今回は、生活困窮者向けの「自立支援サポート事業」を市から受託する公益財団法人武蔵野市福祉公社・権利擁護センターを訪ね、住居確保給付金事業に関する相談支援についてお話を伺ってきた模様をお伝えします。

 

武蔵野市は、「生活困窮者自立支援事業」と「生活困窮者住居確保給付金事業」を自立支援サポート事業として、運営を武蔵野市福祉公社へ委託しています。
貸付型ではなく、給付型の新型コロナウィルス感染症対策の経済支援としては、世帯向けの「特別定額給付金」や、事業者向けの「持続化給付金」「家賃支援給付金」などが実施されていますが、住居確保給付金事業は、既存の制度である生活困窮者自立支援制度(根拠法が平成27年4月施行)の支援策の一つとして実施されてきました。
住居確保給付金事業は、コロナ禍の状況下で制度を緩和しながら、相談支援現場の方々が支えています。

 

(住居確保給付金の相談支援窓口の事務所内)

 


 

【ご協力頂いた方】
○公益財団法人武蔵野市福祉公社権利擁護センター
成年後見利用支援センター  主査 江尻 陽一 様
【取材場所】
○武蔵野市福祉公社高齢者総合センター3階(東京都武蔵野市緑町2丁目4番1号)
【訪問日時】
○令和2年8月25日(火)PM3時~

 

 ■住居確保給付金事業とは?
●生活困窮者自立支援制度で実施される支援策の一つ

活困窮者の支援制度は、生活保護に至る前の自立支援策の強化を目的とした制度で、平成27年4月から開始されました。
この制度では、全国の福祉事務所設置自治体が実施主体となって相談窓口が全国に設置されており、必須事業としての「住居確保給付金事業」のほか、任意事業として「就労準備支援事業」「一時生活支援事業」「家計改善支援事業」「学習支援事業」その他包括的な事業が実施されています。

●住居を整え就職に向けた自立をサポート
離職などにより住居を失った方、または失うおそれの高い方に対し、就職に向けた活動をするなどを条件に一定期間家賃相当額を支給する制度です。
生活の土台となる住居を整えた上で、就職に向けた支援を行うことが事業の理念となっています。

●住居確保給付金事業の概要

支給対象者 ○離職・廃業等の日から2年以内、又は就業している個人や給与所得者が自己の責任以外の理由で収入を得る機会が減少し、離職又は廃業の場合と同等程度の状況にあること。
○その他、世帯の収入要件・求職活動要件等あり。
支給期間中の条件 ○支給期間中に月1回以上求職活動状況等を報告。
支給額 ○家賃相当額(生活保護の住宅扶助基準額に準拠)
支給期間 ○3ヶ月(一定条件を満たせば最大9ヶ月まで延長)
支給方法 ○貸主(その委託業者)へ口座振込み
申請方法 ○原則、来所申請
申込問い合わせ先 ○武蔵野市健康福祉部生活福祉課生活相談係
○住所:武蔵野市緑町2-2-28
○電話番号:0422-60-1254

【リンク】住居確保給付金事業(武蔵野市WEBサイト)

 

 

(生活困窮者自立支援事業の紹介パンフレット/武蔵野市)

 

 

■これまでの住居確保給付金の支給実績

住居確保給付金事業は、平成27年の生活困窮者自立支援法の施行以前は「住宅手当」「住宅支援給付事業」などから名称変更はあったものの、現行制度と同様に離職等により住居を喪失(またはその惧れのある)した人を支援し、再就職に繋げる就労支援の理念がベースとなっています。

そのため、現在のようなコロナ禍以前のように、雇用環境が比較的安定していた平成21年から平成27年にかけては、ハローワークに求職した離職者数と連動する形で、支給実績が年々減少傾向にありました。

国のデータ(*¹)によると、全国における平成21年度の支給実績が19,741件だったのに対し、6年後の平成27年度の支給実績は6,615件となっており、約3分の1程度まで減少していました。

 

一方、武蔵野市における令和元年度の住居確保給付金事業の実績としては、1年間で申請件数31件給付件数111件就職者数15人となりました(*²)。

また、「給付件数」に特化して検証すると、現行制度が施行された平成27年度では、年間55件だったのに対し、令和元年度では年間111件に増加したので、この4年間で2倍の結果となりました(*²)。

これは、ここ最近の雇用環境の減退と、制度の周知が進んだことの両方が要因と考えられます。

 

