今回は、いつもお世話になっている公益財団法人武蔵野市福祉公社・権利擁護センターが行っている事業の一つである老いじたく講座(市民向け公開講座)「成年後見制度について」に参加してきた模様をお伝えします。

この公開講座は、現職の権利擁護センター職員の方が講師となって行っているプログラムですが、権利擁護センターでは、成年後見制度についての講座のほか「老いじたくの基礎知識」「エンディングノート書き方講座」の公開講座も定期的に行っています。

どちらの講座も、市民の方に理解しやすく、且つすぐに実践できるように、基本的な知識から実践的な事例紹介に至るまで、コンパクトにまとめられた内容となっています。

 

(講師の山保さんによる質疑応答のひとコマ)

 


 

【ご協力頂いた方】

〇公益財団法人武蔵野市福祉公社 権利擁護課 副参事 服部 哲治 様

〇公益財団法人武蔵野市福祉公社 権利擁護センター 

 ソーシャルワーカー 山保 龍太 様

【取材場所】

〇武蔵野市福祉公社1階会議室(東京都武蔵野市吉祥寺北町一丁目9番1号)

【訪問日時】

〇令和5年3月9日(木)13:30~15:00

 

■成年後見制度とは?

●成年後見制度の概要

成年後見制度は、平成12年4月1日からスタートしました。この制度は、認知症・知的障害・精神障害などによって判断能力が十分ではない方を支援・保護するための制度です。

判断能力の不十分な場合、不動産や預貯金などの財産を管理したり、生活支援のために介護などのサービスに関する契約を結んだりする必要があっても、自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。

そのほか、悪質商法の被害にあうおそれもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護し支援する制度です。

成年後見制度には、大きく分けると法定後見制度任意後見制度の2つの制度があります。

成年後見関係事件の概況(令和3年1月~12月)

最高裁判所事務総局家庭局が実施した、全国の家庭裁判所の成年後見関係事件(後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件)の処理状況における実情調査の結果によると、成年後見関係事件の申立件数は合計で39,809件(前年は37,235件)となり、対前年比約6.9%の増加となっています(東京裁判所管内では5,055件)。

また、令和3年12月末日時点における、成年後見制度(成年後見・保佐・補助・任意後見)の利用者数は合計で239,933人(前年は232,287人)であり、対前年比約3.3%の増加となっています。

このことから、期間内における申立件数と利用者数は僅かに伸びています。しかし、現在の認知症高齢者数に比較して、利用はまだまだ低調です。

*データ出所:最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況 令和3年1月~12月」

 

■権利擁護センターの役割と概要
武蔵野市福祉公社では昭和56年4月の事業開始当初から基幹事業として「有償在宅福祉サービス」の実施を通じて、市民の権利擁護を支援してきました。

権利擁護センターは、生活自立支援センター成年後見利用支援センターと同様に、武蔵野市福祉公社の行う尊厳ある市民生活に資する権利擁護事業の中心的な役割を担っています。

●武蔵野市福祉公社の概要

〇名称:公益財団法人 武蔵野市福祉公社

〇所在地:東京都武蔵野市吉祥寺北町一丁目9番1号 2階

〇設立年:昭和55(1980)年12月01日 創立(任意団体)

     昭和56(1981)年4月1日 事業開始 

     平成元(1989)年03月31日 財団法人設立認可

     平成25(2013)年04月01日 公益財団法人へ移行

〇従業員数:200 人 (2023年1月現在)

〇主な事業:高齢者福祉サービス、権利擁護事業、介護保険サービス、福祉施設の管理運営(武蔵野市の指定管理者)、地域子育て支援拠点事業 ほか

【リンク】公益財団法人武蔵野市福祉公社ホームページ

●武蔵野市福祉公社の歴史

武蔵野市福祉公社は1980年に任意団体として設立され2021年に設立40周年を迎えました。

設立翌年の1981年には全国初となる「契約による有償の福祉サービス(有償在宅福祉サービス事業)」と福祉資金貸付事業(リバースモーゲージ)を開始し、自治体や公的機関による措置制度を通じた福祉の提供や施設福祉が主流だった当時から現在に至るまで、市民個々の背景に寄添った有機的な在宅福祉サービスの提供を続けています。

