今回は、2020年東京パラリンピックの競技種目にもなっているブラインドサッカー(5人制サッカー)の普及・発展と競技力の国内における向上を統括組織として活動している特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会の活動現場を訪れた際の模様をお伝えします。

当日は、年内最後のイベントであるブラインドサッカー男子日本代表合宿(第3日目)が行われていました。
この合宿は、ブラインドサッカー男子日本代表と、次世代の日本代表チームを担う可能性のあるメンバーで構成されたナショナルトレセンチームが合同で開催された内容でした。

(練習開始前の全体ミーティングの風景)

(練習開始前の全体ミーティングの風景)

 


 

【取材場所】
○ZOZOPARK HONDA FOOTBALL AREA(千葉県千葉市美浜区若葉3丁目2-17)
【訪問日時】
○平成30年12月24日(月・祝)
【ご協力頂いた方】
○特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会(JBFA)
事業戦略部 部長 山本 康太 様

■ブラインドサッカーとは?
ブラインドサッカーは、通常情報の8割を得ているという視覚を閉じた状態でプレーします。技術だけではなく、視覚障がい者と健常者が力を合わせてプレーするため、「音」と「声」のコミュニケーションが重要になる競技と言えます。
●競技ルール
視覚障がい者サッカーは、フットサル(5人制サッカー)を基にルールが考案されており、障がいの程度によって、全盲の選手による「ブラインドサッカー」と弱視の選手による「ロービジョンフットサル」の2つのカテゴリーに分かれています。
試合時間は20分ハーフで行われ、ピッチサイズは通常のフットサルコートとほぼ同じく長さ40m×幅20mの規模となります。
その他のルールには、アイマスクの着用やサイドフェンスの設置などがあります。

 ●ブラインドサッカーの3つの大きな特徴
①転がると音の出るボール
ボールは、フットサルボールと同じ大きさです。ボールは転がると音が出る特別なボールを使用します。全盲の選手たちもボールの位置や転がりがわかります。
②ボイ(Voy)
フィールドプレーヤーはボールを持った相手に向かって行く時に、「ボイ!」と声を出さなければなりません。選手の存在を知らせ、危険な衝突を避けるためのルールです。
③目の見える人の協力
敵陣ゴールの裏に、「ガイド(コーラー)」と呼ばれる役割の人が立ちます。攻めている場面でゴールの位置と距離、角度、シュートのタイミングなどを声で伝えます。また、GKは晴眼者または弱視者が務め、自陣での守りについて選手に声で指示を出します。サイドフェンスの外には、監督が立ち、声で指示をします。

●ブラインドサッカーの歴史
1980年代初頭に開発され、ヨーロッパ、南米を中心に広くプレーされてきたブラインドサッカーですが、現在プレーされているIBSA(International Blind Sports Federation:国際視覚障がい者スポーツ協会)の国際ルールが日本に上陸したのは2001年でした。

その後、2002年5月に韓国・ソウルにて行われた日本対韓国、同年8、9月に岐阜・高山、神戸にて行われた日本、韓国、ベトナムの3ヶ国によるアジアフレンドリーシップカップを経て、2002年10月、JBFAが正式に発足しました。
翌2003年3月9日には、東京で初めての全国大会である『第1回日本視覚障がい者サッカー選手権』が実施されました。2018年の第17回大会では、参加チーム数が21チームに増えました。

また、地域大会は「北日本リーグ」「東日本リーグ」「中日本リーグ」「西日本リーグ」と4つのリーグに分けられており、地域リーグの上位チームが出場できる「KPMGカップ ブラインドサッカークラブチーム選手権」も春に行われています。

(ブラインドサッカーの基礎知識/JBFA資料より抜粋)

(ブラインドサッカーの基礎知識/JBFA資料より抜粋)

 

■JBFAの概要
JBFAではビジョンに「ブラインドサッカーを通じて、視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会を実現すること」を掲げています。

またJBFAでは、次の7つの事業部を軸に活動を行っています。
①強化事業:日本代表選手の強化合宿の開催や国際大会への派遣など
②育成事業:国際親善試合の開催や指導方法の研究・コーチ制度の推進など
③普及事業:盲学校や特別支援学校への講習会・用具寄贈、講師育成など
④審判事業:大会への審判派遣や審判の育成・登録など
⑤大会事業:全国大会、地域大会の開催など
⑥ダイバーシティ事業部:晴眼者を対象としたスポ育プロジェクト・出張授業・社員研修・啓発イベントの実施など
⑦ソシオ事業:取材対応やWebサイト管理、ファンへの情報発信など

