不動産業を営む上で、「供託所」は欠かせない存在です。
不動産業開業に際し、1,000万円の営業保証金を供託所に供託するか、60万円の弁済業務保証金分担金を保証協会へ納めるかの選択肢があります。また重要事項説明の際も、供託所に関する説明が求められます。
供託所は不動産取引全般において重要な役割を担っています。本記事では「供託所」の役割について解説します。
「供託所」とは|法務局の一機関

供託所とは法務局内に設置された、供託金や証書を預けるための機関です。法律上の義務を果たすために利用され、主に取引の安全性確保や債権者・消費者の保護を目的としています。
不動産業において、供託所が関係する主な場面は以下の通りです。
開業時の提出書類
不動産業を開業する際、営業保証金を供託所に供託し、供託したことを都道府県知事または国土交通大臣に届け出る必要があります。
売買・賃貸の重要事項説明(35条書面)
宅地建物取引業者は、取引の際に供託所に関する情報を含めた重要事項説明を行う必要があります。
不動産業開業の「営業保証金」と「弁済業務保証金分担金」
※営業保証金について詳しくは以下のページをご参照ください
Tips – 営業保証金について
不動産業を開業する際、宅地建物取引業者が行った取引によって損害を受けた相手に弁済を行うための保証金が必要です。
開業時に必要な保証金は「供託所へ直接納める方法」と「保証協会を利用する方法」の2種類があり、それぞれ資金負担や手続きの違いがあります。
供託所へ寄託する「営業保証金」

営業保証金とは、宅建業者が定められた金額を供託所に預けることで、宅建業者に対する債権をスムーズに回収できるようにする仕組みです。
営業保証金の金額は、宅地建物取引業者が営業する際に供託しなければならない金額で、事務所の数によって異なります。
宅建業者が取引上の責任を果たせなかった場合、取引相手は供託された資金から弁済を受けることができます。
事務所の数 |
必要な営業保証金 |
主たる事務所(本店) |
1,000万円 |
従たる事務所(支店など) |
1ヵ所につき500万円 |
例を挙げると本店1ヵ所+支店2ヵ所の場合: 1,000万円 + (500万円 × 2) = 2,000万円 となります。
開業時に供託所への「営業保証金」を選ぶ理由

多くの宅建業者は、開業時の費用を抑えるために保証協会へ加入するのが一般的です。しかし以下のような理由であえて営業保証金の供託を選ぶケースもあります。
財務的な信用力を示したい
1,000万円(主たる事務所)を供託することで、資金力があることを示せます。
保証協会の入会審査に通らなかった
過去に宅建業法違反の経歴がある場合や、信用情報に問題がある場合などの理由で、保証協会から入会を拒否されることがあります。
過去の経歴や信用に懸念がある
過去に宅建業法違反の経歴がある場合や、信用情報に問題がある場合などの理由で、保証協会から入会をお断りされることがあります。
保証協会へ納付する「弁済業務保証金」

営業保証金を供託しない場合は、以下のいずれかの保証協会へ弁済業務保証金分担金を納付する必要があります。
- (公社)不動産保証協会
- (公社)全国宅地建物取引業保証協会
事務所の種類 |
必要な弁済業務保証金分担金 |
本店(主たる事務所) |
60万円 |
支店(従たる事務所) |
1ヵ所につき30万円 |
例を挙げると本店1ヵ所+支店2ヵ所の場合: 60万円 + (30万円 × 2) = 120万円 となります。
保証協会が法務局に供託し、その供託書の写しを都庁(東京都の場合)へ提出するため、開業の手続きの一部が簡素化されます。
開業時に保証協会への「弁済業務保証金分担金」納付を選ぶ理由