*¹出典:厚生労働省「生活困窮者自立支援制度の取組状況等について(H28.9.16生活困窮者自立支援制度全国担当者会議)」資料

*²出典:公益財団法人武蔵野市福祉公社「2019年度事業報告(附属明細書)」資料

 

(厚生労働省「住居確保給付金の支給実績(年度別の推移)H21~H27」資料)

 

■利用者の背景や抱えている課題

住宅確保給付金の目的は、当座の住居確保を支援し、就職を経て自立に繋げることですが、利用者(相談に来られる方も含めて)には様々な「背景」や「課題」があり、それら生活上の負担を取り除く支援も必要なケースが少なくありません。

相談支援の現場で感じる利用者の課題等には、次のような特徴があります。

○多様で複合化した課題を持つ人が多い。

○何かしらの障害を抱えている(と思われる)人が多い。

○若年層の方は、非正規形態の雇用が多い。

○特に若年層は、将来の展望を見出せない人が多い。

○納税意識の低い人が多い。

○資産が少なく、その日暮らしのような生活をしている。

○自分の課題に気付いていない人が多い。

○特に、家計管理に課題のある人が多い。

 

住居確保給付金事業の運営課題
●専門職を育てることの難しさ
ソーシャルワーカーとしての基礎スキル、福祉的視点を含む就労支援、対象者が抱える複数の生活課題に的確に対応できるスキルが求められます。単なる利用要件に適合するか否かの視点ではなく、対人サービスに熟練していることが求められます。
●制度上の様々な壁
住居確保給付金事業は生活困窮者自立支援法に基づく制度であり、法律で規定した範囲外の事態には、対応しきれません。
それでも、現場では相談員が他の代替的支援制度を活用できないか、ということも考えながら対応していますが、次のような制度上の限界があります。
①海外からの留学生や就労ビザで来日している外国人を支援する制度が少ない。
②障害の疑いがあっても、手帳を取得していないと、市区町村の支援が受けられない。
●地域特性による課題
その他武蔵野市の地域性による課題には、次のようなものがあります。
①都心に通うサラリーマンのベッドタウンであるため、大規模な工場などの就労の場が少ない。
②吉祥寺付近は特に家賃が高いため住居確保給付金だけでカバーしきれない。
③地域の商店や企業との結びつきが希薄なため、就労支援がハローワーク頼みになってしまう。

 

■今後の展望
事業の運営においては、利用者が最低限度の生活ができるように、事業所内で情報共有し、定期連絡・訪問をする体制を取りつつ、利用者が困窮する前に相談できるよう、広報活動にも力を入れて行きます。

そのほか、地域力を向上させるため、商店や企業と連携できる関係を作り、利用者を孤立させないための居場所(カフェ等)づくりを進め、ハローワークだけに頼らない、利用者に合った仕事ができる独自の就労支援を行っていきます。

 

■新型コロナウィルス感染症対策
(1)予防策の事例

感染予防のため、来館予定者には、事前に電話で海外への渡航歴及び感染の有無を確認し、来館当日は検温及びマスクの着用、施設入口での手指消毒、エレベータの使用禁止、問診票の記入をお願いしています。

面談時は、相談員はマスク及びフェイスシールドを装着し、手指消毒をして応対。面談室は常時窓を開けて換気し、ご利用者と対面にならない位置(斜め向かい等)に座る等、感染予防に努めています。

(2)関係者に症状が表れた際の手順・対応

1.市の担当課及び保健所に連絡する。

※万が一感染した職員は保健所からの入院勧告を受け入院(病気休暇)。

2.感染者の所属する建物の管理者は、保健所の指示に従い、職員、市民、利用者等の濃厚接触者の特定、消毒場所の確定に協力する。
3.確定した消毒場所を消毒する(消毒方法は保健所等に確認する)。
4.濃厚接触者については、保健所指示により14日間自宅待機し、保健所の健康観察等に協力する。

※濃厚接触者のうち、無症状の職員については、テレワークや自宅勤務の可能性を検討する。その場合の服務は自宅への出張扱いとする。

5.感染した職員の勤務場所は、当面閉鎖し、保健所の了解を得た後に閉鎖を解除するため、閉鎖中の業務を他の部署や事務所で行えるよう、必要な書類等の準備をしておく。

※システムについては他の部署でも利用できる可能性が高いので、紙ベースで必要になるものは、持ち運べるよう準備しておく。

※対人的な業務については、代行者のサービス提供が可能かを検討しておく。

※他の職場での代替えがむずかしい業務については、消毒終了後に必要な措置を講じた上で保健所に打診する。

6.情報の公開は、市や保健所と協議した上で実施する。

 

(文責:広報公益委員会)