●組織概要
○名称:特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会
(2010年8月1日より「日本視覚障がい者サッカー協会」から改称)
○発足日:2002年10月
(前身となる「音で蹴るもうひとつのワールドカップ実行委員会」は2001年11月11日に発足)
○事務局:東京都新宿区百人町2-21-27 ペアーズビル3階
○電話:03-6908-8907
○AX:03-6908-8908
○E-Mail:info@b-soccer.jp
【リンク】JBFA公式サイト

■当日(男子代表合宿)の模様
当日は、年末を締めくくる男子日本代表の合宿でしたが、終日強風が吹き荒れおり、屋外で行うイベントとしてはとても厳しい環境でした。
前半は、選手全体で行うウォーミングアップトレーニングに長い時間を割き、後半で、ゲーム形式の練習が行われました。
現場にはサッカー専門誌やテレビ局の取材クルーも訪れており、注目度の高さが覗えました。

(ウォーミングアップの模様)

(ウォーミングアップの模様)

 

(フリーキックの場面)

(フリーキックの場面)

 

(サイドフェンス際の激しい攻防)

(サイドフェンス際の激しい攻防)

 

(ゴール前でのシュートの場面)

(ゴール前でのシュートの場面)

 

課題と今後の展望
これまでは、JBFAの様な公益活動では、国や自治体からの助成金・企業からの協賛金などで事業運営費を賄っていたケースが多く見られました。
しかし、JBFAではこの様な従来型の収益構造に頼った運営に依存せず、今後の事業継続のための財源安定化の施策を実施しています。

ブラインドサッカーを通じた活動には、「スポーツ振興」「福祉推進」「教育支援」の要素がベースにあり、JBFAではこれらの資産価値を強化し、今後の組織活動の柱として様々な事業ポートフォリオを推進しています。

●ダイバーシティ事業における「スポ育」「企業研修」「個人向け体験プログラム」
①スポ育
「スポ育」とは、パラリンピック競技であるブラインドサッカーの要素を用いたダイバーシティ(多様性)教育プログラムです。
小・中学生を対象とした体験型授業であり、子どもたちに障がい者の理解や多様な個性の尊重、相手の立場に立った声の掛け方などへの気づきを生み出す効果があります。
【リンク】「スポ育」紹介ページ

②企業研修(OFF TIME Biz)
ブラインドサッカーの競技力向上に伴い培われるコミュニケーションやチームビルディングなどの要素を学べるようプログラム化し、企業・団体からのニーズや課題にこたえるサービスとして2012年に開発したプログラムです。
新しい研修スタイルとして、管理職研修・新人研修などにも取り入れられています。
【リンク】「OFF TIME Biz」紹介ページ

③個人向け体験プログラム(OFF TIME)
プレーではなく、アイマスクの使用体験を通じて、自分のコミュニケーションの癖などを体感するプログラムです。
参加者は、その後の試合観戦やボランティア活動への参加、スポンサー契約、企業研修への導入など、ブラインドサッカーとの継続的な関係性の創出につながっています。
【リンク】「OFF TIME」紹介ページ

●会員の会費による組織運営における「ファン獲得とすそ野拡大」
①フューチャー㈱との取組み
JBFAでは、デジタルマーケティングなどを手掛けるフューチャー㈱と協働し、VRブラインドサッカー体験アプリを開発しました。
2020年の東京パラリンピック以降を見据え、全国各地で開催されているブラインドサッカー体験会でITを活用し、参加者をファンとして獲得に結びつけることを目指します。
【リンク】「VRブラインドサッカー体験アプリの提供」紹介ページ

②ブラサカみらいパートナー
ブラサカみらいパートナーとは、月1,000円から支援できる寄付会員制度です。
会員には、ブラサカマガジンの提供や有料大会のチケットを先行購入などの特典が与えられます。寄付金の使途は、日本代表の強化・選手の育成など競技に関わる事業、視覚障がい児に運動の楽しさを伝える事業、小・中・高等学校への体験授業などのダイバーシティ推進事業等への活用となります。
【リンク】「ブラサカみらいパートナー」紹介ページ

 

(文責:広報公益委員会)