今回は、子どもたちへの学習支援活動を行っている認定NPO法人キッズドアを訪問し、ここ2年間のコロナ禍における活動の変化や特徴についてお話を伺ってきた際の模様をお伝えします。
キッズドアは、2009年10月のNPO法人認証から12年が経過しましたが、2021年10月より認定NPO法人登録に(認定特定非営利活動法人)なりました。認定NPO法人とは、その運営組織および事業活動が適正であって公益の増進に資するものにつき一定の基準に適合したものとして、管轄行政庁から認められた組織を指します。
コロナ禍で学校が一斉休校になった時、キッズドアの活動においても主事業である集合形式の学習会が中止になるなど困難な状況でしたが、必要な人に新しい支援を提供する形を模索するきっかけとなりました。
【ご協力頂いた方】
〇認定特定非営利活動法人キッズドア 広報担当者様
【取材場所】
〇認定特定非営利活動法人キッズドア茅場町オフィス
【訪問日時】
〇令和4年3月8日(火)14:30~
■キッズドアの概要
〇名称:認定特定非営利活動法人キッズドア(NPO Kids’ Door)
〇設立:2007年1月(2009年10月NPO法人格取得)
〇理事長:渡辺 由美子 氏
〇所在地:
【本部・東京事務所】
●東京都中央区新川2-1-11 八重洲第1パークビル7階
【東北事務所】
●宮城県仙台市宮城野区榴岡3丁目2番5号 サンライズ仙台2階
〇活動趣意:すべての⼦どもが夢や希望を持てる社会の実現
〇事業内容:学習支援・居場所支援ほか(自治体委託及び自主事業)
〇拠点数等:全国74拠点(2020年度)/生徒数合計1,498人(小学生211人・中学生711人・高校生世代576人)/ボランティア総数748人/ファミリーサポート支援対象者34,182人/協力企業団体数227団体
■「子どもの貧困」の現状
内閣府(「子供・若者白書(平成27年度全体版)」)及び厚生労働省(「2019年国民生活基礎調査(概況)」)の調査結果によると、子供の相対的貧困率*は、平成24(2012)年の16.3%をピークに、平成30年(2018)年には13.5%となっています。約7人に1人の子どもが貧困状態にあることになります。
そのほか、大人が1人(ひとり親)の世帯の相対的貧困率が48.1%と、大人が2人以上いる世帯(10.7%)の約4.5倍と非常に高い水準となっています。
*相対的貧困率:貧困線(等価可処分所得の中央値の半分)に満たない世帯員の割合
*OECD の所得定義の新基準では数値に若干の差異あり
【図】 貧困率の年次推移(出典:厚生労働省2019年国民生活基礎調査(概況))
■コロナ禍で見えた課題
●生徒と会えない
キッズドアの生徒は、経済的事情により学校外での民間学習塾等に通えない子ども達です。2年前の新型コロナウィルス感染症の蔓延防止として一斉休校が行われた当時、感染リスク対策として、集合形式の学習会を中止しなければいけない状況となりました。
学習会の中止は、学習の機会がなくなるだけではなく、居場所型学習会の場合には、子どもの居場所自体がなくなることになりました。
●公的支援とニーズのミスマッチ
保護者世帯に行ったアンケートの結果に、「緊急小口貸付」は知られている一方、他の公的支援制度等は知られていないため、十分に活用できていない可能性が見えてきました。せっかく様々な公的支援制度が用意されていても、情報弱者には届き難いという現実があります。
また、公的支援制度に対する声には「受給要件が厳しすぎる」「窓口対応で困った・嫌な思いをした」等がありました。
この他のアンケート結果では、「1年間の世帯全体の収入100万円未満が最多」「保護者の健康状態や精神状態が危機的状況にある」などがあり、保護者に対しても早期の介入が必要であることがわかりました。
■「つながりを絶やさない支援」と「困難が育てた新しい支援」
●学習支援や居場型支援を続けるための工夫
コロナ禍で学校が一斉休校になった時、集合形式の学習会の代替えとして、LINEや電話によるコミュニケーションの継続や、テキスト・答案用紙を携帯電話などの画像データで送受信することで、学習支援を行いました。IT環境が脆弱な世帯には、PCやタブレット、Wi-Fi機器の貸出しなどで環境調整を行い、情報格差が出ないように配慮しました。
居場所型支援の拠点では、お弁当の配食を通じ、子どもと顔を合わせることのできる最低限の機会を維持し、子どもの生活状況や体調の変化などの管理に努めました。
●ファミリーサポート
コロナ禍が始まった当時の2020年4月に、支援企業の協力によって、全国の1万人の子ども達に文房具の配布を行いました。
その中で行ったニーズ調査の結果、「食料などの物資」「情報」の支援が必要だということが分かり、同年10月に全国の困窮子育て家庭を対象に「ファミリーサポート事業」を立ち上げました。
ファミリーサポート事業では、情報支援・物資支援・そして保護者への就労支援を行い、2020年度は全国延べ34,182人の方に支援を届けることができました。
この中の就労支援は「わたしみらいプロジェクト」の名称で展開し、ハローワークなど公的機関の就労支援とはひと味違った形で3ヶ月間のオンラインセミナーや講座のカリキュラムを実施しており、現在第6期生が受講中です。
●政策提言で保護者の声を代弁
長引くコロナ禍と夏休みの影響が、子どもの成長や家族の健康に重大な影響を及ぼす恐れがあると考え、キッズドアではファミリーサポート事業登録の困窮世帯を対象とした緊急WEBアンケート調査を2021年から今年初めにかけて数回実施しました。
回答頂いた多くのアンケート結果を基に、渡辺理事長が度々記者会見を行い、政策提言を発信してきました。
【資料】「2021年夏緊急提言に向けたアンケート結果について(実施主体:認定NPO法人キッズドア/2021年7月28日公表)より抜粋
●年収 200 万円未満の家庭が 6 割を超えており、2021 年はさらに減収する見込み。貯蓄額が 10 万円未満の家庭も半数を超えており、生活が極めて不安定な状況に置かれている。 ●2021 年度も収入が減少しそうという家庭が7割となり、困難な状況の継続や深刻化が予測される。 ●二人親家庭も、一人親家庭と同様に困窮し、子育て環境、健康等に大きな課題を抱えている。 ●食事の質や量が悪化。子どもの成長に取り返しのつかない影響が出ている可能性がある。 ●夏休みで給食がなくなることへの不安が大きい。給食が支えていたぎりぎりの食生活が夏休みに崩壊する可能性がある。 ●コロナウィルスを原因とした休校等の影響で、子どもの学習環境も悪化。子どもの進路や将来に深刻な影響が出ることに大きな不安の声が寄せられている。 ●コロナウィルスを原因とした生活環境の変化等により、保護者の心身の健康状態にも大きな影響が出始めている。 ●今、家庭が最も求める支援は、生活と生命を支えるためのすみやかな現金給付。 |
■今後の展望
今後も、学習支援を柱とした専門分野での活動の継続に加え、現場で見えてきた課題を社会に訴求していく予定です。
また、ファミリーサポート事業を通じ「困窮子育て家庭の支援」にも力を入れていきます。更に、他の社会貢献活動団体等と協業しながら、若者や現役世代の声が届きやすい社会へするための提言も継続していきます。
~誰でも笑顔になれる中央区を目指して~
(文責:広報公益委員会)