今回は、杉並子ども家庭支援センターに伺い、地域のニーズの特徴や、相談支援機関としての子育て支援に関する現状などについてお話を聞いてまいりました。

杉並区では、平成27年度から実施している「子ども・子育て支援新制度」に基づき、子育て支援に関する事業に取り組んできました。その中で、保護者のニーズが高い認可保育所を核とした施設整備を精力的に進めた結果、平成30年4月度から令和2年4月度にかけて、3年連続で「待機児童ゼロ」を実現しています。

杉並区の子育て支援ニーズは年々変化していますが、杉並子ども家庭支援センターは、区内の基幹型センターとして、子どもと家庭の問題に関する総合相談窓口として支援を行っています。

 

(杉並子供家庭支援センター内部/受付カウンター風景)

 


 

【ご協力頂いた方】
○杉並区子ども家庭部管理課子ども家庭支援係長 横関 恭孝 様
【取材場所】
○杉並区杉並子ども家庭支援センター(東京都杉並区阿佐谷南1-14-8)
【訪問日時】
○令和3年1月13日(水)午後1時30分~

 

■子供家庭支援センターとは
子供家庭支援センターは、区市町村における子供と家庭に関する総合相談窓口であり、18歳未満の子供や子育て家庭に関するあらゆる相談に応じるほか、ショートステイ等の子供家庭在宅サービス、子育てサークルや地域ボランティアの育成などを行っています。

●東京都の事業としてスタート
児童福祉法における児童相談業務は、これまで地域の児童相談所が担っておりましたが、近年の児童虐待件数の増加等により、児童相談所ではより高度な専門的対応が求められおり、それ以外の一般相談と業務を棲み分けるニーズが高まっていました。

こうしたなか東京都では、平成7年から都の独自事業として、子供家庭支援センター事業を開始しました。また平成15年には、児童虐待の予防と早期発見・見守り機能を付加した「子供家庭支援センター」を創設しました。また、平成16年11月の児童福祉法改正により、子どもと家庭の相談支援業務が区市町村業務にあたる市区町村の役割が明確化されました。

 「子どもセンター」との違い
「子どもセンター」は、自治体によって様々ですが、子育て中の親子が気軽に集い、相談支援や子育ての不安・悩みを相談できる「地域子育て支援事業」や、保育施設等の利用相談や子育て支援サービスの利用相談・情報提供を行う「利用者支援事業」を実施しています。

杉並区では、母親学級や乳幼児健診等を行っている保健センター内(高円寺保健センターを除く)に開設し、「利用者支援事業」を中心に実施しています。

 

■杉並区における子ども・子育てを取巻く環境
●就学前人口の推移
杉並区の人口は、平成27年度の547,165から令和2年度推計値では572,679となり約4.6%増加していますが、今後も増加傾向が続くと見込まれています。

一方、小学校就学前の子どもの人口は、令和2年度推計値で25,448となっており、これまでの近年では増加傾向にありましたが、同年度以降減少すると見込まれています。

*出典:「杉並区子ども・子育て支援事業計画【第2期:令和2~6年度】」(杉並区・令和2年2月)資料

 

(就学前年齢別人口の推移と推計/杉並区資料)

 

●保育需要率と待機児童数
杉並区内では、6歳未満の子どものいる夫婦に占める「共働き夫婦」の割合が増加しており、これに伴い保育需要率(*¹)も連動して増加しており、平成22年度には28.2%だった値が平成31年度には48.3%となっています。(*²)

また杉並区の待機児童数は、平成28年には136名(認可保育所数87ヶ所)でしたが、平成30年から令和2年まで3年度連続で0名(認可保育所数165ヶ所)を達成しています。これは、待機児童問題の解消に向けて杉並区が認可保育所の整備拡大に取組んだ成果といえ、認可保育所数は4年間で78ヶ所増えています。(*²)

*¹保育需要率:保育利用者数/就学前人口
*²出典:杉並区資料

 

■杉並子ども家庭支援センターの概要
杉並区には、現在2ヵ所(杉並・高円寺)の子ども家庭支援センターがありますが、杉並子ども家庭支援センターは「基幹型センター」として、区内におけるセンターの運営を統括・支援しています。
●センター概要
○所在地:〒166-0004 杉並区阿佐谷南1丁目14番8号
○電話:03-5929-1902 ○ゆうライン(相談専用窓口):03-5929-1901(杉並子ども家庭支援センター内)
○開設時間:午前8時30分~午後7時(祝日・年末年始を除く月曜~土曜)

 ●事業内容
(1)子どもと子育て家庭の総合相談
0歳から18歳未満までの子どもと子育て家庭に関するあらゆる相談支援の実施を行っています。そのほか、子育てに関する情報提供・子育て支援講座の開催(区報などで周知)も行っています。
・ゆうライン(相談専用窓口)☎03-5929-1901

