今回は、文京区の住宅地の一角に佇むエナジーハウスの活動現場に伺った模様をお伝えします。

エナジーハウスは、メンタル上の疾患を抱えた方への「居場所の提供」「社会参加・活動のサポート」を中心に行っている拠点です。こちらの拠点は、閑静な住宅地内にある小規模な2階建てアパートを一括賃借して運営しています。

住宅セーフティネット法(高齢者・障害者・ひとり親世帯等の住宅確保要配慮者への居住支援を促進する法律)が改正され、新しい制度は今年10月よりスタートしていますが、この流れと相まって、最近では地域における「空き家活用と福祉・交流拠点の整備とのマッチング」が注目を集めています。

(午後の作業中のみなさん/1階和室にて)

(午後の作業中のみなさん/1階和室にて)

 


 

【ご協力頂いた方】
〇特定非営利活動法人エナジー本舗 代表理事 行成 裕一郎 様
【取材場所】
〇地域活動支援センターエナジーハウス(住所:東京都文京区千駄木5-10-8)
【訪問日時】
〇平成29年11月7日(火)13時~

エナジーハウスとは?

エナジーハウスとは、障害者総合支援法の市町村地域生活支援事業に基づいて設置された「地域活動支援センター(Ⅱ型)」として運営される、日中活動のための居場所拠点です。

主にメンタル疾患を抱え、地域の医療・福祉機関等からの紹介があった方が利用しています。毎日15人程度の方が通所されています。
運営主体は、同所に本部を置く「特定非営利活動法人エナジー本舗(NPO法人)」です。

地域活動支援センターでは、屋内での軽作業や地域の協力事業所での外部作業、センターが主催する各種プログラム(スポーツや文化活動等)に参加することが出来ます。
食事会や外出イベントの際の実費負担は必要ですが、通常の利用料は無料です。センターの活動を通じ、障害を抱えた方に「地域での交流と日中の居場所」を提供するサロン事業となります。

エナジーハウスは、メンタルの疾患を抱えた人たちの憩いの場(小規模共同作業所)として、1991年に当初文京区内の向丘の地で開所されました。その後2000年11月に同区千駄木に移り活動してきました。
また、地元地域の方々に支えられた結果、バザーの開催・お祭りへの参加・高齢者在宅サービスセンターでのボランティア活動・喫茶「らん」の担当など活動の幅を広げ、今日まで地域に根づいた活動を行ってきています。
法人としては、この地域活動支援センター事業に加え、2013年3月1日に「計画相談支援事業(支援が必要な方に対するサービス等利用計画を作成し各支援サービスの調整を行う事業)」をスタートしています。

(エナジーハウスの南側より)

(エナジーハウスの南側より)

 

既存のアパートを利用した拠点

エナジーハウスの拠点は、既存のアパート(1フロア1住戸×2階建て/各住戸2DK)を一括して運営しています。日中のプログラムはもとより、毎年行われる地域交流のバザーや、食事会などもここで行っています。主に1階を作業所で、2階が事務所及び休憩室として使用しています。

エナジーハウスの活動を始めた当時は、運営委員の方など地域の人脈を通じ、拠点となる物件を見つけたりしたそうです。
現在の地へ移転した当初は、活動の紹介を兼ねて近隣への挨拶に奔走したそうですが、各地域を担当する民生委員の方の支援が大きかったと言います。現地は、昔ながらの密集住宅地域ですが、2000年にこちらに移ってきてから17年が経ちましたが、これまで地域と良好な関係を保ちつつ今日に至っています。

(エナジーハウスの入口側より)

(エナジーハウスの入口側より)

 

エナジーハウスの活動内容

エナジーハウスの活動理念には、次の3項目を中心に据えています。

1.利用者の一人一人の等身大の自立を図る場を提供する
2.コミュニケーションの機能回復を目的とする
3.グループによる地域活動を通して社会参加の仕方を体得する

これらを基に、具体的な活動は次の通りとなります。

(エナジーハウスパンフレット1面)

(エナジーハウスパンフレット1面)

 

(エナジーハウスパンフレット2面)

(エナジーハウスパンフレット2面)

 

