今回は、ソーシャルフットボールの運営組織「千葉『共に暮らす』フットボール協会(通称:トモフト)」が主催する練習会に伺ってきた模様をお伝えします。ソーシャルフットボールの取材は、コロナ禍前の2017年以前となります。
トモフトは、当時取材させて頂いたメンタル系フットサル・サークル「MKエフシー」その他の千葉県を拠点とするフットサル活動団体が集まって作られた協働体です。
取材当日は、夕方の部として『★特別★トモフトフットサル』が開催されました。大会を控えた千葉ダルクのフットサルチームとの合同練習会となりました。
トモフトは、千葉県内の「精神障がい者フットサルチームの取りまとめ」や「精神障がい者スポーツの普及」を目的として活動する「協会」として活動しています。
また、トモフト主催のカップ戦の開催やチームを編成して自ら対外試合に参加することも行っています。
トモフトの活動理念では、サークル活動を通じ、「地域での居場所づくり」「社会参加の継続」を参加する当事者や支援者が、主体性をもって一緒になり作っていくことを目指しています。
【ご協力頂いた方】
○千葉『共に暮らす』フットボール協会 理事長 佐々 毅 様
(NPO法人日本ソーシャルフットボール協会 理事長)
○千葉『共に暮らす』フットボール協会 副理事 降屋 守 様
(MKエフシー 代表)
【取材場所】
○千葉ポートアリーナサブアリーナ(千葉県千葉市中央区問屋町1−20)
【訪問日時】
○令和6年5月15日(水)18:00~
■トモフトとは?
●スポーツを通じて精神疾患・障害の当事者や専門職支援者が集う団体
トモフトは、千葉県で活動する複数のソーシャルフットボール団体(メンタル的な部分の障害や悩みを抱えた方・または関心を持っている人を中心に結成されたフットサル・サークル)が母体となって組織した協働体です。
主催するカップ戦の開催(千葉コルツァカップ・オープンリーグ)や、チームを編成して自ら対外試合に参加する活動も行っています。
●トモフトフットサル 事業概要
○主催:千葉『共に暮らす』フットボール協会
○設立:2015年(「コルツァカップ実行委員会」を拡大)
○代表者:佐々 毅 様(精神保健指定医/NPO法人日本ソーシャルフットボール協会理事長)
○活動内容:フットボールを通じた精神障がい者の社会参加・交流支援/コルツァカップ・オープンリーグの主催
○活動拠点:千葉ポートアリーナ等
○参加条件:だれでも可
■トモフト設立の背景と活動理念
●草の根で広がっていったソーシャルフットボール
「ソーシャルフットボール」の名称は、イタリアのサッカー文化(calciosociale)に由来していると言われています。
2011年に大阪の精神障がい者フットサルチームがローマ遠征の際にこの文化に触れ、その理念に敬意を表して、日本の精神障がい者フットボールに「ソーシャルフットボール」の名称を取入れ、国内の当事者団体協会「JSFA(NPO法人日本ソーシャルフットボール協会)」の名称としました。
トモフトの佐々毅理事長は、JSFAの理事長にも就任しています。千葉県においても、当事者や医療福祉専門職などの支援者の方々が、チーム作りから練習場所の確保などの課題に直面しながら「フットサルをやりたい」熱意は行動に繋がり、トモフトを含め現在では県内多くの団体やチームが活動しています。
その後、日本全国にソーシャルフットボールは広がりを見せ、競技人口は2,457名、チーム登録者2021名、登録チーム137(*)となっています。
*出典:一般社団法人 日本障がい者サッカー連盟(2019年3月現在)
●レクリエーションから競技へ
当事者の社会参加や、仲間との交流としての機能を果たしているソーシャルフットボールですが、トモフトではソーシャルフットボールを真剣勝負の出来る「競技」としての付加価値を高める活動としてカップ戦を主催し、向上心のある競技者の育成に力を入れています。
一方で、ソーシャルフットボールの競技人口の拡大には、初心者にも参加しやすい環境を創るべく、ビギナー向けスクールも積極的に開催しています。
