平成28年1月28日(木)、これまで行ってきた東日本大震災の被災地取材事業も区切りの5年目となりました。
そこで今回は、昨年に引続き公益社団法人全日本不動産協会宮城県本部(所在/宮城県仙台市青葉区上杉1-4-1)及び、新たに石巻観光ボランティア協会(所在/宮城県石巻市鋳銭場8-11)を訪れお話を伺ってきました。今回の取材にあたり次の方々にご協力頂きました出席頂きました。
【公益社団法人全日本不動産協会宮城県本部】
・本部長   小林 妙子 様
・理事    齋藤 晋 様
・事務局局長 菅原 四郎 様
【石巻観光ボランティア協会】
・会長    齋藤 敏子 様

宮城県が纏めた震災復興計画によると、復興までのマイルストーンは次のように示されています。(平成23年から平成32年までの10年間)
① 復興期・・・平成23年~平成25年
② 再生期・・・平成26年~平成29年
③ 発展期・・・平成30年~平成32年
今年は、この再生期にあたり、「産業経済の安定的成長」「安心して暮らせる宮城」などが基本方針に盛り込まれております。
今回の取材で、これら計画が実際にはどの様に進んでいるのか等についてお話を聞かせて頂きました。

宮城県本部が取組んでいる復興支援

宮城県本部では、宮城県・仙台市など各自治体や商工会議所・他住宅関連団体等との連携を図りながらこれまで地域の復興支援を行ってきました。
具体的な支援としては、自治体との連絡協議会を定期的に持ち、応急仮設住宅(民間賃貸住宅借上)情報の提供・無料不動産相談会の開催・もちつき大会などの地域イベントへの参加など多様な形を展開しております。
また、これら東日本大震災の復興支援に加え、昨年9月に発生した「関東・東北豪雨」の被災者支援の一環として、宮城県へ義援金の拠出も行いました。

(小)宮城県から感謝状贈呈の場面・小林本部長

(関東・東北豪雨への義援金拠出への感謝状贈呈式にて)

■ 復興は“道半ば”

震災発生直後、宮城県本部では会員の安否確認を真っ先におこなったそうです。通信手段が壊滅している状況下でしたので作業は長きに渡りましたが、事務所や自宅の倒壊などはあるものの奇跡的に会員の中には死者・行方不明者がいなかったことが確認できました(全員の生存確認)。また、震災を直接的な原因とした廃業などもありませんでした。
これからも、宮城県本部では隣接する宮城県(庁)と、不動産・住宅関連の部会参加などの連携を継続しながら、復興支援に取組んでいく方針です。

宮城県内における災害公営住宅の整備状況は計画戸数:15,918戸に対し、事業着手(工事完了済)戸数が7,946戸となっており、整備率は49.9%に留まっています。但し、工事着手戸数は14,283戸に達しております。
また、応急仮設住宅の整備状況は、プレハブ住宅が22,095戸・民間賃貸住宅借上分が9,281戸(契約済)となっており順調に整備計画が進んでいると言えます。【平成27年12月31日現在/災害公営住宅の整備状況について(宮城県復興住宅整備室)資料】

一方、これら応急仮設住宅入居期間は当初2年間と定めておりましたが、入居者の自宅再建が進まない状況その他の理由から、石巻市を始め7市町(石巻市,塩竈市,気仙沼市,名取市,東松島市,女川町及び南三陸町)では、入居期間を6年に延長しています。さらに、状況の改善が進まない可能性も考慮して、7年目の延長を国等と協議していく事が公表されています。
この様に、被災者支援は、「住宅の整備から生活の支援」にニーズが変化していることが覗えます。現状では、まだまだ安心できる状況ではないため、小林本部長は「復興へは道半ばである」と語っていました。

■ 宮城県における東日本大震災関連被害の状況等(抜粋)

(1)人的被害(継続調査中)
●死者(関連死を含む。)10,549人  ●行方不明者 1,239人  ●重 傷 502人 軽 傷 3,615人
(2)住家・非住家被害(継続調査中)
●全 壊 82,999棟  ●半 壊 155,129棟 ●一部損壊 224,195棟 ●床下浸水 7,796棟 ●非住家被害 26,796棟
(3)被害額(継続調査中)
●9兆2,280億円
【〔平成27年12月31日現在,(3)被害額の概要は平成27年12月10日現在〕/宮城県災害復興政策課「復興の進捗状況(平成28年1月11日)」資料】
【リンク:宮城県ウェブサイト「復興の状況」】