保証協会へ「弁済業務保証金分担金」を納付する場合は、費用を大幅に抑えられるだけでなく、協会が提供するさまざまな支援を受けられます。
解決業務
宅地建物取引業法第64条の5の規定により、取引の相手方より苦情申出があった場合、宅建業法に基づき、裁判手続きに拠らずして紛争の解決を図ります。保証協会は単に金銭の代理弁済をするだけでなく、適切な解決に向けた支援を行います。
具体的には調停委員のほか弁護士などの法律の専門家を交え、公正な第三者の立場から紛争の内容を精査し、円滑な解決を目指します。
これにより業者と取引相手の双方にとって公平で納得のいく解決が図られトラブルの長期化を防ぐことができます。
研修会の実施
保証協会では取引事故を未然に防ぐため、宅建業法や最新の法改正の情報を提供する会員向けの研修会を実施しています。
研修では、過去に発生した取引事故の事例を詳しく解説し、どのような対応が適切だったのかを学ぶ機会を提供します。
研修を通して取引リスクの軽減と適正な業務運営を促進し、会員の信頼性向上にもつなげています。
弁済業務
宅地建物取引業法第64条の8の規定により、会員である宅建業者と宅地建物取引業法に基づいた取引を行った相手方が、その取引によって生じた正当な債務が履行されなかった場合に、保証協会の認証審査に基づき弁済を受ける制度です。
取引相手が支払いを受けられず困難な状況に陥った際、保証協会が調停を行い、債権を認証した場合は弁済を実施します。
※なお、当事者の主張に争いがあり、申出人の債権が確定できない場合、認証審査の前に別途、当事者間で訴訟手続きにより債権を確定していただくことがあります。
手付金保証業務
売主・買主ともに一般消費者で、会員である宅建業者が客付媒介する取引において、買主が支払った手付金を保全するために「手付金保証付証明書」を発行し、売買物件の引渡し又は所有権移転登記が完了するまで保証を行う制度を提供しています。
買主が支払った手付金について、保証の範囲は1000万円又は売買価格の20%のいずれか低い方とし、保証の対象は手付金の元本のみとなります。
※制度利用には一定の制約があります。
指定流通機構に登録された国内の媒介物件で居住用建物、マンション(事業の用途を兼ねる住宅においては居住部分が2分の1以上。)及び居住用宅地(330㎡以上の宅地又は事業用地として取引されるものを除く。)を目的とする取引が対象になります。
手付金等保管業務
売買契約が何らかの理由で無効や解除となり、効力を失ったにもかかわらず、売主が買主に手付金を返還しない場合に、一定の規定額を保証する制度を提供しています。
売買契約が何らかの理由で無効や解除となり、効力を失ったにもかかわらず、売主が買主に手付金を返還しない場合に、一定の規定額を保証する制度を提供しています。
宅地建物取引業法第41条の2に規定する保全の必要性のある取引であり、取引の目的物は「完成物件」に限定しています。
会員である宅建業者が売主となる取引において、取引の相手である買主(非宅建業者の法人又は個人である消費者)から受取る手付金等について、売買物件の引き渡し又は所有権移転登記が完了するまで、当協会が手付金等を保管する制度を提供しています。
万一の場合、買主は質権を実行することにより手付金等取戻すことができ、取引の安全性が確保されます。※制度利用には一定の制約があります。
一般保証制度
倒産や経営悪化などにより、取引の相手方が支払った手付金や申込金、中間金などが返還されない場合に備えた保証制度を提供しています。
通常、これらの金銭は保全義務の対象外となることが多いですが、保証協会が一定の条件のもとで返還を保証することで、取引の相手方のリスクを大幅に軽減します。(保証協会と保障供託金を締結する必要があります。)
重要事項説明書(35条書面)の「供託所」には何を書く?

「供託所」は、契約時に宅建士が35条書面を読む「重要事項説明」にも登場します。
実際の35条書面をご覧いただくと、赤枠内に「供託所等に関する説明」という項目があり、下記の内容を記載します。
- 宅建業者が営業保証金を供託している供託所の名称・所在地
- 宅建業者が保証協会に加入している場合、その旨と保証協会の名称
登記管轄一覧表・供託所一覧表|法務局
重要事項説明書や契約書は民法や宅建業法に基づくことが前提で、記載内容に誤りがあると売主・買主双方から損害賠償請求を受ける可能性があります。
全日本不動産協会では会員様向けに、取引条件に応じた編集や差し替えが可能な無料で契約書ひな型を用意しました。
ExcelやWordに加え、出先で調査した内容を即座に反映できる「クラウド版」も用意され、スムーズな契約業務を支援いたします。
他にもある「供託所」の役割

供託所は、不動産取引や法的手続きにおいて重要な役割を担っています。以下のような場面で利用されることがあります。
家主が家賃を受け取らない場合
借主が供託所へ家賃を預けることで、支払い義務を果たすことが可能です。
競売や裁判手続きでの保証金供託
競売や訴訟手続きの際に必要な保証金を供託できます。
営業許可のための保証金供託
旅行業者や貸金業者などが営業許可を得る際、供託所に保証金を供託する必要があります。
公的機関としての適切な保管
供託された金銭や有価証券は、公的機関である供託所によって適切に保管されます。
供託所は不動産業のみならず、さまざまな業種や法的手続きにおいて信頼性の高い仕組みを提供しています。
供託|法務局
不動産開業は60万円の弁済業務保証金分担金で済む「保証協会」が一般的
開業時には、費用を抑えつつ多様なメリットを得られる保証協会への入会がおすすめです。
保証協会を選ぶときはぜひ、各種業務支援や研修会を提供している(公社)全日本不動産協会をご検討ください。
全日本不動産協会で開業するメリット
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