったり、家族の気が動転していたりすると、救急隊員に必要な情報を正しく伝えることが出来ません。そういった時にも、必要なことがきちんと救急隊員などに伝わるよう、普段から用意しておくためのツールです。

【キットの中身】
1.緊急医療情報シート
2.封筒
3.マグネットクリップ
4.表示シール

【リンク】武蔵野市「緊急医療情報キット」紹介ページ 

 

(武蔵野市緊急医療情報キットの中身)

 

●かかりつけ医との関係づくり
エンディングノートでは、本人のこれまで辿ってきた生活の情報や残された人たちへのメッセージのほかに、「リビングウィル」も大切な情報となります。

リビングウィルとは、終末期における医療処置等について、明瞭な判断能力を保持している時点で行う意思表示のことです。例えば、延命処置に対する希望、過剰医療、人工呼吸器の使用などを希望しないことなどです。
 
万一、病気が怪我で意識が戻らない場合などの処遇については、あらかじめリビングウィルとして明示しておくことが有効です。希望する処遇(あるいは近い形)を実現させるには、日ごろから自分の体調を知り管理している「かかりつけ医の存在」が大きな役割を果します。現役で働く世代の方でも、程よい距離感でかかりつけ医との関係を作っておくことは、効果的だと考えられます。

 

(リビングウィルに関する配布資料/表紙)

 

 

文責:中央支部広報公益委員会