今回は、さまざまな事情により、頼れる世帯がなく、一人で生活している若者に対して、生きていくための基盤を提供する伴走型支援事業を実施しているNPO法人サンカクシャを訪れてお話を伺った模様をお伝えします。

サンカクシャでは、若者が社会で生き抜くための3つの支えとして「居場所」「住まい」「仕事」の提供を行っています。

具体的には、「サンカクキチ」の拠点で、ゲーム機器や漫画を無償で提供し、さらには拠点内にeスポーツスタジオを併設する等、本人のニーズに合わせた幅の広いプログラムを実施しています。

また、社会人のボランティアとの交流もできるよう、拠点内にはコワーキングスペースも併設されています。

 

(代表の荒井さんとメンバーの若者たち)

 


 

【ご協力頂いた方】

○NPO法人サンカクシャ 代表理事 荒井 佑介 様

○NPO法人サンカクシャ 広報・ファンドレイジング担当 水上 みさ 様

○NPO法人サンカクシャ サンカクキチ施設長 早川 智大 様

【取材場所】
○NPO法人サンカクシャ本部(東京都豊島区上池袋4-35-12 3階)

【訪問日時】
○令和5年2月3日(金)15:00~17:00

 

■若者の居場所と相対的貧困率の課題

●若者にとって「ほっとできる場所、安心できる場所」

内閣府が行った、今後の子供・若者の意識及び行動に関する総合的な調査研究(子供・若者総合調査 令和4年2月7日~24日に実施)の結果によると、若者にとって居場所(ほっとできる場所、安心できる場所)についての質問では、「そう思う」と答えた結果で最も多かったのは「家庭」の70.7%となり、次いで「自分の部屋」の67.9%となりました。

またそれぞれ、「どちらかといえばそう思う」を合わせると、「家庭」は92.2%、「自分の部屋」は85.6%が居場所と感じられている結果となりました。

(出典:「子供・若者総合調査」の実施に向けた調査研究 (令和3年度)令和4年3月公表/内閣府 資料)

 

●相対的貧困率は25~34歳が最も低い

総務省統計局が公表した「2019年全国家計構造調査(2021年8月31日)」調査結果によると、年齢階級別の相対的貧困率(*)は、25~34歳が7.3%と最も低く、75~84歳が18.3%と最も高い結果となりました。

*相対的貧困率:等価可処分所得の中央値(全ての世帯人員を等価可処分所得の少ない順番に並べたときに、ちょうど中央に位置する者の金額)の半分の金額を貧困線と呼び、貧困線を下回る所得の世帯人員数の割合を相対的貧困率といいいます。

(出典:「全国家計構造調査年間収入・資産分布等に関する結果」令和3年8月31日/総務省統計局資料を基に作成)

 

これらの結果から、若者が何らかの事情で家庭や住居(自分の部屋)を失うと、最大のセーフティネットを同時に失う事に直結する恐れがあるという事が考えられます。

また、サンカクシャが支援する概ね15歳~25歳までの世代で、貧困の連鎖を喰いとめることができれば、その後の経済的に自立した社会生活が実現できる可能性が高いという事が考えられます。

 

■ホームレス支援を通じ若者への社会的支援の必要性を実感

サンカクシャ代表の荒井さんは、まだ学生だったリーマンショック当時から、路上生活者支援を行っていました。その中で、若者の貧困問題とそれに対する社会的支援が不足しいることを痛感し、豊島区内の学習支援に従事するようになりました。

その後10年間で得られた地元とのネットワークや実績をもとに、2019年NPO法人サンカクシャを設立し、現在まで若者の社会参画を応援しています。

●NPO法人サンカクシャの概要

○名称:特定非営利活動法人サンカクシャ

○設立:2019年5月24日(NPO法人認証:2019年5月22日)

