今回は、これまでもお世話になっている武蔵野市立高齢者総合センターのご紹介で、高齢者の方々を中心とした地域交流サロンの立ち上げ活動の現場に伺って参りました。独居高齢者の孤独死が、社会問題になっておりますが、それ以前に地域の高齢者の方々を中心に多世代にわたる住民同士の意義のある自然な交流を持つことは、大切だと考えられております。

武蔵野市内では、これまでも小さな地域を単位とした、地域福祉・地域交流活動を行って来ております。介護保険制度の改正により、介護事業者だけでなく、地域住民同士による「互助」のシステムが益々注目されるようになってきております。

(都営アパートの集会室で行われた交流会の模様)

(都営アパートの集会室で行われた交流会の模様)

 

【ご協力頂いた方】
○公益財団法人武蔵野市福祉公社・武蔵野市立高齢者総合センター所長 服部 哲治 様
○公益財団法人武蔵野市福祉公社・武蔵野市立高齢者総合センター主任 柳野 聡 様
【取材場所】
○西久保3丁目地域交流会(都営西久保3丁目アパート集会室/武蔵野市西久保3-10-21)
【訪問日時】
○平成29年1月27日(金)10:00~

■いきいきサロン事業について

いきいきサロン事業とは、地域住民団体やNPO法人・民間事業者等が概ね65歳以上の高齢者を対象に、5名以上・週1回以上集まる場で、介護予防・認知症予防のプログラムを含む活動(2時間程度)及び、自治体がその団体等へ補助・支援を行う事業のことをとなります。
自治体が補助や活動支援を行う事で、高齢者の社会的孤立感の解消・心身の健康維持・要介護状態の予防・住み慣れた地域での在宅生活の継続支援を図ることを目的しています。

■武蔵野市立福祉高齢者総合センターによるサロン(支援)事業

武蔵野市では、サロンを運営する登録団体を公募し、審査を経て基準をクリアーした団体に運営費等の補助を行っております。また市では、運営に関するアドバイスを行い、担当エリアの在宅介護・地域包括支援センターが月1回程度、定期的に訪問するなどの運営支援も行っています。武蔵野市立高齢者総合センターは、今回訪問した西久保3丁目エリア他を管轄するアドバイザーの役割を担っています。

市内のサロンは、現在11ヶ所(いきいきサロン事業)あり、団地集会室や個人宅・営業時間外の店舗等で行われています。活動内容は、毎回体操等の身体を動かす運動や脳トレーニング(音読・計算・ゲーム等)・歌・囲碁将棋等、各いきいきサロンの工夫による多様な活動が行われています。今年4月からは、新たに6ヶ所のサロンがオープンする予定となっています。※自治体の管轄:高齢者支援課 管理係

(市内のいきいきサロン・マップ①)

(市内のいきいきサロン・マップ①)

(市内のいきいきサロン・マップ②)

(市内のいきいきサロン・マップ②)

【市内の登録サロン一覧】

番号  サロン名称  住所 内容 
1 オリーブサロン 吉祥寺南町3-45-10

都営住宅集会所

健康体操、ゴムとボールを使った体操等
2 吉祥寺ささえあいビレッジ 吉祥寺東町1-11-20

鴨下ビル3階

健康体操、声楽等
3 まきばサロン 西久保3-12-8 健康体操、トランプ等
4 御殿山サロン 御殿山2-10-9

介護付有料老人ホーム武蔵野御殿山(地域交流スペース)

健康体操、コーラス、講演、マージャン等
5 すこやかサロン

12月3日(土曜日)より開始

吉祥寺本町2-2-2 ルルビル3階 健康体操、音読、計算ドリル、数字盤等
6 ルンルンサロン 境4-3-13 サンパレス1階 健康体操、囲碁、コーラス等
7 よりあい食堂 かよう 桜堤1-3-サンヴァリエ桜堤中央集会所 健康体操、歌唱指導等
8 五丁目クラブ 境5-28-4 境五丁目アパート集会所 健康体操、カラオケ等
9 公園口サロン 吉祥寺南町1-17-7 健康体操、卓球等
10 ひつじ 西久保3-11-14 2階 健康体操、コーラス、楽器等
11 日高サロン 境南町3-1-11 健康体操、音楽療法、囲碁、脳トレ、民謡、カラオケ等