その後、1989年に、行政関与型在宅福祉提供団体として全国初の財団法⼈資格を取得し、2013年からは公益財団法⼈として事業を展開しています。

●福祉公社について

「福祉公社」とは、社会福祉事業団と同じく行政の一組織、または行政からの事業委託、もしくは行政から全面的な援助を受け、地域の高齢者などに対し、各種の有償在宅福祉サービスを提供する非営利・公益の組織です。

福祉公社としての組織形態は、2000年に施行された介護保険制度や社会福祉事業法から社会福祉法への改正を契機に全国に点在していた組織が、主に社会福祉協議会等に統廃合され、現在では数少ない組織形態となっています。

 

(武蔵野市福祉公社権利擁護センターのパンフレット)

(武蔵野市福祉公社成年後見利用支援センターのパンフレット)

 

 

■「成年後見制度について(市民向け公開講座)」の内容
「成年後見制度について(市民向け公開講座)」は、権利擁護センターの主な事業の一つで、老いじたく講座のひとつとして1年間を通して行われている市民向けの啓発定期講座です。

老いじたく講座では、「老いじたくの基礎知識」「成年後見制度について」「エンディングノート書き方講座」の各テーマに分類した三講座が設けられています。

今回参加した成年後見制度の講座は、現場で実務を担当している職員の方が講師となって基礎知識の学習から実務的な事例紹介等の一連の講義を行いました。

参加者は市報などで募っていますが、少人数の座談方式で参加者とフランクに意見交換しながら、情報を共有しやすい環境でのプログラムとなっています。

 イベント概要

〇主催:武蔵野市福祉公社権利擁護センター

〇会場:武蔵野市福祉公社1階会議室

〇対象:一般市民の方(事前申し込み制)

〇参加料:無料

〇開催:「老いじたくの基礎知識」「成年後見制度について」毎月1回程度開催、「エンディングノート書き方講座」隔月開催

【リンク】権利擁護センター「老いじたく講座」紹介ページ 

 

(講座で説明のあった「老いじたく」の紹介ページ)

 

■当日の模様

今回の講座では、成年後見制度の「法定後見」と「任意後見」との違いや、管轄裁判所へ申立てる際のフローや注意点の解説など、基本的な知識から実践的な手続きに至るまでの全体像を、コンパクトにまとめて頂いた内容となっていました。

成年後見制度や介護保険サービスなどの公的な制度だけではまかなえないニーズに対応するため、個別契約に基づいて福祉公社が実施する「つながりサポート」を利用した場合の有用性について、事例紹介もわかりやすく説明頂きました。

最後の質疑応答の場面では、受講された方からの具体的な質問も多く、熱心なやり取りが交わされていました。

●プログラム内容

【第1部】総論(老いじたく講座と福祉公社の役割)

「福祉公社とは」

「老いじたく講座とは」

「介護保険制度~サービス利用までの流れ~」

【第2部】各論(成年後見制度の解説)

「成年後見制度の概要」

「成年後見制度の種類と類型」

「任意後見制度について」

「法定後見制度について」

「任意後見と法定後見の比較」

「成年後見制度の費用について」

「成年後見人等の仕事について」

「老い支度の手続の流れ」

【第3部】付録(成年後見制度に関連した周辺制度やサービス)

「遺言書について」

「遺言書の書き方」

「エンディングノート」

「エンディングノートを書いてみる」

「リビングウィル」

「つながりサポートについて①②」

【第4部】質疑応答

「家族信託について」

「第三者(専門職)成年後見人選任について」

 

(福祉公社1階に掲示されている「老い支度相談会のご案内」)

 

 

文責:中央支部広報公益委員会