広告代理業から不動産業へ。地域に必要とされる店舗を、テナントとともに

社名 テナントパートナー株式会社
代表 河村 彰さん
所属支部 多摩東支部
加入年 2019年

東京都武蔵野市吉祥寺にオフィスを構えるテナントパートナー株式会社。

テナントを専門に扱う、会員歴約6年(取材時)の不動産会社です。

代表取締役の河村 彰さん(かわむら あきら)さんは、広告代理店でWeb広告の営業職を経験後、不動産会社勤務を経て独立。

宅地建物取引士の資格を持ち、全国で店舗物件の紹介や出店サポートを手がけており、全日本不動産協会の研修やサポートを活用しながら事業を拡大してきました。

「広告代理業も不動産業も、マッチングするという点では同じ」

――不動産業界に転職したきっかけを教えてください。

前職は広告代理店で、製品やサービスを広めたい企業と、広告枠を売りたい企業とをマッチングするWeb広告の営業をしていました。

代理店なので競合他社も多く、価格競争も激しいので、どんなにいい提案をしていても、どんなに丁寧に営業をしていても、「御社よりもう少し安いところにお願いすることにした」と言われると、安売りで仕事をとる業界は正直面白くないなと感じていました。

業種こそ違うけれど、「売主と買主」「貸主と借主」をつなぐマッチングという不動産仲介の仕事の本質に魅力を感じたのと、何より人とのつながりを大事にするところに惹かれて転職しました。

――不動産会社に転職されてから苦労されたことはありましたか?

専門用語を理解するのはものすごく大変でした。

なので、お客様へは専門用語を噛み砕いて説明します。

それ以外だと、正直苦労というよりは、カルチャーショックを受けることばかりでした。

広告代理店で働いていた頃は、デジタルツールを使ってやり取りをしていたので、「物件の情報、FAXで送って」って言われたとき、いまだにそういう会社があることに衝撃を受けました。

ちなみに一番びっくりしたのは、「メールで送ってほしい」とお願いすると「メール、導入してないんだよね」って言われたことですね……。

――最初に手掛けた案件について教えてください。

この業界に入って最初に手掛けたのはとある大手コンビニチェーンでした。当時は、そのお客様から依頼された出店希望地リストを片手に、とにかく片っ端から飛び込み営業をしていきました。

そんな中、広い敷地に2軒家屋が建っている、ある地主さんのご自宅に訪問しました。

500坪くらいはあったかもしれません。2軒のうち1つは空き家になっているようでした。

実はそこは、私の出身中学校の真向かいにありました。

また私自身、中学時代 野球部に所属していたので、そのことを打ち明けたところ、「野球部員の打ったファウルボールが、今でもときどき飛んでくるんだよ」と怒っていらっしゃっていました。

それを聞いて、正直非常に切り出しにくかったのですが、「住んでいない方の家と土地を、コンビニエンスストアの土地としてお貸しいただけないでしょうか」と交渉したところ、最終的には、ご自宅の一部350坪を使わせていただくことになり、1つの家屋を取り壊してコンビニエンスストアを建てるという形で契約がまとまりました。

――開業前に何か不安はありましたか?また、集客で工夫したことがあると伺いました。

ゼロからのスタートだったため、案件の獲得と資金面に不安がありました。

克服するために、必死に仕事に打ち込みました。

集客に関しては、お金をかけて広告を出すことはせずに、ホームページのみで展開しています。

そもそも、店舗不動産自体が業界でもニッチな分野です。

弊社では駅前物件よりは、駐車場を備えたロードサイド物件の店舗の誘致を得意としています。

弊社のような企業は不動産業界でも少ないので、チェーン店を展開する企業や店舗物件の活用を検討している企業が検索したときには、自然と検索結果の上位に来ます。

そのため物件が大量に流通するわけではありませんが、本当に必要としてくれる層に刺されば十分というスタンスで、常にコンスタントに案件がある状態を保っています。

また、できるだけITを使って業務をシステム化したり、クライアントにヒアリングして、ニーズに沿った物件を紹介できるようにしたりといった工夫をしています。

Web広告営業時代に培った経験が活きていると感じますね。

印象に残る開業後の出来事――大手飲食チェーンの出店支援

――数ある不動産団体の中から全日を選んだ理由をお聞かせください。

入会金が安いことは1つの決め手でした。

また、知人から「全日には若い会員が多い」と聞いていたことも後押しとなりました。

全日に入会する前は、免許更新時に関わる程度のイメージでしたが、今では、実務や法務サポート、研修制度など、全日が提供する、充実したサポートのおかげで、安心して仕事ができています。

