今回は、2月23日(金曜日)に、私共公益社団法人全日本不動産協会東京都本部の全日東京会館2階全日ホールで開催された、NPO法人キッズドアが実施してきた震災被災地におけるこれまでの支援活動の軌跡の発表を中心としたシンポジウムに参加してきた模様をお伝えします。
子どもたちへの学習支援を通じて、日本の貧困連鎖を断ち切るという社会的に意義のある活動を行っているキッズドアには、活動に賛同し、経済的・人的・物的その他多方面から組織運営を支援する多くの法人や団体とのネットワークがあります。
全日本不動産協会東京都本部では、その支援団体の一つとして、今回の様な会場提供を始めとする様々な支援を陰ながら続けております。
今回は、私共中央支部で続けている、東日本大震災の被災地復興活動の取材事業にも繋がる趣旨でしたが、東京の馴染みのある場所で被災地支援活動を感じる新しい視点を持って参加して来ました。
【ご協力頂いた方】
○特定非営利活動法人キッズドア 広報担当者様
【取材場所】
○会場:公益社団法人全日本不動産協会東京都本部全日東京会館2階全日ホール(東京都千代田区平河町1-8-13)
【訪問日時】
○平成30年2月23日(金)15:00~17:00
■ イベント概要
キッズドアでは、東日本大震災の発生を機に、被災地での支援活動を行ってきました。
当初の避難所等で子どもたちの勉強を見る支援から始まり、現在では仙台に東北事業部を設置し、東京本部と同じような、子どもたちへの学習支援を行っています。早いもので今年の3月には東日本大震災発生から7年が経過します。
今回のイベントは、東北の被災地において、学習支援を通じて、「被災地の子どもたちを取り巻く環境がどう変わったか?」「教育支援はその役割を終えたのか?」についてディスカッションするシンポジウムです。このシンポジウムを通じて、被災地のこれからについて、皆で考えて行きます。
〇主催:特定非営利活動法人キッズドア
(法人本部:東京都中央区新川2-1-11 八重洲パークビル7階)
〇TEL:03-5244-9990 〇MAIL:info@kidsdoor.net
〇参加費:無料
〇定員:80名
●当日のプログラム
普段は、東京都本部で行われる法定研修会などに使われている事が多い会場ですが、当日は、社会貢献活動などを行っている・或いは興味を持っている企業などの沢山の方々が、聴講に来られておりました。
≪プログラム≫
<15:00~15:30>
【基調講演】「東日本大震災から7年 今までとこれから」
・・・宮城県本吉郡南三陸町 町長 佐藤 仁 氏
<15:30~16:10>
【第一部】「被災地の子どもたちのこれからの支援を考える」
◆「被災地支援の教訓と変化するニーズへの対応」
・・・NPO法人キッズドア 理事長 渡辺 由美子 氏
・・・NPO法人キッズドア 地方創生推進室 室長 佐藤 陽 氏
◆「子どもの学び支援の現場との連携から見えてきたこと」
・・・公益財団法人ベネッセこども基金 事務局長 龍 千恵 氏
◆「東日本大震災復興支援財団が行ってきた支援活動とこれからの展望」
・・・公益財団法人東日本大震災復興支援財団 相内 洋輔 氏
<16:20~17:00>
【第二部】 パネルディスカッション / 質疑応答
≪登壇者団体紹介≫
◆公益財団法人ベネッセこども基金
未来ある子どもたちが安心して学習に取り組める環境のもとで、自ら可能性を広げられる社会を目指し、子どもたちを取り巻く社会的な課題の解決および多様な学びの機会の提供に取り組むことを目的として活動している組織です。
◆公益財団法人東日本大震災復興支援財団
東日本大震災で被災した東北の子どもたち、子どもを持つ家庭、および子どもたちが生活するコミュニティが出来るだけ早く震災前の日常を取り戻すための支援を行うことを目的として活動している組織です。
