今回は、令和元年の6月に取材訪問させて頂いた「子ども発達支援センター ゆりのき」に再び伺い、この2年間でのニーズの変化などについてお話を聞かせて頂いた模様をお伝えします。

ゆりのきが開設するまでは、中央区内における子どもの発達や療育に関する相談・支援については、中央区立福祉センター内の組織が受持ってきました。ゆりのきの開設後は、地域への周知の浸透や支援対象のお子さんの増加などにより相談・支援ニーズも増えてきています。

 

(廊下に掲げられた手作りのネームプレート)

 


 

【ご協力頂いた方】
○中央区立子ども発達支援センター 所長 遠藤 誠 様
○中央区立子ども発達支援センター発達支援係長 小林 直人 様
【取材場所】
○中央区立子ども発達支援センターゆりのき(東京都中央区明石町12−1中央区保健所等複合施設3階)
 【訪問日時】
○令和3年4月30日(金)13:30~

 

■子ども発達支援センターの役割とは?
子ども発達支援センターは、児童福祉法で規定する「児童発達支援センター」になります。
児童発達支援センターは、地域における子どもの発達相談に対する中核的な支援機関として、地域の障害のある児童を通所させて、日常生活における基本的動作の指導、自活に必要な知識や技能の付与または集団生活への適応のための訓練を行う施設です。日常生活における基本的な動作の指導などの福祉サービスを行う「福祉型」と、福祉サービスに併せて治療を行う「医療型」があります。

また、地方自治体や社会福祉法人などが設置する児童発達支援センターのほか、障害児通所支援として、民間の事業者なども運営する「児童発達支援事業所(未就学児童対象)「放課後等デイサービス事業所(原則就学後の6歳から18歳までが対象)などがあります。こちらは児童の通いの場としての機能が中心となります。現在中央区内では、児童発達支援事業所が7か所、放課後等デイサービス事業所が9ヵ所運営されています。

【表1】都内の施設数(出所:東京都障害者サービス情報/東京都福祉保健局・令和3年4月23日付)

種別 施設数*
福祉型児童発達支援センター 43ヵ所(30)
医療型児童発達支援センター 5ヶ所(5)
児童発達支援事業所 482ヶ所(396)
放課後等デイサービス事業所 958ヶ所(841)

*下記カッコ( )は、H31年の前回取材時点での数値。

 

■発達相談のニーズとトレンド
●増加している相談件数
中央区では、中央区立福祉センター内に「生活訓練幼児室」を昭和57年に開設し、これまで「こどもの発達相談」と専門的な支援を展開してきました。

その後、平成24年4月の児童福祉法一部改正を経て平成30年4月に「子ども発達支援センター ゆりのき」が開設されると、区内の年少人口(0歳~14歳)の増加、及びこどもの発達相談に関する周知の拡大と共に、相談件数も増加傾向となっています。
平成29(2017)年度に7,159件だった相談件数は、令和元(2019)年度には10,412件にのぼり、2年間で凡そ1.45倍に増加しています。

また、常時医療的ケアが必要なケースなど相談内容の多様化・高度化も進んでおり、その対応のため、保健・医療・障害福祉・保育・教育などの関係機関の連携強化を図りながら支援体制づくりに取り組んでいます。

 

【表2】こどもの発達相談実績の推移(出所:子ども発達支援センターゆりのき資料)

 

子ども発達支援センター ゆりのき」の事業概要
「子ども発達支援センター ゆりのき」は、児童福祉法に定める福祉型児童発達支援センターとして、平成30年4月に開設しました。
育ちに支援を必要とする子どもへの地域の療育の拠点として、子どもの発達に関する相談に対応し、適切な支援につなげています。また、保健・福祉・教育を繋ぐ「中央区育ちのサポートシステム」の推進に中心的役割を担っています。
「ゆりのき」の愛称は、空に伸びる樹形と「幸福」という花言葉が、子どもの成長を願う想いに通じることから、公募にて選ばれました。

●施設概要
○サービス種別:福祉型児童発達支援センター
○住所:東京都中央区明石町12番1号(中央区保健所等複合施設3階)
○電話番号:03-3545-9844 ○FAX番号:03-3545-9660
○業務・窓口受付時間:午前9時から午後5時(休日祝日年末年始は休館)
○開設:平成30年4月2日(設置者:中央区)
●こどもの発達相談
○対象:0歳~18歳(新規相談は就学前までのお子さん)
○内容:子どもの発達に関する相談を受け、発達状況に応じて心理面接、個別療育(理学療法・作業療法・言語療法)、集団療育や児童精神科などの専門相談を活用し、継続的な支援を行います。
●その他の事業
○児童発達支援(幼児室)○放課後等デイサービス○保育所等訪問支援○障害児相談支援○育ちのサポートシステムの推進
※個別の対象年齢・要件の規定あり

【リンク】子ども発達支援センター ゆりのき紹介ページ(中央区WEBサイト)

 

(ゆりのきのパンフレット)

 

■中央区独自の「育ちのサポートシステム」の推進
●ライフステージに応じた一貫した支援
中央区独自の「育ちのサポートシステム」とは、育ちに支援が必要な子どもたちが安心して学び成長できるサポート体制のことで、ゆりのきと地域の教育・保健・福祉等の専門機関が一体となり、ライフステージに応じた切れ目のない支援で見守る仕組みです。
このシステムには、「教育」「保健」「福祉」の各分野の専門職をコーディネーターとして配置し、専門機関との連絡調整を通じて継続した支援を実施しています。

●「育ちのサポートカルテ」
「育ちのサポートカルテ」は、蓄積してきた支援をつなぐ教育と福祉の共通のツールです。
カルテの名の通り、子どもに関わる多機関が、子どもの課題や適切な支援の方法を共有し、引き継ぐ成長・発達の記録です。本人が18歳になるまで運用し、その後23歳になるまで、「子ども発達支援センター ゆりのき」が保管します。
これにより、一人一人のライフステージに応じた切れ目のない一貫した支援を提供することができます。
 

(中央区そだちのサポートカルテ資料/パンフレットより)

 

■課題と今後の展望
●コロナ禍での支援継続
子ども発達支援センターは、支援が必要な子どもとその家族を対象とした通所施設として、現在のコロナ禍にあってもサービスを中断することなく提供していくことが重要となっています。そのため、自粛等もお願いしながら、施設内に密な状況をつくらず、各種感染症対策の徹底に努め、運営を行っています。
具体的には、検温、手指消毒、うがいなどの基本的な対策に加え、職員による使用後の徹底した施設や設備の消毒、換気とプライバシーの両方に配慮するため、一部教室の扉を医療用カーテンに切り換えるなどの対策も講じています。

●「育ちのサポートシステム」の今後の取組
「育ちのサポートシステム」は、今後も子どもの発達支援に関するニーズの増加が予想されるため、令和3年3月に策定した「中央区障害者計画・第6期中央区障害福祉計画・第2期中央区障害児福祉計画」においても施策を推進していくこととしています。
今後、計画に従って、リーフレットの配布やホームページへの掲載、講演会や保護者向け説明会の開催等により、発達障害に対する正しい知識と「育ちのサポートカルテ」について普及を図るとともに、学識経験者からの助言や合同研修会等を通じて支援に携わる職員のスキルアップなどにも取り組み、このシステムを推進していきます。

 

(理学療法や作業療法を行うこども機能訓練室)

(エレベーターホール前のロビー)

 

 

 

~誰でも笑顔になれる中央区を目指して~

 

(文責:広報公益委員会)