今回は、昨年度末(今年3月)に取材させて頂いたMKエフシーの練習会に再び伺って参りました。MKエフシーの活動を通じ「地域での居場所づくり」の一つの形を学んでいきたいと考えております。
前回の訪問から半年近く経過して、「何か変化はあったのか?」或いは「特に変化はなかったのか?」を確認させて頂くことも大切な学びの要素です。

【ご協力頂いた方】
○MKエフシー 代表 降屋 守 様
【取材場所】
○船橋市立運動公園体育館Aコート(千葉県船橋市夏見台6丁目4-1)
【訪問日時】
○平成28年8月15日(月)19:00~

■ MKエフシーとは?
MKエフシーは、メンタル的な部分の悩みを抱えた方・または関心を持っている人を中心に結成されたフットサル・サークルです。
代表の降屋様は、今年1月に取材でお伺いさせて頂いた「NPO法人セカンドスペース(若者の社会復帰・就労支援の事業を運営)」に職員として所属しており、MKエフシーはNPO法人での活動のかたわら、降屋さんが個人で主催されています。

活動においては、「まったり蹴ったり出合ったり」をキャッチフレーズとした自然体でのソーシャルインクルージョンをモットーにしており、フットサルの様なスポーツ交流を通じて、精神障がい者や精神疾患を抱えている方、不登校・ひきこもり・ニート等の当事者や元当事者の居場所と出会いづくりの活動を行っております。
【リンク】MKエフシーブログ

■ 活動の結果何か変化はあったのか?
今回伺った際に最初に感じたのは参加人数が増えた事です。それぞれの方の参加頻度には違いはありますが、現在は80名近くの方がサークルに登録されているそうです。
前回訪問時は、2チーム編成で練習試合を行っていましたが、今回は3チームが編成できる状況でした。

●参加メンバーにおける変化
個々人においても変化はあったそうです。
降屋さんのお話では、ちょうど前回訪問時に初参加(見学)だった不登校の中学生がその後継続参加しており、当初は体調が不安定という事や最年少という事もあり遠慮しがちだったのですが、ここ最近はプレイ中もチームメイトに積極的に声掛けする場面や果敢に得点を狙う場面も増えてきて、サークルに欠かせない存在になっているそうです。

●引きこもりの生活から一般企業への就職
また、当日参加されていた他の方にもお話を伺うことができました。
その彼は先月、一般企業に就職が決まったそうで、現在はフルタイム勤務で頑張っているそうです。元々彼は、中学生の時から長年自宅に引きこもっている生活が続いていました。様々な社会復帰のプログラムにチャレンジされたそうですが、縁がありサポートステーション(サポステ)に通う機会を得て、本人の努力と周りの方々のサポートの結果今回就職につながったそうです。
サポステとは、自治体がNPOなどの組織に運営を委託する若者の社会復帰・就労支援の窓口で、時代や専門性に配慮した様々なプログラムを提供しています。
就労支援プログラムにおいては、官民一体の連携が図れており、今回彼もサポステが主催した企業の合同説明会で参加していた企業に就職したそうです。
彼は、サポステでの活動を通じMKエフシーの居場所づくりの存在を知り、練習に参加するようになりましたが、就職した現在でも時間を調整して練習の参加は続けています。彼は最後に「ターニングポイントは地域の居場所プログラムに参加したことですかね?」

■ MKエフシーの新しい動き
●フットサルオープンリーグ交流会2016の開催
この大会は、MKエフシーが共催者として活動しています。主催は、千葉『共に暮らす』フットボール協会(トモフト)で、フットサルを通じた地域共生の活動を長年行っている、精神科医の佐々毅医師が理事長を務める組織です。
この大会は、7月17日(日)に開催され、千葉県内を中心とした沢山のフットサルチームが参加しました。大会の目的は、精神障害の有無に関わらないコミュニケーションと自然な交流です。千葉県や千葉市も後援しており、地元高校のサッカー部も参加者として参加しました。通常の精神保健福祉分野でのフットサル大会だと、学生などはボランティア参加の形が多いのですが、プレイヤーとして一緒に参加してフットサルを楽しむという姿勢こそが、この交流会の特徴をよく表していると思います。
また、この大会では、交流促進のために試合を行う以外に様々なプログラムが実施されます。
① 当日限りのミックスチームを編成
② チーム内で自己紹介
③ チーム内でチーム名と目標を設定
④ 最後に目標達成度をチェック など
この様に競技形式を通じ、参加者に「目的と意義のある交流」を動機づける狙いがあります。
【リンク】千葉『共に暮らす』フットボール協会(http://tomofuto.org/)   

トモフト 小

(トモフトのロゴマーク)

小③

(フットサルオープンリーグ交流会2016のプレスリリース資料)

【小】★完成★op2016配布リーフレット01

(フットサルオープンリーグ交流会2016の大会案内①)

【小】★完成★op2016配布リーフレット02

(フットサルオープンリーグ交流会2016の大会案内②)

●ダイバーシティカップへの参加
さらにトモフトが一団体として、今年参加したフットサルイベントに「第2回ダイバーシティカップ」があります。
この大会は、ホームレス支援で有名なNPO法人ビッグイシュー基金等が主催しているイベントです。
ダイバーシティとは「多様性」を意味し、そこから「多様性を享受した社会を作り上げていくこと」がダイバーシティカップの運営理念となっています。

【ダイバーシティカップ概要】…ビッグイシュー基金ホームページより
○開催日時:2016年7月30日(土)10時~14時(豊洲MIFAフットサルコート)
○参加者数:15チーム(200名ほど)
ホームレス、うつ病、養護施設出身の若者、被災地の若者、依存症などの当事者、等
○主催:スポーツフォーソーシャルインクルージョン実行委員会/認定NPO法人ビッグイシュー基金

降屋さんによると、これら様々なメンタル系フットサルのイベント参加を通じ目指していることには、勝利の結果やアスリートとしての技術を向上させることではなく、一般社会に通じる「過度に保護されることの無いあたりまえな環境」とそこで体験する「だれかれ分け隔ての無いごく自然な交流」の機会を得ることにあると語っておりました。

■ 現在の課題
この様に、MKエフシーの活動規模と参加者は少しずつ大きくなっている状況ですが、前回伺った際に教えて頂いた通り、メンバーが就職すると仕事中心の生活になり、中々今までの様な頻度では練習会等に参加できなくなってしまう事は、変わらない状況だという事でした。
しかしながら、相手との連絡方法を工夫するなどして、ホットラインは切らさないようにしてコミュニケーションは図り続けているそうです。
また、本当は皆が参加しやすい週末(土日祝日)を中心に練習会を行いたいところですが、体育館の予約が中々取れず、どうしても平日の夜開催が多くなってしまうことが難点だそうです。

先ほどの通り、MKエフシーの活動は少しずつ広がりを見せている状況ですが、取材当日もメンバーの紹介で二度目の参加となる『障がい者と健常者が一緒につくる・みる・あつまる舞台づくりを目的とした演劇・パフォーマンス集団『劇団 人の森ケチャップ』の団員の方がプレーされていました。
自然な人の輪の広がりが、チームの発展に繋がっている事を実感させられました。
今後のさらなる発展を願いつつ、次回の訪問を楽しみしておきたいと思っております。

小①

(会場の市立体育館内/当日は3チームで試合形式が行われました)

小②

(会場の市立体育館内②)

 

(文責:広報委員会)