外国人の入居者と家主の「安心」をつなぐ八王子発の挑戦

| 社名 | 株式会社 TIC |
|---|---|
| 代表 | 武 文斉さん |
| 所属支部 | 多摩南支部 |
| 加入年 | 2021年 |
株式会社 TIC 代表取締役 武 文斉様 (多摩南支部)

東京都八王子市明神町の柿澤ビルに拠点を置く株式会社TIC、賃貸・売買仲介を中心に、地域とお客様に寄り添う不動産会社です。
代表の武 文斉(ぶ ぶんさい)さんは、中国出身の宅地建物取引士です。
学生時代に部屋探しで苦労した体験から不動産業界に入り、前職での実務経験を経て独立。
2021年11月に全日本不動産協会(以下、全日)へ入会し、2023年3月からは多摩南支部 教育研修副委員長としても活動されています(取材時)。
言葉の壁を越えて。助けられた経験から「助ける側」へ
――不動産業を開業したきっかけを教えてください。
留学生として来日した当時は外国人入居可の物件が少なく、住まい探しにとても苦労しました。言葉の壁もあって思うように気持ちを伝えられず、もどかしい思いをしたことも。
そんなとき、母国語で対応してくれる不動産営業の方と出会い、無事に物件の契約ができました。ほっとした気持ちと喜びは今でも忘れられません。
「かつての自分と同じように悩む、外国人の住まい探しをサポートしたい」その思いが高じ、就職先にも不動産業界を選びました。
新卒で入社した大手賃貸仲介会社では、接客や反響対応、契約書の作成、業務システムの操作方法などを丁寧に教えていただきました。当時の上司や同僚とは、今でも良いご縁が続いています。
――独立開業にあたり、どのような準備をされましたか?

不動産営業として経験を積む中で、次第に売買へチャレンジしたいという気持ちが芽生えました。しかし勤務先の案件は賃貸仲介が中心です。
新型コロナによる外出自粛の影響もあり悩みましたが、YouTubeで勉強したり、独立した先輩に相談したりしながら起業を準備。
決定的だったのは、全日東京多摩南支部との出会いです。
親身なサポートで勇気づけられ、2021年5月には、学生時代から慣れ親しんだ八王子で会社を設立、宅建免許を取得しました。
全日本不動産協会の魅力は費用・システム・そして「人」
――全日本不動産協会を選んだ決め手は何でしたか?
入会費用の安さ、同業者の紹介が不要だったなど、全日を選んだポイントは色々ありますが、一番大きいのは、「人」。
決め手は開業相談で感じた対応の温かさでした。
すぐに実務に活かせる法改正とインボイス制度の研修に加え、相談窓口や、支部ならではのきめ細かなサポートにもお世話になっています。
あるとき、入居者さんの不注意で、漏水が階下へ及んだことがありました。
支部へ相談したところ保険契約の見直しをすすめられ、最終的には火災保険の事故対応という納得感ある着地へ導くことができました。
――開業後、不安だったことはありますか?
開業当初は紹介できる物件が少なく、厳しい状況で不安を感じていました。
そんな中でも、前職の同僚に助けられたり、全日本不動産協会の多摩南支部長が、自社の管理物件の資料をたくさん送ってくださったり。
そのときは本当に心強く、温かさを感じました。
また、2023年3月には「役員になってみないか」とお声がけをいただきました。
外国人の私にはまったく想像もしていなかった話でしたので、本当に驚きました。
同時に、全日は国籍や性別に関係なく、誰もが平等に活躍できる舞台を提供してくださる団体だと心から実感しました。
――全日本不動産協会のサポートで役立っているものは何ですか?
賃貸借契約では外国人のお客様にも宅建業法の内容をきちんと説明しなければなりません。
全日本不動産協会(総本部)には、中国語・韓国語・英語で作成された契約書の説明資料があり、助けられています。
日常会話はできても、重要事項説明書や契約書には専門用語や法律表現が多く、正確な理解が難しいものです。
多言語に対応した資料で入居者さんへきちんと説明ができることは、大家さんにとっての安心感にもつながり、ありがたいですね。
誠実さと地道な努力|「郷に入りては郷に従え」の精神で築く信頼関係

――不動産業をしていて、嬉しかったことはありますか?
お客様から鍵の受け渡し時にいただくお菓子。大家様から届く野菜や果物。
こうした心のこもったやり取りは嬉しいものです。
とくにお客様からの紹介が続くときなどは、「誠実であること、信頼があってビジネスが成立する」という自分の信条が確信になる瞬間です。
――開業後、特に印象に残っている出来事やエピソードを教えてください。
開業間もないころは案件が少なく、とても不安でした。
そんなとき多摩南支部の支部長や前職からお付き合いのあった大家さんからお声がけいただいたことは、大きな励みになりました。
支部の方や前職の知人から声を掛けてもらうなど周囲に助けられる事が多く、感謝しています。
2023年に支部役員に推薦をいただいたときは驚きましたが、とても嬉しかったです。
支部のイベントでは会員の皆さんと中高尾へ行ってホタル狩りをするなどし、親睦を深めています。
全日の先輩や新規会員との連携をさらに深め、今後も「安全・安心な取引」をチームで実現していけたらと考えています。
「多文化共生」のため、きめ細かなサポートで実績を作る

――今の仕事で心がけていることは何ですか?
外国人が日本に住むと、文化の違いに戸惑う場面が多々あります。
代表的な例が「ゴミ出し」。中国ではゴミを分別する習慣がありません。
わざとでなくても「知らない」ということでトラブルに発展してしまいます。
そのような生活習慣の違いで戸惑ったときこそ、積極的なコミュニケーションが大切です。
不動産は、契約をしたから終わりというわけではありません。ごみ捨て場へ同行したり、ラベルの読み方を教えたりして彼らをサポートしています。
このような積み重ねで入居者からも大家さんからも信頼してもらえていると感じています。
「大切なのは誠実さです」|不動産業開業を実現した外国人経営者のストーリーは続く
――今後の事業展開について教えてください。
賃貸仲介で築いた関係が売買や管理の相談に広がり始めています。
今年2月には、念願だった売買案件を任せていただきました。
学生時代から慣れ親しんだ八王子で信頼関係を築き、管理戸数を増やしたいです。
ゆくゆくは海外在住の投資家からの購入・管理ニーズ、社宅などにも対応していきたいですね。
――目標はありますか?
入居者が安心して暮らせる環境を整えることです。
そして日本人の家主様や管理会社が「外国人入居も安心」と感じられる物件を増やし、真の意味で多文化共生を実現すること。
全日の先輩や新規会員との連携をさらに深め、「安全・安心な取引」をチームで実現していきたいです。

――不動産業への参入を考えている外国人経営者へアドバイスをお願いします。
日本での起業は決して簡単ではありません。
しかし、全日本不動産協会のように、国籍を問わず真剣に努力する人を応援してくれる環境があります。
私自身も、ここで多くの支えをいただき、学び、成長することができました。
ぜひ勇気をもって一歩を踏み出し、一緒に不動産業界を盛り上げていきましょう。





