今回は、杉並区が複合的に課題を抱える世帯を多角的に丸ごとサポートすることを目的とした拠点(ウェルファーム杉並)の一画で展開する杉並区在宅医療・生活支援センターを訪れて、お話を伺った際の模様をお伝え致します。

杉並区在宅医療・生活支援センターが入居するウェルファーム杉並は、これまで荻窪税務署及び隣接する国家公務員宿舎があった跡地に、国との財産交換によって整備された複合施設です。今月上旬には、隣地に特別養護老人ホームも開設しました。

ウェルファーム杉並は、これまで地域に点在していた福祉拠点を、ワンストップで対応できるよう一ヵ所に集約した複合施設で、高齢者在宅生活を支援する窓口や子育て支援拠点、さらにはボランティアのための地域活動の拠点に至るまで、様々な機能を持っています。

 

(ウェルファーム杉並の外観)

 


 

【ご協力頂いた方】
○杉並区在宅医療・生活支援センター 所長 松田 由美 様
【取材場所】
○杉並区在宅医療・生活支援センター(杉並区天沼3丁目19番16号)
【訪問日時】
○令和3年12月1日(水)14:00~

 

■ウェルファーム杉並のコンセプト

ウェルファーム杉並のコンセプトは誰もが気軽に利用できる福祉と暮らしのサポート拠点」としており、区民から寄せられた子育て期から高齢期にわたる福祉と暮らしの相談に応え、交流や集いの場を提供する複合施設として、平成30年春に開所しました。

在宅医療の推進や生活上の課題の解決を支援する在宅医療・生活支援センターをはじめ、区民の福祉や暮らしをサポートする施設・事業を集約し、相互の連携を図ることで、高齢者や障害(児)者、子どもなど、幅広く区民の生活を支える拠点として機能しています。

●ウェルファームウェルファーム杉並(複合施設棟)で展開する各種窓口

4
  • 天沼区民集会所
  • 杉並区社会福祉協議会(杉並ボランティアセンター)
3
  • 消費者センター
  • 在宅医療・生活支援センター
  • 杉並区成年後見センター
  • 基幹相談支援センター
2
  • 杉並福祉事務所
  • 杉並区社会福祉協議会
1
  • 就労支援センター
  • 生活自立支援窓口「くらしのサポートステーション」
  • 子ども・子育てプラザ天沼

 

杉並区在宅医療・生活支援センターの役割とは?

杉並区在宅医療・生活支援センターは、杉並区の地域包括ケアシステムの推進役として、地域の「在宅医療と介護連携に関するニーズ」に対してワンストップで相談支援ができる窓口として開設されました。

同センターでは、主に高齢者への在宅医療の推進に加え、複数の生活課題がある支援困難な世帯の相談機関をバックアップするため、高齢者・障害者・子育てなどの分野に横串を刺すように課題の整理や共有、専門家(精神科医や弁護士)の助言等、多面的な相談支援を行っています。

また、都心部で地域包括ケアを行う機関は外部の法人組織に運営を委託するケースがほとんどですが、杉並区在宅医療・生活支援センターは、数少ない自治体の直営組織である点が特徴となっています。

●施設概要
○住所:東京都杉並区天沼3丁目19番16号ウェルファーム杉並複合施設棟3階
○電話番号:03-5335-7317(代表) ○FAX番号:03-5335-7318
○利用時間:午前8時30分から午後5時(休業日/土曜日・日曜日・祝日・年末年始)
○業務内容:在宅医療の推進、高度困難事例への対応支援、調査研究・総合調整、及び生活困窮者自立支援事業に関すること
○開設年月:平成30年4月
○設置者:杉並区
【リンク】杉並区在宅医療・生活支援センターの公式ページ

