今回は、地元中央区に本部を構え、東京や仙台などで学習支援を中心とした子ども支援活動を展開している、NPO法人キッズドアの本部に赴き活動内容についてお話を伺ってきた模様をお伝えします。同法人は、私共の東京都本部とも社会貢献事業で協定を結んでおり、日頃から協働頂いております。

日本国内では、社会生活形態の変化と共に子どもの貧困問題が深刻になってきています。NPOキッズドアでは文字通り「子どもの貧困をなくしたい!」を活動理念に、事業展開を行っております。

●本部内にある教室:「キッズドア・ラーニングラボ TOKYO」

●本部内にある教室:「キッズドア・ラーニングラボ TOKYO」

☆こちらは、週に3回学習会の教室となるラーニング・ラボです。訪問時は平日の昼間だったので、スタッフの皆さんが仕事中でした。オフィスが狭いので平日の昼間はこのようにスタッフの方の仕事場になっていますが、学習会のある時は生徒の皆さんの活気で賑わっているそうです!

 

【ご協力頂いた方】
○特定非営利活動法人キッズドア 広報担当者
【取材場所】
○NPO法人キッズドア本部(東京都中央区新川2-1-11八重洲第一パークビル7階)
TEL:03-5244-9990 FAX:03-5244-9991
【訪問日時】
○平成29年4月11日(火)AM10:30~

■キッズドアの法人概要

〇名称:特定非営利活動法人キッズドア(NPO Kids’ Door)
〇設立:2007年1月
〇理事長:渡辺 由美子 氏
〇所在地:
【キッズドア・ラーニングラボ TOKYO】
東京都中央区新川2-1-11 八重洲第1パークビル7階
【東北事務所】
宮城県仙台市宮城野区榴岡4-1-8 パルシティ仙台1階C
≪リンク≫NPO法人キッズドア 法人ホームページ

■事業内容

キッズドアは、経済的に苦しい家庭・ひとり親家庭・その他児童養護施設や被災地で暮らす子どもたちなどを対象にボランティアによる学習支援を行っています。さまざまな困難な状態にあっても、将来に希望を持って活躍できる様、企業・行政などと連携しながら、広く活動しています。
事業費には、事業理念に賛同・理解した個人・法人から広く寄付を募り充当しています。その他自治体からの委託事業もあります。
また、個別のプログラムによっては、クラウド・ファンディングの方法を採用しているものもあります。

●事業活動「学習支援」の様子①

●事業活動「学習支援」の様子①

 

●事業活動「学習支援」の様子②

●事業活動「学習支援」の様子②

 

■日本における子供の貧困問題

内閣府が公表している、「子供・若者白書(平成27年度全体版)」によると、子供の相対的貧困率は上昇傾向であり、大人1人で子供を養育している家庭の相対的貧困率が高く、就学援助を受けている小学生・中学生の割合も上昇が続くとしています。

また、子供の相対的貧困率は1990年代半ば頃からおおむね上昇傾向にあり、平成24(2012)年には16.3%となっています。子供がいる現役世帯の相対的貧困率は15.1%であり、そのうち、大人が1人の世帯の相対的貧困率が54.6%と、大人が2人以上いる世帯に比べて非常に高い水準となっています。


図相対的貧困率④ 01

経済的理由により就学困難と認められ就学援助を受けている小学生・中学生は平成24(2012)年には約155万人で、平成7(1995)年度の調査開始以降初めて減少しましたが、その主な原因は子供の数全体の減少によるものとなっています。就学援助率は、この10年間で上昇を続けており、平成24(2012)年度には過去最高の15.64%となっています。

同じく子供・若者白書の平成26年度版では、日本の子どもの相対的貧困率はOECD加盟国34か国中10番目に高く、OECD平均を上回っています。子どもがいる現役世帯のうち大人が1人の世帯の相対的貧困率はOECD加盟国中最も高いとの報告になっています。

■「子供の未来応援国民運動」

この様に、実は日本でも深刻化している子どもの貧困問題を解消するべく、国では「子供の貧困対策に関する大綱(平成26年8月閣議決定)」を制定しました。そして、この大綱に基づき、子供の貧困対策を、国民の幅広い理解と協力の下に政府・経済界・その他民間団体・個人が一堂に会した「子供の未来応援国民運動」として展開しています。
キッズドア理事長の渡辺由美子さんは、この運動の発起人に名前を連ね、現在も活躍されています。

 

●子供の未来応援国民運動のパンフレット 抜粋

●子供の未来応援国民運動のパンフレット 抜粋

 

■事業を始めたきっかけは?

