今回は、世田谷区の閑静な住宅地で運営している「祖師谷憩いの家」の現場に伺った模様をお伝えします。

祖師谷憩いの家は、比較的大きい一戸建てを活用した「自立援助ホーム」として運営されています。自立援助ホームは、児童福祉法に規定された施設で、義務教育終了後成人期に至るまでの子どもたちへ生活の場を提供しています。小規模な人数で家庭的な雰囲気の下子どもたちが共同で日常生活を過ごしています。

今回も、このところテーマとしている空き家の福祉的有効活用の事例として、ホームの特徴や運営上の課題・対策等についてお話を伺って参りました。

(ホームのアニマルセラピスト兼看板娘の「ももちゃん」)

 


 

【ご協力頂いた方】
〇社会福祉法人青少年と共に歩む会 祖師谷憩いの家ホーム長 那須 麻美子 様
【取材場所】
〇祖師谷憩いの家(住所:東京都世田谷区上祖師谷)
【訪問日時】
〇平成29年12月8日(金)11時~

■ 祖師谷憩いの家とは?

祖師谷憩いの家の運営母体である「社会福祉法人青少年と共に歩む会」では、3軒の憩いの家を世田谷区内で運営しています。祖師谷憩いの家は、京王線と小田急線のちょうど中間地点である上祖師谷の一角に佇んでいます。

憩いの家では、共に一軒家を活用した児童福祉施設ですが、祖師谷憩いの家は、現在女子専用の共同生活施設として5名(定員6名)の子どもたちが暮らしています。
定員については、制度上の基準の要素もありますが、法人では子どもたちが独り立ちした後のフォローを大切に考えているため、6名という少人数制を採用しています。

●施設概要
○住所:東京都世田谷区上祖師谷
○開設:1982年
○定員:6名
○職員体制:常勤3名及び非常勤その他ボランティアスタッフ
○構造規模:木造2階建て(延:96.3㎡)

(ホームの共用部分/ダイニング)

(ホームの共用部分/ダイニング)

(ホームの共用部分/リビング)

(ホームの共用部分/リビング)

 

●法人概要(社会福祉法人 青少年と共に歩む会)
○発足:1965年(社会福祉法人設立:平成11年3月)
○本部:東京都世田谷区桜上水1-27-11
○事業内容:児童自立生活援助事業(第二種社会福祉事業「憩いの家」3ヶ所の運営)

法人としては、1965年の活動発足から既に50年を経過しています。発足当時のメンバーの方々は、活動資金を捻出するために、地域でのリサイクル事業(廃品回収)等を行い、そこで得た物品等をバザーで販売する等の地道な収益活動を行ってきました。
今では社会福祉法人格を得て運営していますが、事業開始当初は、普通の人たちによるボランティア活動からスタートしました。

最初のホームは、世田谷区の三宿に拠点を構え、その次に区内の経堂のホームを立ち上げました。1982年に開設した祖師谷憩いの家は、3ヶ所のホームとなります。これまで3ヶ所のホームで生活してきた子どもたちは、500人を超えています。

(社会福祉法人 青少年と共に歩む会のパンフレット①)

(社会福祉法人 青少年と共に歩む会のパンフレット①)

 

(社会福祉法人 青少年と共に歩む会のパンフレット②)

(社会福祉法人 青少年と共に歩む会のパンフレット②)

 

【リンク】自立援助ホーム憩いの家 公式サイト(社会福祉法人青少年と共に歩む会)

自立援助ホーム事業とは?

自立援助ホーム(じりつえんじょホーム)とは、義務教育終了後15歳から20歳までの家庭がない児童や、家庭にいることができない児童が入所して、自立を目指すホームと規定されています。児童福祉法を改正し法定化した事業で、法に定めた名称は児童自立生活援助事業と言います。ホームの定員は、5人以上20人以下と定められています。

法定化された当時は、「義務教育終了後児童養護施設等を退所し就職する児童等の社会的自立を促進する事業」との認識であったため、運営事業者は、子どもたちの生活指導と共に就業への支援も行わなければなりません。

社会福祉法人青少年と共に歩む会では、子どもたちに「家庭に近い環境」の中で暮らしてもらう事を理念にした運営を行っています。勉強と仕事の両立を目指すために、ホームには仕事をしながら定時制高校などに通っている子どもたちもいます。

元下宿だった既存住宅を活用したホーム

憩いの家はどちらも既存の一般住宅(一戸建て)を活用しています。祖師谷憩いの家に関しては、一人暮らしの学生が多く住んでいた地域特性もあり、元は学生を中心とした下宿(貸間)で運用していた建物です。
前述の通り、地道な地域でのリサイクル活動で法人の活動を知った住民の方々から未利用の建物紹介などで、拠点を得えています。財務体質が堅実なことから、拠点の不動産は所有しております。

憩いの家の活動内容

祖師谷憩いの家では、地域連携先として管轄の児童相談所との関係が深く、そこからの入居斡旋の相談が多くなっています。余程のことが無い限り「誰でも受け入れる」「断らない」スタンスで運営していため、苦労も多いそうですが、それら活動の結果が、地域からの信頼に繋がっています。
ホームの活動財源は、公的補助をメインにバザー等の自主財源に加え、活動に賛同した方からの寄付金を含めた形態となっています。
また、ホームでは共同生活を営むため、子どもたちには次の3つのルールを課しています。
①働く事:
自立へ向けた準備として、労働対価で貯金をすることを目標としています。最低でも1日6時間以上週5日以上働くことを目指します。
②生活費3万円を納める事:
共同生活のため、毎月の食費や光熱費等その他日常生活品等の消耗品費もみんなで分担しています。
③門限23時:
今後子どもたちが自立し、一般のアパート等で生活した場合に向けて、地域社会に配慮したマナーを習得する目的と、社会人として職業を持った際に、規則正しいい生活リズムを身に付けるためのルールとなっています。

■ 主力事業のバザーは大規模に開催

憩いの家での自主財源の柱に、協力者の方々から出品頂いた衣類や備品等をバザーで販売する事業があります。区の施設でも行いますが、毎年中央区の日本橋高島屋催事場にてチャリティーバザーを実施しています。

(第45回デパートバザーのお知らせパンフレット)

(第45回デパートバザーのお知らせパンフレット)

 

■ 現在の課題と今後の展望 

●現在の課題
自立援助ホームには、制度上20歳まで入居することが出来ますが(児童福祉法の改正で一定の場合22歳まで)、子どもたちが高校を卒業した後に就職できない場合には、日中の居場所の確保が困難なケースも出て来ます。

また、自立のために一般のアパートに入居しようとしても、「保証人が確保できない」「就職前で収入を証明することが出来ない」等の理由により、入居審査をクリアできない等のケースもあります。その場合には、職員の方や法人が色々手を尽くして支援を継続して解決できたケースもあります。
さらに、地域的な問題としては、世田谷区では家賃相場がまだまだ高く、ホームの近隣に住宅を見つけにくい等の課題もあります。ホーム退去後のアフターフォローの実施の際には、OBの子どもたちが、近距離に居る事が望ましいのですが、中々難しいケースも多いです。

●今後の展望
現在の祖師谷憩いの家の建物老朽化に備え、移転等の計画も持っています。さらには、事業的な繋がりとして、ホームOB達のフォローを目的に居住支援の事業を新たに行う計画も持っています。

 

文責:中央支部広報公益委員会