今回は、昨年4月に中央区保健所等複合施設の3階にて新しく開設された、「子ども発達支援センター ゆりのき」に伺い、開設の経緯や中央区内におけるニーズや支援の特徴などについてお話を聞かせて頂いた模様をお伝えします。

これまで、中央区内における子どもの発達や療育に関する相談・支援のニーズについては、中央区立福祉センター内の組織が受持ってきました。
その後、同様のニーズの増加に対しては、中央区独自事業をスタートする等の支援策で対応してきましたが、平成24年4月の児童福祉法一部改正の流れもあり、中央区は子どもの発達についての支援機関として「子ども発達支援センター ゆりのき」を平成30年4月2日に開設しました。

 

(ゆりのきの待合ロビー)

 


 

【ご協力頂いた方】
○中央区立子ども発達支援センター 所長 北澤 千恵子 様
【取材場所】
○中央区立子ども発達支援センターゆりのき(東京都中央区明石町12−1中央区保健所等複合施設3階)
 【訪問日時】
○令和元年6月27日(木)AM10時~
 

■子ども発達支援センター の役割とは?
児童福祉法では「児童発達支援センター」と言います。
地域の障害のある児童を通所させて、日常生活における基本的動作の指導、自活に必要な知識や技能の付与または集団生活への適応のための訓練を行う施設です。
日常生活における基本的な動作の指導などの福祉サービスを行う「福祉型」と、福祉サービスに併せて治療を行う「医療型」があります。
障害児に対する通所施設は、以前は障害種別ごとに分かれていましたが、複数の障害に対応できるよう平成24年度より一元化が行われました。

対象は、身体に障害のある児童・知的障害のある児童または精神に障害のある児童(発達障害児を含む)としており、児童相談所・市区町村の保健センター・医師等により療育の必要性が認められた児童が利用しています。
児童発達支援センターは、地域における子どもの発達相談に対する中核的な支援機関として、「保育所等訪問支援」や「障害児相談支援」、地域生活支援事業における「巡回支援」「専門員整備や障害児等療育支援事業」等を実施しています。
また、児童発達支援センターは、地方自治体や社会福祉法人などが設置する総合的な支援機関となりますが、民間の事業者なども運営する「児童発達支援事業所(未就学児童対象)」や「放課後等デイサービス事業所(原則就学後の6歳から18歳までが対象)」などは、児童の通いの場としての機能が中心となります。

 

【参考資料】都内の施設数(出所:東京都福祉保健局・平成30年10月1日時点)

種別 施設数 定員数
福祉型児童発達支援センター 30ヶ所 1,127人
医療型児童発達支援センター 5ヶ所 180人
児童発達支援事業所 396ヶ所
放課後等デイサービス事業所 841ヶ所

 

 

【参考資料】地域における児童発達支援センターの位置付け(出所:厚生労働省/児童発達支援ガイドライン資料)

 

■子ども発達支援センター「 ゆりのき」の事業内容
「子ども発達支援センターゆりのき」は、児童福祉法に定める福祉型児童発達支援センターとして、平成30年4月に開設しました。
育ちに支援を必要とする子どもへの地域の療育の拠点として、子どもの発達に関する相談に対応しています。また、さまざまな事業や保健・福祉・教育を繋ぐ「中央区育ちのサポートシステム」の中心的役割を担っています。

●名称の由来
「ゆりのき」は、子ども発達支援センター前の歩道に植栽された街路樹で、空に伸びる樹形と「幸福」という花言葉が、子どもの成長を願う想いに通じることから、公募にてセンターの愛称名に選ばれました。

 
施設概要
○サービス種別:福祉型児童発達支援センター
○住所:東京都中央区明石町12番1号(中央区保健所等複合施設3階)
○交通アクセス:東京メトロ日比谷線「築地駅」より徒歩7分又は東京メトロ有楽町線「新富町駅」より徒歩10分
○電話番号:03-3545-9844 ○FAX番号:03-3545-9660
○業務・窓口受付時間:午前9時から午後5時(休日・祝日・年末年始は休館)
○設置者:中央区 ○開設:平成30年4月2日
【リンク】子ども発達支援センター ゆりのき紹介ページ(中央区WEBサイト)

 

●事業内容

事業名 対象 内容
こどもの発達相談 0歳から18歳の方
(新規相談は5歳まで)
お子さんの発達に関する相談を受け、発達状況に応じて、心理面接、個別療育(理学療法、作業療法、言語療法)、集団療育や児童精神科などの専門相談を活用し、継続的な支援を行います。
保育園巡回相談 0歳から5歳のお子さん 相談員が保育所、認定こども園などを訪問し、在園するお子さんの発達状況についての助言を行います。
児童発達支援(幼児室)(※) 1歳半から5歳のお子さん 小グループでの遊びや課題を通して、基本的生活習慣の確立、運動機能・認知機能・社会性を高める支援を行います。
放課後等デイサービス(※) 6歳から18歳の障害のある方 放課後や夏休みなどの居場所の確保と生活の支援を行います。
保育所等訪問支援(※) 0歳から18歳の障害のある方 相談員が保育所、幼稚園、認定こども園、小学校、特別支援学校などを訪問し、職員に対し専門的な支援を行います。
障害児相談支援 0歳から18歳の障害のある方 障害福祉サービスを利用する障害のあるお子さん・保護者に対し、支援計画を作成します。
育ちのサポートシステムの推進 0歳から18歳の方 発達障害など育ちに支援を必要とする子どもの個性を理解し、保健、福祉、教育が連携してライフステージに応じた切れ目のない一貫した支援を推進します。