●主な事業

在宅医療と介護の連携推進
  • 在宅医療の支援並びに在宅医療に係る広報及び啓発
  • 在宅医療の支援に係る多職種連携 ほか
包括的な支援の実施
  • 包括的支援の実施(相談機関の後方支援)
  • 高齢者虐待の防止や養護者に対する支援等 ほか
地域共生社会の実現
  • 地域における支え合いの仕組みづくり
  • 包括的な相談支援体制の整備
生活困窮者自立支援事業
  • 生活自立支援事業「くらしのサポートステーション」の運営管理(委託先:杉並区社会福祉協議会)
  • 子どもの学習支援等事業の運営管理(毎週火曜日実施)

 

(広報紙でのセンター紹介記事「杉並区在宅医療地域ケア通信第24号」)

 

■支援の特徴と課題
 在宅医療と介護の連携
杉並区では、在宅医療に関する専門職連携を深めるために、平成27年度から「在宅医療地域ケア会議」を区内7つの日常生活圏域(井草・西荻・荻窪・阿佐ヶ谷・高円寺・高井戸・方南和泉)ごとに行っており、顔の見える関係のもと技術研鑽に取組んでいます。
一方、在宅医療を支える開業医や介護職員の高齢化、在宅医療従事者そのものの減少など人材確保の課題があります。
杉並区では、これら課題解決や効率化のために、本年度より医師会が医療・介護関係者の情報共有のために導入する「杉並区多職種連携ICTシステム」の運営を支援しています。

 ニーズの複雑化
社会情勢の変化等により相談者の支援ニーズは日々複雑化しており、一つの相談機関では対応が困難なケースが増えています。「8050問題とひきこもり」「ダブルケア」「ヤングケアラー」「子どもの貧困」「精神障害者の退院支援」「虐待」などの課題には、包括的・多角的なアプローチがより必要になっています。
これらの課題のうち高齢者虐待については、在宅医療・生活支援センターとケア24(各エリアの地域包括支援センター)が連携を取りながら支援を行っています。
高齢者虐待が発生するケースには、養護者(虐待の行為者)も何らかの生活課題を抱えている場合が多く、「養護者支援」という別のアプローチも必要になります。

●地域コミュニティの希薄化と孤独化する個人
地域コミュニティの希薄化は、共助により支えられてきた地域力を低下させる要因となりますが杉並区においても状況は同じです。
在宅医療・生活支援センターの地域ささえあい連携推進担当が、杉並区社会福祉協議会への委託事業として管掌するモデル事業では、西荻地区の「まちナカ・コミュニティ西荻みなみ」に専任の地域福祉コーディネーターを配置し、潜在的ニーズを把握するためのアウトリーチを行っています。
「まちナカ・コミュニティ西荻みなみ」は、神明通りにあった物販店舗の跡地を再生利用しています。地域の様々な人たちがかかわり、サロンやイベント、学習会の開催等ジャンルを問わない活動で賑わいをみせています。

 

■コロナ禍におけるセンターの対応
 コロナ病床確保のための転院支援
新型コロナウィルス感染症患者の急増による杉並区内5病院の専用病床の逼迫を受け、退院基準を満たした患者で高齢による虚弱・基礎疾患等の理由から在宅生活が困難なため、引き続き入院が必要な患者への転院支援を行いました。
転院患者の受入先となる延べ11の医療機関とは、区で協定を締結し必要な財政的支援も行いました。*対象となる患者の入院延日数221日(令和2年度実績)

 激増した相談支援等への対応
コロナ禍により、昨年度の生活困窮者自立支援事業に関する相談件数は急増しました。

令和元年度 令和2年度 前年対比
相談支援(延件数) 8,387 24,918 297%
住居確保給付金(延支給月数) 166 12,704 7,653%

*データ出所:杉並区在宅医療・生活支援センター 資料

 

■今後の展望
人材の確保は、コロナ禍の影響に関係なく今後も重要な課題であり、前述のように、ICT活用の推進とあわせて人材育成を進めていく予定です。
また、地域における共助を推進するため、杉並区社会福祉協議会との協働による地域福祉コーディネーターの配置を他の地域へ広げる検討も期待されています。

 

(「杉並区地域支え合いの仕組みづくり事業」パンフレット)

 

 

(文責:広報公益委員会)