■ 応急仮設住宅(民間賃貸住宅)の基本的な仕組み

災害救助法に基づいて民間賃貸住宅を宮城県が借上げする事業です。平成23年末に県内の避難所が全て解消したことにより、現在民間賃貸住宅借上げの申請受付は終了しています。
○入居対象者について
災害により住家が全壊,全焼又は流出するなど居住する住家がない方で、自らの資力により住宅を確保することができないなど、長期間にわたり住家に戻ることが難しいと見込まれる方などです。
○賃貸借契約について
当初契約による供与期間は2年間,再契約による供与期間は1年間です。賃貸借契約は、貸主・県(借主)・被災者(入居者)の3者により締結し、県は借り上げた物件を被災者に応急仮設住宅として供与しています。
○借上げの対象となる物件について
貸主の方々が所有又は管理している民間賃貸住宅(アパート・貸家等)で、県を借主とする三者契約に同意しているものが対象となります。
【リンク:宮城県ウェブサイト「応急仮設住宅(民間賃貸借上住宅分)市町村別入居状況(平成27年12月31日現在)」】

■ 宮城県本部の現在・そして今後

宮城県本部の特徴の一つは女性部会の活動です。女性部会は、平成10年12月19日に発足した「カトレアの会」が基となっており、現在まで17年間の活動実績があります。
女性部会では、ホワイトリボン活動支援(途上国の妊産婦の健康と生命を守る国際協力運動)をはじめ、女性ならではの視点に立った問題を取り上げた研修会や、気軽に参加できるプチカルチャー教室などを開催しています。
平成25年11月に「全日東北地区女性部会交流会」を開催し、平成26年4月には東北地区で初めて開催された「ウーマンフェスタ」にもブースを出展するなど、活動範囲は更に広がっています。
さらに宮城県本部では、青年部会の活動も活発です。青年部会は女性部会よりも歴史が深く、平成5年7月19日に発足しており、現在まで22年以上の活動実績があります。
青年部会では女性部会と同様に、オレンジリボン活動支援(児童虐待防止の市民運動)を行っています。

今後の活動で最も重要なイベントが、今年の10月20日(木)に行われる全国大会(第52回全国不動産会議宮城県大会)の開催運営です。
現在、詳細は大会実行委員会で協議を重ね内容を作り込んでいる段階です。プログラムでは、東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授の基調講演や、震災復興の活動を行っている方を招き、これまでの足跡・現状を紹介するコーナー、及び大会前日には全国女性部会会議なども計画されています。

(小)全国大会案内

(第52回全国不動産会議宮城県大会の案内カード)

■ 石巻観光ボランティア協会に聞く復興の現状

石巻市は、震災の被害が最も大きかった地区の一つであり、復興への道筋は仙台市内とは状況も異なっています。石巻観光ボランティア協会では、被災地域を巡り復興への取り組みの過程を解説するツアー(約1時間30分~2時間)を行っています。
ツアーは、震災の象徴ともなっている旧門脇町学校跡地の見学が中心となっており、市内が一望できる日和山公園や最新鋭の設備を投入されこの度完成した石巻魚市場などを巡ります。希望がある場合には、多くの児童を中心に84名もの尊い命が犠牲となった旧大川小学校跡地を視察することもあります。
旧角の脇小学校跡地は、宅地造成工事中で、2mの盛土を施した上で敷地の半分を住宅地にする予定です。残りの敷地については、国と協議の上3年後に公園として整備される予定です。
新設された防潮堤は地盤面より4mの高さですが、震災時の津波は実際には7mに達していたそうです。その他避難施設としての「津波タワー」「津波ビル」が複数個所整備を終えています。
齋藤会長はこのツアーを通じ『この様な事実があったことを知って頂きたい。そして、減災への意識を学んで欲しい。』と語ってくれました。

石巻市は、平成16年に1市16町が合併により規模を拡大し、震災発生以前は16万人を超える人口を抱えていました。現在人口は148,798人(平成27年12月末現在)に減っていますが、この数値には行方不明の方や登録上の住所から離れて避難生活をしている方等が相当数含まれているものと予想されるので、実際には更に人口の減少が大きいと考えられます。

●被災状況(人的被害) 平成27年12月末現在/単位:人

被災された死者数及び行方不明者数
地区 直接死 関連死 行方不明者
本庁 2,207 208 206
河北 402 14 42
雄勝 155 17 71
河南 12 10 5
桃生 6 2 1
北上 194 7 67
牡鹿 76 12 31
小計 3,052 270 423
その他 212 0 5
身元不明 13 0 0
合計 3,277 270 428

【石巻市ウェブサイト総務部 危機対策課 資料】

(小)石巻パンフレット_01

(石巻市観光ガイドブック①)

(小)石巻パンフレット_02

(石巻市観光ガイドブック②)

(小)石巻パンフレット_03

(石巻市観光ガイドブック③)

(小)IMG_1744

(護岸工事中の海岸線)

(小)IMG_1741

(被災により建替えられ今年夏石巻駅前に開設される石巻市民病院)

(文責:広報委員会)