今回は、5月18日(水)社会福祉法人大田幸陽会が運営する就労支援の事業所(さわやかワークセンター)を訪れ、事業の内容や昨今の話題などを伺ってきた模様をお伝え致します。
就労支援の事業所を訪問するのは、2013年11月のさわやかワーク中央(中央区社会福祉協議会の運営)に続き2度目になります。その時と比べ、月日の経過や地域特性による違いなどとても興味深いお話を伺えたと感じています。

【ご協力頂いた方】
○社会福祉法人大田幸陽会さわやかワークセンター 支援係長 小幡 寛  様
○    同   所              支援員  山口 貴弘 様

社会福祉法人大田幸陽会とさわやかワークセンターについて
○社会福祉法人大田幸陽会について
【法人概要】
・本部所在 東京都大田区大森南二丁目15番1号
・設  立:1993(平成5)年3月25日
・従業員数:231名(2016(平成28)年4月1日現在)
・事業内容:大田区における障害福祉分野サービス提供

お話を伺った社会福祉法人大田幸陽会は、「障害のある子らの幸せ」と「親なきあとの安心」を願う大田区知的障害者育成会【1956(昭和31)年結成された「親の会」】の40年近い活動実績と大田区の支援のもとに設立されました。
最初は障害者のはたらく場1か所と生活の場であるグループホーム2か所の運営から小さくスタートしました。法人設立した年の秋に、平成不況で企業を解雇され、働く場を失い在宅となる障害者が急増しました。

民間法人として緊急事態に柔軟かつスピーディーに対応し、大田区と協議を重ね「善は急げ」で一致、約半年の準備を経て、翌平成6年には本事業の元となる「離職障害者就労対策事業さわやかワークセンター」を開設いたしました。
同法人は、現在では大田区役所1階に就労支援の場「カフェ・コスモ」を運営するなど、通所の働く場等7箇所、グループホーム6ユニット、通過型の区立生活訓練入所施設の他、サービス付き高齢者向け住宅や居宅介護・訪問介護事業所等の運営を行う、大田区内における障害者福祉事業のパイオニアとして存在しています。

○さわやかワークセンターについて(多機能型就労支援事業所)
【事業所概要】
・事業所所在 大田区西蒲田三丁目19番1号ふれあいはすぬま1F(旧大田区立蓮沼小学校)
・開設時期 1994(平成6年)年4月
・事業内容 障害者総合支援法に基づく就労移行支援・就労継続支援B型

同センターは、障害者総合支援法に基づく就労移行支援及び就労継続支援B型に定める事業所です。
障害者サービス受給者証の交付を受け、契約の成立した方で、自力通所可能かつ公園清掃等の作業に従事できる方がサービス利用の対象となっており、就労継続支援B型の事業所定員は現在34名となっているそうです。

就労移行支援事業は定員6名です。原則2年の在籍期間で、各種訓練プログラム・実習を通じ一般就労等を目指します。就労継続支援B型事業では、主に下記の作業を通じて地域の協力企業等から依頼を受けた専門作業に従事する事によって、工賃と同時に社会参加の立場を得る活動を行います。

現在の場所(旧:大田区立蓮沼小学校)での事業形態は1994(平成6)年4月に始めた「離職障害者就労対策事業さわやかワークセンター」事業が前身となっております。2005年の蓮沼小学校の廃校と同所の大田区による再活用計画の実施に伴い、現在の場所に移転しました。

○さわやかワークセンターでの主な活動内容
≪公園清掃≫
区内14箇所の公園の清掃
大田区内の14ヶ所の公園を清掃しています。公園を利用する方々に気持ちよく使っていただくために、夏の暑い日も、雨の日も毎日清掃します。
≪区内施設の清掃≫
会館内の日常清掃、特別支援学校の定期清掃都
都営住宅の清掃や企業のトイレ清掃などを任されています。
≪室内作業≫
各種電気部品の組立て、包装資材の作成、封入作業等
いろいろな部品を加工したり、組み立てたりします。