【リンク】武蔵野市健康福祉部いきいきサロン紹介ページ

■西久保3丁目地域交流会の状況

西久保3丁目地域交流会は、暫定的な名称であり、市への正式登録後には新しい名称(サロン)に代わる予定です。今回お伺いした当日は、昨年の11月に組織が発足して3回目という事で、とてもスムーズな進行をされていた印象です。
サロン事業を市へ正式に登録・運営補助の支給を受けるためには、下記の様な要件をクリアーする必要があります。
・介護予防や認知症予防に資する取り組みを実施(体操は必須)
・原則週1回以上・2時間以上の実施で、年間概ね40回以上実施
・定期的に活動できる実施場所を確保(*市立施設は対象外)
・概ね65歳以上の利用者が5名以上
・利用は登録制。無断欠席時は安否確認
・利用者の個人情報の管理体制を整備
・運営に必要な最低限の実費の確保
・活動中の事故に備え、保険に加入
・団体での組織運営(個人不可/役員3名以上)その他

このため、いきなりのスタートでは心配だったため、会長の山中さんが、旧知の服部所長に相談の下組織と活動を準備していったそうです。
山中会長に伺うと、サロンの運営指針には①自然な参加者同士の交流②安否確認(欠席の場合等)の大きな柱があり、サロンへの参加自体が参加者のセーフティーネットの機能となっております。

【都営西久保3丁目アパートの概要】※平成25年3月31日現在のデータ
○管理者:東京都
○棟数:5棟(5階建て)
○戸数:196戸(2DK・3DKなど/専有面積33~36㎡)
○建設年度:1968年~1969年

【当日のプログラム】
●健康体操
交流会の冒頭は、団地内居住の宮本先生の指導による健康体操を行いました。基本的な内容ながらも、全身を満遍なく動かす本格的なメニューとなっており、かなり運動になりました。先に体を動かすことによって、体と心を共にほぐす効果があり、次の自己紹介をスムーズに行う効果もありました。
●折り紙
続いては、折り鶴の作成を中心とした折り紙の作成のプログラムでしたが、当日は手に覚えのある女性の参加者が多く、一番の盛り上がりを見せていました。また、当日参加者の中で最も先輩である97歳の方が指南役で他の参加者にアドバイスを行っており、盛り上がりの一役に貢献していました。
●その他(カラオケなど)
当日は、カラオケタイムも設けておりましたが、前の折り紙の盛り上がりが大きく、こちらは持ち越しとなりました。この点に関しても山中会長は、「当日の流れで予定外の進行や、時には進行が躓く事もあるが、それも自然の流れと受け止めて運営している。」との考えを教えて頂きました。

■現在抱える課題と今後の展望

●活動拠点のスペースの問題
現在は都営住アパート内の集会室を活動拠点としておりますが、今後市への正式登録を経て活動を増やしていくと、参加者の増加が見込まれます。訪問した日も沢山の参加者が来られており、スペースに余裕がなかった状況でした。山中会長も、今後の活動場所の確保や限られたスペースでのプログラムを考えるなど、工夫が必要と考えていました。
●若い世代へのバトンタッチ
山中会長のお話では、立上げ作業がひと段落したら、次の世代の方に会の運営を渡してきたいとの考えを持っていました。活動継続と引き継ぎは、他のサロンでも共通のテーマとなっております。
●登録後の地域への周知活動
市への4月の登録後には、会の活動をどんどんPRしていくそうです。現在は、口コミや周辺へのプスティング等で新規参加者を募っていますが、これからは集会室をオープンにし、ガラス窓等に手製の看板やチラシを掲示し、近隣の方へ活動を周知させていく予定との事です。

(正式登録後のサロン名称の公募案を掲示したボード)

(正式登録後のサロン名称の公募案を掲示したボード)

(前回までにサロンの運営コンセプトを出し合った際のボード)

(前回までにサロンの運営コンセプトを出し合った際のボード)

(当日盛り上がりを見せた折り紙のプログラム)

(当日盛り上がりを見せた折り紙のプログラム)

 

■今回の交流会参加を通じて学んだこと

当日は、来期のサロン活動団体登録期限を1月末に控えたお忙しい日程でしたが、皆さんには快くご対応頂きました。
今回の訪問を通じ、リタイヤメント世代になっても、主体的に地域と交流することがとても大切であると感じさせられました。知識としてはわかっていても、実際の現場を拝見すると、先輩方がご苦労されている姿を通じ、勇気を与えて頂けました。
また、地域には自治体やボランティア等の生活者に対する支援の形も、着実に広がっている事も実感できました。今後も、深刻化する少子高齢社会ではありますが、時代に即した支援のアイディアが育っていく事を願うところです。

 

文責:中央支部広報委員会