●トモフトMVV(理念、行動計画、運営者の行動規範)
トモフトでは、昨年度改めて理念、行動計画、運営者の行動規範を策定しました。
【トモフトMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)】
ミッション |
フットボールを通じて 障がいのあるなしにかかわらず お互いを認め合う コミュニティづくりを目指す |
ビジョン |
・フットボールを気軽に行える環境を作る(スポーツ参加者) ・フットボールにかかわるさまざまな活動を支援する(スポーツ活動以外) ・人と社会の繋がりを促進する場を提供する(インクルーシブ活動) |
バリュー |
・Respect:尊重 お互いが生きて生活していることをたたえ合う ・Dialogue:対話 意見が異なっても聴き合い、話し合う ・Fair Play:公平 みんなが気持ちのいい、公正なふるまいをする ・Contribution:貢献 自分の価値ある体験を社会に生かす ・Challenge:挑戦 先入観や思い込みがないかを疑い、変化を恐れない |
■当日の模様
●大会直前の合同練習会
今回のトモフトフットサルは、日中に通常の練習会を行い、夕方には特別イベントとして千葉ダルク(一般社団法人千葉ダルク)との合同練習会を実施致しました。
千葉ダルクは、千葉市を拠点とした依存症回復者施設ですが、そちらのメンバーの有志の方からなるフットサルチームを作っており、当日は3部構成(1チーム5名の編成)での大人数での参加となり、総勢30名を超える人数での合同練習会となりました。
千葉ダルクは、栃木県宇都宮市で行われるソーシャルフットボール大会を目前に控えており、当日は熱気と緊張感が伝わっていました。
●今回の目標は「ダルクチームのビルドアップ」「けがをしない事」
ケガをしないことは、常日頃の練習会におけるメインテーマですが、今回は特別ミッションとして、大会前のダルクチームの強化を目指し、練習会の後半ではトモフトチームが試合形式での真剣勝負を受けて立つ形で展開していきました。
【当日のプログラム】
準備運動 |
みんなで輪になってストレッチ |
スポーツ鬼ごっこ |
ボールを使う前の体慣らし |
基礎練習 |
小チームに分かれたパス回し |
ウォーキング・フットサル |
歩きながら行うフットサルのミニゲーム |
練習試合 |
千葉ダルクVSトモフト(各チーム3部戦) |
クールダウン |
試合後のストレッチと後片づけ |
■課題と今後の展望
●コロナ禍における競技者人口の減少
2020年に発生した新型コロナウィルス感性症拡大の影響は大きいものがありました。度重なる緊急事態宣言下では、人々の交流が制限されたため、フットサルの様なスポーツイベントは活動の機会を失いました。
ソーシャルフットボールは、当事者の社会参加を促す大切なツールですが、医療・福祉従事者と当事者間の交流も制限され、一時は競技人口が減少する問題を抱えていました。昨年の活動制限緩和時期から現在まで、競技人口は回復傾向にあるとされています。
●「人材育成」「活動時間・資金の確保」
少子高齢化における我が国においては、全国的・全業種的に同様の課題が見られますが、トモフトにおいても同様の課題を抱えています。
団体の創設者や設立時主要メンバーの理念を直接伝えられるうちに、後継者を育てなければなりません。地域住民・企業等の幅広い理解と支援を得られるよう、各種媒体を活用しつつ情報発信していく計画です。
●気軽に体験できる機会を提供し競技者のすそのを拡大
ソーシャルフットボールの競技者人口を増やすためには、一方的な情報発信だけでは、効果が限定的となるため、トモフトではアウトリーチ活動に力を入れています。
日頃から連携している地域の医療機関や福祉事業所などに出向き、フットサルだけでなく、スポーツに関する出前講座を開催しています。
専門的な競技になじみのない方などが抱く心理的なハードルを軽減し、初心者でもできるだけ参加しやすいプログラムにするなどの工夫を凝らしています。
(文責:広報公益委員会)