法人設立(当初は任意団体)は、渡辺さんの英国での生活体験がきっかけとなっているそ うです。英国では、地域全体で子育て支援を行う環境が整っており、教材費はほとんどが寄 付でまかなわれていました。日本とは違い、地元の民間企業などが学校や子供をもつ家庭を 支援する仕組みが成立していたそうです。
渡辺さんは、日本に帰国してきてからも続けていたお子さんの子育てを通じ、所得格差が教育環境の格差を生んでいる現実を目の当たりにしました。これらの問題解消を目指し、事業を始められました。

■試行錯誤の結果の「学習支援」

事業のスタート当初は、様々な形で教育環境の支援を模索していたそうですが、ある時地元の学生ボランティアを中心とした、中学校三年生向けの公立高校受験対策の為の学習会が大きな反響を生み、ニーズを確認できたことで、現在も主力事業として継続しているそうです。現在まで、「すべての子どもが夢と希望をもてる社会へ」を理念として事業を行っています。

■学習支援事業の中身とは?

前述の通り、キッズドアの主力事業はボランティアによる学習支援ですが、例えば次のプ ログラムがあります。ボランティアが生徒に寄り添う形の学習会です。

〇【タダゼミ】高校受験サポート
親の経済状況などから塾などに通えず、高校受験対策に不安がある中学3年生を対象に、2010年から、大学生ボランティア講師による高校受験対策講座を無料で行っています。

〇【ガチゼミ】高校生対象の中退防止や大学受験サポート 
 高校生になるとアルバイトに時間を取られて学校の勉強が追い付かない生徒も出てきます。このような高校生の中退防止や、大学進学を目指す生徒へは大学受験を目的とし、学生や社会人ボランティアによる無料学習会を実施しています。

■東北復興支援

キッズドアでは、仙台市にも事務所を構えています。「被災地の子どもたちの将来の夢や希望、失わせない。」を事業理念に、中学生や高校生を対象にした学習支援を行い、東日本 大震災の被災地支援にも取組んでいます。

 ■学習支援の効果

〇ソーシャル・スキルの習得
学習支援事業は、学習習慣の定着や学習知力のキャッチアップが役割となりますが、その効果には「ソーシャル・スキルの向上」という成果も得られるそうです。貧困家庭で生活する子供たちは、学習知力だけでなく、保護者が非常に忙しく子どもに接する時間が少ない為、社会常識も学ぶ機会がないまま育っているケースも結構見られるそうです。
キッズドアの学習会に参加した当初は、挨拶がなかなか出来なかった子供たちが、学生ボランティアや大人たちを交流することで徐々にマナーを習得していくこともあるそうです。これには、ボランティアの方々の努力が貢献している事は言うまでもありません。勉強だけでなく、社会も学んでいる事になりますね。

〇生活課題のプラットホーム
子供たちへの学習指導を通じて、生活環境に難点がある可能性が見えて来る事もあるそ うです。食事摂取不足や睡眠不足などによる生活課題・困難状況が確認できた場合には、地 域の専門機関へ相談し、連携して課題解決に対応することもできるそうです。

●キッズドア・ラーニングラボ TOKYO内の書庫

●キッズドア・ラーニングラボ TOKYO内の書庫

☆こちらは、教室内にある教材ライブラリーの風景です。こちらは、今回リアルな現場を覗かせて頂いたので、「見せるための書庫」ではなく、まさに「使っている書庫」です。臨場感が伝わってきました!

 

■今後の展望と現在の課題

キッズドアでは、一人でも多くの子どもたちが学習支援を受けられるように学習会を増やしていきたいと思っているそうです。また、課題としては、学生を中心としたボランティアの確保を挙げていました。ボランティアの募集には、インターネットの利用をはじめ様々な方法を駆使しているそうですが、ボランティアの方々には毎回参加していただくことも出来ず、生徒数の2~3倍のボランティアが必要なのだそうです。

 ■おわりに(全日本不動産協会東京都本部との関係)

冒頭ご紹介した通り、キッズドアと東京都本部は社会貢献事業分野での協定を締結しており、密な連携を継続しています。キッズドアの事業報告会や説明会の会場提供などの実績があります。子育て支援が篤く論じられる社会情勢の中、この連携による事業支援は是非今後も継続していきたいところです。

 

みんなで「働きやすく、住みやすい、誰でも笑顔になれる中央区」にしませんか?

文責:中央支部広報委員会