○代表理事:荒井佑介 氏
○本部所在地:東京都豊島区上池袋4-35-12 3階

○TEL:03-6905-8287

○活動内容:様々な背景から、家庭や社会から孤立した15歳から25歳くらいまでの若者世代に対する、居場所づくり、仕事のサポート、住まいのサポート。

○受託助成金実績(2021年度):中央共同募金会「赤い羽根福祉基金2021年度助成」、公益財団法人パブリックリソース財団「東京海上日動キャリアサービス働く力応援基金」、キッズドア×READYFOR休眠預金「深刻化する『コロナ学習格差』緊急支援事業」ほか。

【リンク】NPO法人サンカクシャ 法人ホームページ

(NPO法人サンカクシャ活動紹介)

 

■サンカクシャが実施する支援プログラム

1.居場所づくり

サンンカクキチ

家のようにくつろげる居場所、大人との交流拠点

○場所:豊島区上池袋4丁目

○開設日時:毎週水曜・木曜・土曜 14時~20時

○内容:ゲームや漫画がたくさんあり夕食も無償提供、社会人が仕事もできるコワーキングスペースも併設

  .仕事のサポート

サンカククエスト

サポート付きのアルバイトの提供

○場所:オンライン/各拠点にて

○内容:サンカクシャにつながる地域の企業から仕事の依頼を受け働く機会を提供、スタッフやボランティアが若者と一緒に仕事をこなし、若者の働く自信が身につくようサポート

  3.住まいのサポート

サンカクハウス東池袋

DIYで生まれ変わった立地最高なシェアハウス

○場所:東京都豊島区東池袋

○対象:男性限定

○定員:5名

○費用:月3万円+光熱費

サンカクハウス上中里

閑静な住宅街にある綺麗な戸建てのシェアハウス

○場所:東京都北区上中里

○対象:男性限定

○定員:10名

○費用:月3万円+光熱費

サンカクハウス大山

おばあちゃんちのような女性用シェアハウス

○場所:東京都板橋区中丸町

○対象:女性限定

○定員:5名

○費用:月3万円+光熱費

 

■サンカクシャの支援の特徴

サンカクシャでは広告宣伝費を投下し、若者からの相談ニーズを大々的に拾うのではなく、登録メンバーの近親者や友人のニーズや、日頃から関係のある地域からの口コミによる相談ルートが多くなっていましたが、最近では、S N Sなどで直接相談が来るケースが増加しています。

また、サンカクシャは、メンバーと「家族のような関係の構築」を目指しています。

多くのメンバーは、実際の家族関係に困難が生じたため、サンカクシャを頼ってきているケースが多いですが、若者が現実社会で生きてゆくためには、家族の様なセーフティネットが必要です。サンカクシャでは、若者と社会との間に立つ程よい距離感の関係を作っています。

●「課題解決を目指す」のではなく「一緒に悩む」

公的機関による支援計画で行われるような課題解決をゴールとするのではなく、メンバー本人の自己決定に寄添うことを目指しています。

●専門家につなぐのではなく「まず大人と関わる」

長年の地元での活動実績により、様々な専門家や機関との関係がありますが、支援にあたってメンバーに専門家をつなぐことで終わらせるのではなく、その過程に寄り添います。

メンバーは、社会との適切な交流が不足しているために、知らない大人と関わることに抵抗を感じています。そのため、専門家などを繋ぐ場面を通じ適切な社会交流をサポートしています。

 

■コロナ禍の課題と今後の展望

コロナ禍が始まった当初、居場所の開所を控えていた時期もありましたが、若者への支援の必要性の多さから、早い段階で居場所の開所を決断し、感染対策を施した上で運営を再開しました。

これにより、コロナ禍が拍車をかける生活上の困難から、若者を助ける大きな効果があったと言えます。

今後は、若者から寄せられる住まいの相談が増えている現状を踏まえ、シェアハウスを増やしていくことと同時に、「共同生活が苦手」「生活コストを抑えた地方で展開」などニーズの多様化に応じた、広角的な住まいの運営を実施していく予定です。

 

(家のようにくつろげる居場所「サンカクキチ」)

(サポート付きのアルバイトの提供「サンカククエスト」)

(リーズナブルで生活サポートも可能なシェアハウス「サンカクハウス」)

 

(文責:広報公益委員会)