<地域活動支援センター・通所部門>

1.生活支援
①生活技術支援(食事会/個別相談 ほか)
②健康管理支援(通院同行/服薬管理 ほか)
③作業・就労支援(軽作業/喫茶「らん」の仕事 ほか)

2.コミュニケーション機能回復支援
①対人関係支援(面談/創作等の共同作業 ほか)
②グループワーク(スポーツ/テーマトーキング ほか)
③外部交流(歌のボランティア活動/実習生受入れ/バザー ほか)

3.社会参加支援
①地域交流イベント実施(喫茶「らん」でのオープン夕食会/地域の祭りへの参加 ほか)
②地域への啓発活動(メンバーによる体験談発表/エナジーだより発刊)

<指定特定相談支援事業>
障害者総合支援法に基づいて障害福祉サービスを受ける方々に対し、サービス等利用計画を作成する事業。

<地域生活安定化支援事業>
地域活動支援センターに、「医療中断防止」「見守り支援」「専門支援員」の各機能を付加し、地域移行後の精神障害者が安心して生活できる環境を整備する事業(障害者施策推進区市町村包括補助事業として文京区が包括補助を実施)。

<その他:賛助会員>
エナジーハウスの活動を理解し賛同する方から賛助会費を申し受ける事業。賛助会費は、年間一口2,000円(賛助会員にはエナジーだよりを進呈)。

■喫茶「らん」の営業

エナジーハウスでの社会参加支援のプログラムとして運営している事業です。毎週月曜日と火曜日に、エナジーハウスの拠点から徒歩で凡そ3分の場所にある、特別養護老人ホーム「千駄木の郷」(文京区千駄木5-19-2)の1Fラウンジをお借りして、喫茶「らん」を営業しています(祝日はお休み)。
当日は、専門学校の実習生の方もスタッフとして働いていらっしゃいました。

  • 営業時間:午前11:30~午後3:00
  • メニュー例:

≪喫茶≫

コーヒー(アイス・ホット) 150円
紅茶(レモン・ミルク) 150円
ところてん 150円
季節のケーキ 300円

≪軽食≫

鶏みそうどん 450円
和風豚丼 450円
ナポリタン 450円

*月・火以外曜日は、他の地域団体の運営となります。

(キッチン内部を拝見しました!)

(キッチン内部を拝見しました!)

 

(喫茶「らん」のスタッフの皆さん)

(喫茶「らん」のスタッフの皆さん)

 

(喫茶「らん」の拠点がある特別養護老人ホーム「文京千駄木の郷」外観) *社会福祉法人桜栄会HPより

(喫茶「らん」の拠点がある特別養護老人ホーム「文京千駄木の郷」外観)
*社会福祉法人桜栄会HPより

 

■この地域・この事業の特徴は?

エナジーハウスの拠点がある千駄木の地域は、文京区の中でも古くから住まわれている方が多いそうで、日頃から「顔の知った関係」が継続出来ているそうです。地域イベント等での支援を頂く事が多く、地域とのつながりは強いです。
一方、文京区全体について考えると、エナジーハウスが行っている相談支援事業等で利用者の方のアパート探しを手伝う際には、家賃相場が高く中々簡単に物件を探すことが出来ないとの事でした。

また、エナジーハウスの事業(地域活動支援センター:自治体補助事業)は、障害者総合支援法で規定された就労継続支援事業等の類似する形態の様な給付事業とは若干管理スタイルが異なっており、比較的自由な運営が可能だそうです。法人としても、ここに価値を感じています。

■今後の展望

代表理事の行成さんに伺うと、同様の拠点を地域に多数展開すると言うよりは、エナジーハウスの特徴を活かして地域における居場所支援活動を続けて行きたいとの事でした。

直近の活動では、11月12日(日)にエナジーハウス主催の「精神保健福祉講座」を地域啓発活動の一環として行いっています(場所は喫茶と同じ千駄木の郷1Fラウンジ「らん」にて)。
その他では、エナジーハウスの職員の方に福祉や医療の経験が豊富な方も多く在籍されており、そのキャリアを活かした、人材教育(専門職教育研修やコンサルテーション事業)の分野にも幅を広げていきたいとのお話でした。

(バルコニー側に掲げてあるハンドメイドの表示看板)

(バルコニー側に掲げてあるハンドメイドの表示看板)

 

文責:中央支部広報公益委員会