今回は、武蔵野市福祉公社が武蔵野市からの委託を受けて運営している人材育成センターにお話を伺ってきた模様をお伝えします。
武蔵野市では、介護保険サービスが始まる以前から、各サービス事業者の連絡会を発足し、連携体制づくり、数多くの研修会を開催する等、専門職のスキルアップを図ってきました。
これらの歴史的に専門職同士が交流してきた環境を活かし、2018年12月に「武蔵野市地域包括ケア人材育成センター(人材育成センター)」は開設されました。
人材育成センターでは、定型化された事業を無機質に行うのではなく、各取組を通じて、市民や地域の介護職、介護サービス事業者の複合的なプラットフォームとしての役割を担っています。
【ご協力頂いた方】
○武蔵野市地域包括ケア人材育成センター 粂谷 美耶子 様
○公益財団法人武蔵野市福祉公社権利擁護課長・成年後見利用支援センター長 堀田 千寿 様
○武蔵野市健康福祉部地域支援課 課長補佐 深見 操 様
【取材場所】
○武蔵野市地域包括ケア人材育成センター
(東京都武蔵野市吉祥寺北町1-9-1 2F)
【訪問日時】
○2024年7月12日(金)10:00~
■武蔵野市地域包括ケア人材育成センターとは?
武蔵野市地域包括ケア人材育成センターは、地域の福祉人材の養成·育成、相談受付、情報提供、事業所・団体支援等を一体的に行う総合的な人材育成機関として、武蔵野市福祉公社が武蔵野市から受託し、事業運営を行っています。
●センター設立の背景
介護保険制度が始まる以前から、武蔵野市では各サービス事業所の連絡会を発足させるなど、専門職のスキルアップや多職種連携について大きな成果を得てきました。しかしながら、専門職人材の不足は全国的な課題であり、武蔵野市にとっても深刻な状況となっていました。
この様な背景から、2017年8月武蔵野市役所内に「人材確保・育成検討プロジェクト」を立ち上げ、総合的な人材育成の検討が行われました。
その後、武蔵野市第3期健康福祉総合計画(2018年度~2023年度)において人材育成の中核となるセンターとして設置が掲げられ、2018年12月1日に「武蔵野市地域包括ケア人材育成センター」が開設となりました。人材育成センター事業は、市の第4期健康福祉総合計画においても重要な施策として位置付けられています。
●センターが実施する研修・事業
人材養成事業 |
介護職員初任者研修 ほか |
研修・相談事業 |
技術研修 ほか |
事業者・団体支援事業 |
管理者・経営者向け研修会 |
●組織概要
○名称:武蔵野市地域包括ケア人材育成センター
○設置者:武蔵野市(運営受託 公益財団法人武蔵野市福祉公社)
○拠点所在:武蔵野市福祉公社本部内
○開設時期:2018年12月1日
■事業の特徴
人材育成センターでは顔の見える支援を意識した取組みを実施しています。約370ヶ所の登録事業所を対象に「人と組織の両面支援機能」を有するプラットフォームとして、多岐にわたる事業を展開しています。
また、人材育成センターの大きな特徴として「介護人材」を高齢福祉分野に限定せずに障害福祉分野も含めて捉えている点があります。
対象事業者の中には介護保険サービス事業者のほか、障害福祉サービスである就労継続支援事業所や障害者支援施設も含まれています。
●人材確保の先の「定着支援」
人材育成センターでは、介護分野の未経験者や潜在的有資格者の人材確保のみならず、「定着支援」も重要だとしています。介護職の悩み相談、事業所・団体支援等もおこない、現場の声を聞きながら事業に取り組んでいます。
●若者たちの葉「プロジェクト若ば」
定着支援の一つとして、人材育成センターでは、これからの介護業界を支える担い手の支援である若手介護職交流会「プロジェクト若ば」を実施しています。
「プロジェクト若ば」は39歳までを対象とし、オンラインを基本としてメンバーが学び合い、主体的に活動することを目的としたプロジェクトとしてスタートしました。
同じ地域、同じ業界で働く同世代が、職場の人とは違った距離感のもと集うことで、「程よい帰属意識」を醸成しています。
●受講者と登録事業者双方にメリットのある支援金制度
人材育成センター事業以外にも、武蔵野市は介護人材の支援策として「武蔵野市介護職・看護職Reスタート支援金」制度を実施しています。
この制度は、介護職員及び看護職員等の再就職や介護施設等への新たな就職に対して支援することで、高齢者や障害者を支える人材のさらなる確保を目的としてします。
例えば、人材育成センターが行う介護職員初任者研修を修了した場合、登録事業所へ一定時間勤務することで得られる独自のキャッシュバックに加え、市のReスタート支援金の対象であればさらに手厚い金銭的支援を受けられるメリットがあります。
また、研修を修了した介護職員を迎えいれる事業所にとっても、人材確保や定着につながるため、大きなメリットとなります。
●コロナ禍によって実現できたDX
コロナ禍当初、人材育成センターでは従来の集合形式の研修が行えず事業運営が困難な状況でしたが、職員の方が自らオンラインを活用した研修を開始するなど、デジタル化の技術研鑽の機会となりました。
研修内容に合わせてライブ配信、オンデマンド配信を使い分けて実施し、夜勤などにより都合がつかない介護職に配慮した研修環境を提供することができました。
■課題と今後の展望
●介護職の高齢化と若者世代の育成
全業種的に在職者の高齢化は課題となっていますが、介護業界では特に高齢化が顕著であり、若い世代、その他幅広い担い手獲得が求められる状況です。しかし同時に、シニア世代が長く活躍し続けられる環境を作ることもまた課題であり、幅広い世代に対しての支援策が求められます。人材育成センターでは「プロジェクト若ば」を実施していますが、地域で働いている福祉職の方たちからは、年代を越えた取組みの要望もあり、年齢・職種不問の交流会も試みながら、日々新たな事業を模索しています。
●業界の垣根を越えて介護職をPRしていきたい
これまで人材育成センターが実施してきた養成研修や就労相談では、IT業界やメディア業界など、介護業界以外からやってくる方も見られました。今後、介護職に興味のある異業種の方にとっても、チャレンジしやすい風土をつくることも不可欠となります。
また、サービス種別によっては常勤フルタイムだけではなく、副業や短時間勤務など、多様な働き方も考えられる業界であることから、幅広い活躍の場があることを伝えつつ、より視野の広い取組みを目指していきたいと考えています。
(文責:広報公益委員会)