【リンク】社会福祉法人大田幸陽会ホームページ

【さわやかワークセンターパンフレット】

②大田幸陽会さわやかワークセンター_01②大田幸陽会さわやかワークセンター_02②大田幸陽会さわやかワークセンター_03②大田幸陽会さわやかワークセンター_04

廃校になった区立小学校を再活用した施設での運営
先に述べました通り、さわやかワークセンターは、移転により現在では、旧大田区立蓮沼小学校の校舎の一部を事業所として運営しています。
長年地域での福祉サービス事業の実績が評価され、今回の機会を得た模様ですが、同センターの他こちらの旧校舎跡地には、大田区シルバー人材センターの分室や学童保育の事業所(フレンドリー蓮沼)等も同居しています。

その他の体育館・校庭・教室は「ふれあいはすぬま」(大田区立の地域活動スペース)として、地域活動を行う団体などが拠点活動を行っており、公的ストック再生の成功事例となっております。また、こちらの施設は災害発生時の地域指定避難所にも指定されている地域支援の多機能拠点となっています。
さわやかワークセンターにおいても、利用者が昼食をとるスペースを、昼食時以外は地域活動スペースとして無償提供しています。

○コミュニティスペース「お休み処 茶和や」の概要
・営業時間 月~金(除く祝日)午後1時30分~午後5時
・場所 さわやかワークセンター多目的室(ふれあいはすぬま1F)
・利用料 無料
・対象 どなたでも(地域活動のミーティングルーム/地域福祉に資するセミナーの利用等)※10名以上の場合は相談の上貸し切り可

さわやかワークセンターの運営・特徴など
○一般就労も増えている
さわやかワークセンターは、就労支援の事業を運営しておりますが、そこには地域の事業所(一般法人など)の理解と協力が不可欠です。
大田区には、大型の倉庫など物流バックヤード系の事業を営む事業所が数多く点在し、さわやかワークウセンターでは、それらの現場への就労が多くなっています。大田市場(青果他の公設卸売市場)でのバックヤード業務も行っているそうです。

以前は、職員の方々が就労先を探しに地域を回ったこともあったそうですが、現在では、障害者雇用促進法の周知などが進んだ成果もあり、法人の法定雇用率達成対策の一環として、(ハローワーク経由など)一般の法人・事業所からの問い合わせによって、利用者の一般就労を得る機会も増えているそうです。

○民泊事業者との連携
大田区では特区民泊(国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業)を推進しているため民泊もさかんであり、現在区が認定している民泊施設は14拠点に上っております。
さわやかワークセンターでは、民泊事業者からの依頼を受け、施設復旧業務(室内清掃等)を行っています。

○就労支援は生活支援
就労支援の業務の一環として、就労定着支援(就職後のアフターフォロー等)を行いますが、さわやかワークセンターでは、法定の2年の期間でフォローを終了していません。先日は、約10年前に就労された家族の方から、その後の就労や生活の相談を受け対応されたそうです。

その他、一般就労には、生活面での整えが不可欠であり、利用者本人が家族の元を離れて地域で一人暮らしをする支援を行ったエピソードがあったそうです。就労支援という制度に則ったサービスを行っていれば、事業者の役割が完了する訳ではなく、時には住居を探すことを手伝うなども含めた生活支援も必要になるとのことでした。
****************************************
この様にさわやかワークセンターでは、障害者の生活に関する様々な相談支援や活動を行っています。
今回の取材を通じてさわやかワークセンターは「空家の再利用(旧校舎の事業所利用・民泊施設・利用者住居利用など)」を通じた不動産ニーズと福祉ニーズのマッチングが叶った非常に興味深い事例ではないかと感じました。


小③IMG_1837

【事業所のある「ふれあいはすぬま(旧大田区立蓮沼小学校)」】

小③IMG_1833

【地域コミュニティスペース「お休み処 茶和や)」】

(文責:広報委員会)