支援内容は、単に震災前の状態に回復させることにとどまらず、困難を乗り越えた子どもたちが希望を抱きながら次代を担う人材として成長し、ひいては復興の原動力として活躍ができるよう、東北の子どもたちの前向きなチャレンジを後押ししています。
◆特定非営利活動法人キッズドア
2007年の設立以来、日本国内の子ども支援に特化した活動を続けており、経済的に苦しい家庭・ひとり親家庭・児童養護施設や被災地で暮らす子どもたちに対し、「さまざまな困難な状態にあっても夢をあきらめず、すべての子どもが将来に希望を持って活躍できる。」それがあたりまえの社会になるよう、企業・行政・法人・個人・学生と手を携えながら広く活動しています。
■ 基調講演の内容「南三陸町における復興への変遷と未来予測」
当日の最初に行われた基調講演では、南三陸町の佐藤仁町長が講演されました。
2011年3月11日の東日本大震災発生当時の状況から、凡そ7年が経過した今日に至るまでの復興の軌跡をスライド資料で振り返り、将来に向けて現在進めている歩みを佐藤町長から伝えて頂きました。
●南三陸町の基本データ
南三陸町は、宮城県の北東部本吉郡に位置し、東は太平洋の志津川湾等に位置し、三方を500m級の山に囲まれた海山が一体となった自然環境に位置した町です。沿岸部は、三陸復興国立公園の一角を形成しています。
○人口/世帯数:合計13,202人・男6,497人・女6,705人・世帯数4,570件(H30.1月)
○沿革:平成17年10月1日、志津川町と歌津町の2町が合併し、南三陸町となる。
○主な産業:水産業を主とした第一次産業及び観光業等
●東日本大震災による被害状況(平成29年6月30日現在)
○人的被害:死者620人・行方不明者211人
○建物(住家)被害:全壊3,143戸・半壊大規模半壊178戸
○避難者数:最大33ヶ所の避難所で9,753人の確認(平成23年3月19日当時)
●東日本大震災からの復旧・復興状況
○仮設住宅の建設:合計2,195戸(48の地域に58ヵ所の仮設住宅団地)
○南三陸町役場(本庁舎)新設:平成29年9月14日
○水産業共同利用施設復興整備事業の実施:8施設で操業開始(平成29年6月末現在)
○南三陸志津川さんさん商店街本節オープン(平成29年3月3日・28店舗)
*データ出所:南三陸町ホームページ(危機管理課危機管理係ほか)
佐藤町長からは、震災発生当時から現在の復興状況のエピソードの中で、南三陸町防災対策庁舎の震災遺構化が決定するまでのお話等がありました。その他、南三陸町が取り組む「エコタウンへの挑戦」の一環として、バイオマス産業都市構想を推進しているお話もありました。
■ 地方創生推進室が行う復興支援事業
基調講演の後の第一部は「被災地の子どもたちのこれからの支援を考える」と題して、キッズドア及び協業する団体の方々が、現在進めている活動内容を報告致しました。
最初はキッズドアの渡辺代表が、これまでの仙台や南三陸町での学習支援活動による経験を踏まえ、「仙台で事業を続ける意義」「地域との交流の大切さ」「地元を活性化させるリーダーの育成」などについてお話をされました。
続いてキッズドアで南三陸町との協働を管轄する地方創生推進室室長の佐藤さんから、被災地で官民一体となって取り組む様々な地域活性化を支援する活動報告がありました。
前段の渡辺代表のお話にあった様に、佐藤さんが受け持っている地方創生推進室では、人づくりを通じた地域活性に取り組んでいます。
当日は、この1年間で実施された3つの取り組みについて活動報告をして頂きました。
●志翔学舎(志津川高校魅力化推進事業)
この事業は、南三陸町が立ち上げた志津川高校魅力化推進懇談会が礎となり具体化された事業で、キッズドアは同事業の運営を主力の学習支援の方面からサポートし、南三陸町と協働しています。
同事業の背景には、地元で育った子供たちが「南三陸町で教育を受ける魅力を感じる」ことを推進し、子どもたちが高校進学時に町外へ流出させない目的もあります。
【事業概要】