――全日のサポートメニューの中で、これはと思われたものを教えてください。

定期的な研修やセミナーを通じて法律改正の知識をアップデートできています。

弁護士と顧問契約を結ぶまでは、無料の法律相談を頻繁に利用していました。

――開業後、特に印象に残っている出来事やエピソードを教えてください。

全国で数百店舗を展開する大手飲食企業の店舗誘致をサポートしました。

出店を希望する企業からの依頼を受けて、地主さんに「ここにお店を出しませんか」という提案を続けましたが、ずっと門前払いでした。

ところが、なんという巡り合わせか、その土地は売却され、その土地を購入した会社からテナント誘致の依頼が舞い込んできました。

何度も地主さんのもとに通い、「店舗物件としてどうか貸していただけないでしょうか」とお願いし続けた執念が実ったというか。

そのときは本当に驚きました。結果、誘致した店舗は日本一の売上を達成するほどの成功を収めました。

もちろん、今のような成功例は当然ながら稀で、どんなに頻繁に通っても断られたり、冷たくあしらわれたりというケースの方が圧倒的に多いです。

それでも数を打っていれば、たまにはいいこともある。そんな感じですね。

――これまでのご経験で最もやりがいを感じた事例を教えてください。

テナント企業様から、売上に伸び悩んでいて撤退したい店舗がある、との相談を受けて後継テナントを誘致したところ、三方良しの結果につながったことです。

テナントは飲食店で、飲食業だと厳しい立地だったので自動車関連の企業を誘致したところ、以前より高い賃料で契約していただいた上に、非常に繁盛する店舗になりました。

契約ではもともと、「中途解約の際に違約金を地主さんに支払わなければならない」と定めておりました。

しかし新しいテナントを連れてきたことで、飲食店は違約金の支払いをせずに済み、新しいテナントからも地主さんからもとても感謝され、本当に三方良しの結果となりました。

各テナントの出店ニーズや物件の情報を常にストックしているので、「この場所で物件が出たらこの会社」という紹介先を数多く用意していることが、弊社の大きな武器だと思っています。

「あなたに相談してよかった」と言ってもらうために

――開業後、印象に残っている事例があれば聞かせてください。

開業後すぐにコロナ禍が到来し、出店ニーズは一気に減少しました。

チェーン店を展開する企業の多くは出店を見送ったり、店舗数を減らしたりする傾向にあったため、物件を紹介しても断られることがほとんどでした。

そんな中でも出店を続ける企業はありました。

その出店ニーズを徹底的にサポートすることでお客様に貢献できました。

それが同時に会社の経営を軌道に乗せることにも繋がりました。

この時期がなければ、今の会社は存在してないかもしれません。

――「御社にお願いしよう」と思ってもらえるために、工夫されてることはありますか?

たとえ契約に至らない場合でも、ご依頼いただいたこと全てに、何かしらプラスになる回答をしていきたいんです。

数ある企業の中から弊社を選んでいただいたのだから、「相談してみて良かった」と感じていただけるような対応を常に心がけています。

例えば、あるお客様(A様)から紹介されたお客様(B様)からもリピートをいただけるほどの関係を築きました。

弊社の仲介でB様は繁盛店を作ることができ、A様はB様から別の仕事も請け負うことに。

「あなたの会社に紹介してよかった」とA様から感謝されたのは喜ばしい事例でした。

――サラリーマン時代と比較して、働き方や時間に変化はありましたか?働き方の面で心がけていることはありますか?

サラリーマン時代よりは、家族との時間を多く確保できています。

サラリーマン時代は、別に強制されてるわけではなかったんですが、本当に夜遅くまで働いてました。

終電に乗れず、自転車で通勤していた時期もありましたが、今振り返ると非常によくない働き方をしていたなと思います。

今は子どもが寝た後でも仕事はできますし、時間に囚われて仕事をする必要もないので、非常にバランスは取れていると感じています。

会社としては、家族や従業員が幸せに暮らせる環境を作っていきたいです。業務量が増えても、業務委託やアウトソーシングを活用しているので、従業員を増やすとか会社を大きくすることは考えていません。

自分の目の届く範囲で、誠実な仕事をすることを大切に考えています。

何より、行動を起こすこと。人を大切にすること

――今後の事業展開や目標について教えてください。

現在は全国で店舗物件の紹介・出店サポートを行っており、首都圏だけでなく地方でも地域に必要とされる店舗を誘致していきたいと考えています。

また、自分が他業種からの参入者なので、同じ立場の人や若手の不動産業者が安心して活動できるよう支援していきたいです。

――他業界から不動産業への参入を考えている人へアドバイスをお願いします。

最初は本当に分からないことだらけでした。

宅建の試験勉強に取り組み、知識を増やしながらさまざまな経験を重ねていきました。

独立の際も、もう一度宅建のテキストを引っ張り出して学び直したほどです。

前職での広告代理業は、製品・サービスを広めたい企業と、広告枠を売りたい媒体社をマッチングしていました。

出店する場所や地域性といった特性をきちんと掴んでマッチングさせるところは、そのときに培ったスキルが活きていると感じます。

こんな感じで、前職での経験は活かせるところもあると思います。

ただ、不動産業にどう活かすかは人それぞれです。

不動産業界は人と人の関わり、何より行動を起こすことが大切です。

信頼関係を築ければ、チャンスはいくらでも作れますし、何も行動しなければ何も起きません。

突然奇跡が起きることもありません。

AIを始めデジタルの普及はこれからますます進みますが、結局は「人とのつながりを大切にすること」に尽きるのではないでしょうか。

――全日へ入会を検討している方へのメッセージをお願いします。

全日は、安心して業務に取り組めるサポート体制が本当に充実しています。

特に、ラビーネットの契約書類作成システムはシチュエーションごとにかなり細かく分かれているし、法令の改正にもキチンと対応してもらえているので、本当に便利ですしとても助かっています。

この業界、自分で仕事をどんどん取っていく人が大半だと思います。

まずは自分から行動することを大切にしてほしいです。

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