子どものこころの相談 児童精神科医が担当
家族相談 家族心理士が担当

(2)子どもショートステイ
保護者が病気・出産・育児疲れなどで一時的に子どもを養育できない時に、区内の児童養護施設又は乳児院で、宿泊預かりを実施します。

対象 0歳から12歳(小学生)
期間 1回7日以内(年度内の合計は子ども一人につき28日以内)

(3)児童虐待への対応
児童虐待に関する相談、連絡・通告に対応します。
このほか、「杉並区要保護児童対策地区協議会」の運営を、保健センターと協働で実施しています。支援するケース毎に役割分担し、連携対応しています。
・杉並区要保護児童対策地域連絡協議会(要対協)の支援体制

介入が必要な要保護児童 児童相談所
支援的介入が必要な要保護児童 子ども家庭支援センター
要支援児童・特定妊婦 (就学前)保健センター

(学齢期以降)子ども家庭支援センター

 

 

(杉並子ども家庭支援センターの事業案内パンフレット)

 

【リンク】子ども家庭支援センターのサービス案内(杉並区HP)

 

■早期発見・早期支援の視点から児童虐待の防止を図る
杉並区では、児童虐待への対応を進めていくためには、養育に課題を抱える家庭を早期に発見し、早期に対応することで未然に防止することが大切であるとの考え方から、子ども家庭支援センターと保健センターが医療機関と連携しながら、妊娠期からの支援に取組んでいます。

 

(児童虐待の相談・連絡先/杉並区HP)

 

■児童虐待対策の推進と相談支援の実績
●ゆうラインの相談対応実績
子ども家庭支援センターでは、保健センターや医療機関等と連携しながら、大人だけではなく、子ども自身からも相談を受ける身近な相談窓口として、電話や面接等により、子育て相談・児童虐待等の相談に対応しました。

令和元年度にゆうラインで取扱った相談件数は、延1,874件に上り、平成27年度までの4年間で、相談件数が1.5倍近く増加しました。

また、内容別分類では「性格行動」(45.73%)が最多で、次いで「育児しつけ」(28.81%)、「サービス・区の機関に関すること」(8.69%)、「夫婦関係」(7.20%)の順となりました。

 

(ゆうラインの内容分類別相談件数推移/杉並区保健福祉事業概要・令和2年版〈令和元年度実績〉)

 

●子育て相談サロン事業の実績
子育てに不安や悩みのある母親が、相談機能を兼ねた居場所として、親子で気軽に利用できる子育て相談サロン事業を実施しました。
令和元年度においては、年間89回サロンを開催し延177組の方が参加されました。

●専門相談の実績
精神科医、家族心理士等の専門家による専門相談を実施し、相談者のニーズに応じた支援を行いました。
令和元年度おいては、「子どものこころの相談件数(児童精神相談)」を、年間24日実施し、延43組の方が支援を受け、「家族相談件数(家族心理相談)」を、年間31日実施し、延41組の方が支援を受けました。

 

■子育て支援環境に関する課題と今後の展望
「杉並区子ども・子育て支援事業」や「杉並区保健福祉事業」の中でも、子育てセーフティネットの充実は重要な施策に位置付けられており、子ども家庭支援センターは、サービス提供の実施機関として、期待される役割は非常に大きいです。
専門的な事業の実施には、様々な課題がありますが、課題解決を経て培った技術を基に、将来への展望が開けてきます。

●専門職の人材育成と確保
地域からの相談対応のニーズの増加に応えるべく、相談支援体制の整備が必要であり、人材の確保と育成は喫緊の課題となっています。
子ども家庭支援センターの支援担当の、常勤職員数を約3倍(平成30年度比)に増員する計画が進行中です。

 情報共有するための地域連携先の拡大
ニーズの多様化やケースの複雑化が進む中で、これまでの地域の関係機関との連携をさらに広げるための周知活動の推進が必要となっており、各所へのアウトリーチを進めています。
子ども家庭支援センターでは、「区民向け虐待防止講演会」を実施していますが、平成27年度から令和元年度にかけて延299名(*¹)の方が参加されました。今後も児童虐待の周知・対策の普及活動を続けて行きます。

*¹出典:杉並区保健福祉事業概要令和2年版〈令和元年度実績〉資料より算出

 ●地域型センターの拡充
杉並区では平成31年4月には、地域型センターとして、高円寺子ども家庭支援センターを開設し、現在区内2ヵ所にて相談支援を行っています。
地域型センターは、今後荻窪地区(令和4年4月開設予定)と高井戸地区(令和5年4月開設予定)にも拠点を開設する計画で、基幹型センター1ヶ所と、地域型センター3ヶ所の体制で相談に対応していく事になります。

 

(センター入口前にある各種パンフレット・情報コーナー)

 

(杉並子ども家庭支援センターのある建物外観)

 

 

(文責:広報公益委員会)