○名称:志津川高校学習支援センター「志翔學舎」(場所:志津川高校中講義室・旭朋会館)
○開講日:週5日(平日又は休日)
○受講料:無料
○学習内容:個別学習指導/eラーニング/推薦・AO入試対策
●U-18東北次世代リーダーカンファレンス
このイベントは、これからの社会を担う東北6県の高校生30名が集結し、リーダーの必須条件である「不確実な時代における思考・行動のあり方」の理解を促進するためのプログラムです。
また、このカンファレンスには次の3つの特徴があります。
1.現在活躍しているゲストスピーカーとの対話を通じてリーダーのあり方・視点を学ぶ
2.地域の取り組みや実際の課題を直接見ることで「自分ごと」にし行動していく
3.寝食を共にした同世代の切磋琢磨できる仲間との出会い
【イベント概要】
○応募資格:東北6県に在住の高校生1年生~3年生(先着順)
○日程:3泊4日(2017年8月17日~8月20日)
○開催地:宮城県南三陸町
●U-25東北ソーシャルビジネスコンテスト
このイベントは、これからの東北の発展や復興支援に繋げるべく、「次世代のリーダーの誕生」と「コミュニティづくりの発展」を目指したものです。
またここには、一人でも多くの東北の若者に、「起業」に関心を持ってもらいたいとの想いが込められております。東北各地からユニークな課題解決に挑戦する数多くの企画がエントリーされ、来月の3月18日(日)13時~17時に仙台のTKPガーデンシティ(仙台市青葉区中央1-3-1)でファイナルステージが行われます。
【イベント概要】
○応募資格:25歳以下の方で日本語のコミュニケーションがとれる方(性別・国籍不問))
○審査方法:書類審査(1次)・メンタリング合宿でのプレゼンテーション(2次)
*2次審査通過者がファイナルステージに進みます。
○後援自治体:秋田県仙北市/秋田県羽後市/山形県大石田町/岩手県大船渡市/山形県長井市/宮城県南三陸町/宮城県気仙沼市/秋田県鹿角市
■ その他登壇者が行う復興支援活動
●子どもの学び支援の現場との連携からみえてきたこと(公益財団法人ベネッセ子ども基金)
ベネッセこども基金は、2014年10月に一般財団法人として設立され、翌2015年4月には公益財団法人へ移行しました。
同基金では、助成事業を通じ、子どもたちへの学びの支援や、被災地の子どもたちへは育ちや学びの両面支援に取り組んでいます。
また、キッズドアに対する同基金の活動助成(災害地の子どもたちの学びや育ちの支援活動助成)を通じ、復興支援にも取り組んでいます。
●東日本大震災復興支援財団が行ってきた支援活動とこれからの展望(公益財団法人東日本大震災復興支援財団)
東日本大震災復興支援財団は、「東日本大震災で被災した東北の子どもたち、子どもを持つ家庭、および子どもたちが生活するコミュニティが出来るだけ早く震災前の日常を取り戻すための支援を行うこと」を活動の目的とした公益財団法人です。
キッズドアの様な活動団体への助成事業だけでなく、財団自身も復興支援活動を行っています。
同財団の実施する支援の一つに、現在も続いている「まなべる基金」があります。ここでは、東日本大震災の影響により、経済的な理由で進学・進級が困難になった高校生を支援するため返還不要の奨学金給付を行っています。
■ 活発な意見が交わされたパネルディスカッション
第二部では、第一部の登壇者の方々に對馬東北事業部長が加わったパネリストによるディスカッションが行われました。
このプログラムでは、「復興支援事業を継続するための財源確保の重要性」や「支援を実施する人材(特にミドルマネージャー)の不足」、それに関連し「人材育成を目的としたファンドレイジングの支援」等、具体的な熱のある討議が行われました。
また、聴講参加者との質疑応答の場面では、キッズドアが実践しているグローバルな学習支援についてのテーマが話し合われるなど、とても活気のある時間となりました。
文責:中央支部広報公益委員会