(※)事業を利用する場合は、障害児通所支援の支給決定(受給者証)が必要です。

 

(理学療法や作業療法を行うこども機能訓練室)

 

(遊びを通じて発達を促す心理面接を行うプレイルーム)

 

(木目調でデザインされた明るい相談室)

 

■子どもの発達相談における現状
●増加している相談件数
中央区立福祉センターは、昭和57年12月に開設しました。同年に生活訓練幼児室を開始し、こどもの発達相談は、昭和63年より行っています。
その後、相談・支援のニーズは増加傾向が続き、1年間にわたるセンターの開設のための拡張工事(平成29年7月から平成30年6月)を経て、子ども発達支援センターゆりのきが、平成30年4月に開設されました。

相談ニーズの増加は、具体的な数字にも表れています。
今から6年前の2013年(平成25年)の年間相談件数が4,718件・相談者の実人数が256人でしたが、昨年の2018年(平成30年)では、年間相談件数が9,625件相談者の実人数が434人に上りました。相談件数はこの5年間で、2倍に増えました。

 

【参考資料】こどもの発達相談実績の推移(出所:子ども発達支援センターゆりのき資料

 

■「中央区育ちのサポートシステム」の導入と「育ちのサポートカルテ」の運用
●ライフステージ応じた一貫した支援
「中央区育ちのサポートシステム」とは、育ちに支援が必要な子どもたちが安心して学び成長できるサポート体制のことで、地域の「保健」「福祉」「教育」の専門機関が一体となり、ライフステージに応じた切れ目のない支援で見守る仕組みです。
この制度は、平成26年度の中央区自立支援協議会に設置された「子ども発達支援のあり方検討部会」において具体的な検討を重ね、平成27年に導入されました。

その後の平成30年には、支援をつなぐ教育と福祉の共通のツールである「育ちのサポートカルテ」の運用が開始されました。
また、「中央区育ちのサポートシステム」は、東京特別区では初めてとなる文部科学省の補助事業の交付(切れ目のない支援体制整備事業)を受けています。

 

●「育ちのサポートカルテ」
「育ちのサポートカルテ」は、蓄積してきた支援をつなぐ教育と福祉の共通のツールです。
カルテの名の通り、子どもに関わる多機関が、子どもの課題や適切な支援の方法を共有し、引き継ぐ成長・発達の記録です。本人が18歳になるまで運用し、その後23歳になるまで、子ども発達支援センター ゆりのきが保管します。
これにより、本人のライフステージに応じた切れ目のない一貫した支援体制を作ることができます。

 

●横の連携と縦の連携
中央区育ちのサポートシステムの切れ目のない支援体制は横の連携縦の連携が柱となっています。この二つの柱が、「子どもの発達特性の早期発見」や「二次障害の予防」につながる役目を果たしています。
横の連携とは、地域の多職種が連携して、子どもの成長を支援することです。具体的には、子ども発達支援センター ゆりのきに配置された「保健」「福祉」「教育」の各分野に精通したコーディネーターが、他の機関との調整を行います。
縦の連携とは、育ちのサポートカルテを活用し、時間軸で子どもの成長を支援することです。時間軸で成長をマネジメントすることで、本人の幼児期から小学・中学・高校及び大学等に進学した後も、切れ目のない支援を続けることが可能となります。

 

(育ちのサポートシステム紹介パンフレット①)

 

(育ちのサポートシステム紹介パンフレット②)

 

■課題と今後の展望
●放課後等デイサービスの送迎支援
中央区内には少なかった児童の通所サービスですが、現在では民間事業者も含め13ヶ所(児童発達支援5ヶ所・放課後等デイサービス8ヶ所)になっています。
民間事業者の参入により、サービスの内容も変化しており、事業者が児童の自宅や学校から施設の間を車両で送迎するスタイルが普及しています。

子ども発達支援センターゆりのきでも送迎用のワゴン車を1台導入していますが、ニーズが多いため、全ての児童を送迎することは難しく、曜日と場所(ルート)を決めて何とか1台で運用している状況です。

育ちのサポートカルテの周知・利用促進
子ども発達支援センターゆりのきでは、育ちのサポートカルテの普及啓発のために、地域で暮らす保護者や専門機関へ向けた定期的な説明会を実施しています。
周知活動の効果により地域での理解が進み、昨年度の52名から今年は79名の利用登録に増加しています。今後も説明会をはじめとする周知活動を継続していく予定です。

 

(子ども発達支援センターゆりのき受付事務窓口付近)

 

(子ども発達支援センターゆりのきが入る中央区保健所等複合施設の外観)

 

 

~誰でも笑顔になれる中央区を目指して~

 

(文責:広報公益委員会)