経営管理ビザを持つ外国人が宅建業を開業するまでの全手続きを解説
経営管理ビザを取得して、日本で宅建業の開業を考えている外国人経営者の方もいるでしょう。しかし、宅建業を始めるには在留資格だけでなく、宅建業免許の取得や保証協会への加入など、複数の手続きを正しい順序で進める必要があります。
本記事では、経営管理ビザの概要と2025年10月の法改正による要件変更、宅建業免許取得までの流れなど、外国人経営者が宅建業を開業するうえで押さえておくべき内容を解説します。
本記事は執筆時点(2026年6月5日時点)の情報をもとに作成しています。制度上の内容を解説していますが、実際の窓口での手続きでは運用が異なる場合があります。申請の際は、必ず各行政窓口にて最新情報をご確認ください。
外国籍の方が宅建業を開業するには「経営管理ビザ」と「宅建業免許」が必要
外国籍の方が日本で宅建業を開業するには、在留資格である「経営管理ビザ」と、宅建業の営業許可となる「宅建業免許」の両方を取得する必要があります。
法人として会社を設立したうえで免許を取得し、宅建業を営むのが基本の流れです。どちらか一方だけでは開業できないため、注意しましょう。
経営管理ビザとは
経営管理ビザ(在留資格「経営・管理」)とは、外国籍の人が日本で会社を設立・経営するために必要な在留資格です。在留期間は5年・3年・1年・6ヶ月・4ヶ月・3ヶ月の区分があります。
経営管理ビザを取得することで、新規起業・既存事業への参画や会社の経営、管理業務に関われるようになります。宅建業をはじめとする不動産事業を日本で営む外国人経営者にも、経営管理ビザは欠かせません。
経営管理ビザを更新する目安のひとつに、事業で安定した収益を得ていることが含まれており、開業後の経営実態を維持することも重要です。
なお、2025年10月16日の省令改正により取得・更新要件が大幅に厳格化されています。詳細は後述の「2025年10月施行|経営管理ビザの取得・更新要件の厳格化について解説」をご確認ください。
※在留期間や対象活動の詳細は変更される場合があります。最新情報は出入国在留管理庁にてご確認ください。
宅建業免許とは
宅建業免許とは、宅地建物取引業法(宅建業法)に基づき、不動産の売買・仲介・賃貸管理などを事業として行うために必要な許可です。1つの都道府県内のみで営業する場合は都道府県知事免許、2つ以上の都道府県にまたがる場合は国土交通大臣免許を取得しましょう。
申請の際には所定の書類を提出する必要があり、東京都ではオンライン申請にも対応しています(2026年6月5日時点)。経営管理ビザを取得していても、宅建業免許がなければ不動産取引業務を行うことはできないため、両方の取得を並行して準備することが重要です。
※申請手続きの詳細は変更される場合があります。申請前に東京都住宅政策本部へご確認ください。
宅建業免許に必要な書類一覧
宅建業免許の申請には、日本人・外国人を問わず共通して必要な書類と、外国籍の方のみ提出が求められる書類があります。必要書類はすべて揃えてから提出する必要があるため、事前に一覧を確認しておきましょう。
【日本国籍の方と共通する主な必要書類】
- 免許申請書
- 定款・登記事項証明書
- 事務所の使用権限を証明する書類(賃貸借契約書等)
- 専任の宅地建物取引士の資格証明書・登録証明書
- 役員全員と専任宅建士の略歴書(行政庁指定フォーマット・本人直筆サイン・押印)
- 法定手数料(33,000円)
【外国籍の方のみ必要な書類】
- 身分証明書の代替対応
日本人が本籍地市区町村で取得する「身分証明書」は外国籍の方には発行されないため、行政庁によっては誓約書等での代替対応が求められる場合があります。 - 在留カード・パスポートの提示
在留資格の種類・在留期限が審査対象となります。在留期限が申請時から短い場合は特に注意が必要です。 - 略歴書の記載
外国語表記の職歴・学歴を略歴書に記載する場合は、日本語への翻訳が必要となるケースがあります。
書類以外にも、専任の宅建士を外国籍の方が担う場合は注意が必要です。外国籍の方を専任の宅建士として登録するには、常に日本国内で設立した会社で勤務していることを証明する必要があります。海外在住の外国籍の方が専任の宅建士になることは認められていません。
※外国籍の方に必要な書類・手続きは行政庁によって異なる場合があります。事前に申請窓口へご確認ください。
2025年10月施行|経営管理ビザの取得・更新要件の厳格化について解説
2025年10月16日の省令改正により、経営管理ビザの取得要件が大幅に厳格化されました。改正の理由は、形式的な法人設立による在留資格の濫用を防ぎ、実体を伴った経営活動のみを許可する方針を明確にするためです。新しく経営管理ビザを申請する場合は、省令改正後の基準で準備する必要があります。
経営管理ビザの取得・更新要件に関する主な変更点
2025年10月16日の省令改正により、資本金・出資総額の要件が500万円から3,000万円に引き上げられたり、事業に従事する人に一定基準以上の日本語能力が求められたりするようになりました。詳細な変更点は、以下のとおりです。
引用:出入国在留管理庁「「経営・管理」許可基準に係る見直しについて」
官公署に提出する申請書等の書類の作成を専門家に依頼するときは、弁護士もしくは行政書士にお願いしましょう。弁護士・行政書士以外の人に報酬を払って書類の作成を依頼すると、行政書士法等に違反する可能性があります。
参照:出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について」
※法改正情報のため、定期的な最新情報の確認を推奨します。詳しくは出入国在留管理庁の公式サイトをご参照ください。
2025年10月16日時点で在留中の方には3年間の経過措置あり
2025年10月16日時点で、すでに経営管理ビザで在留中の方には、2028年10月16日までの3年間の経過措置が設けられています。
この期間中の更新申請ではすべての新基準を満たしていなくても、事業の実態・経営の健全性・公租公課の履行状況などを総合的に判断して更新の許可が下りる可能性があります。
ただし、経過措置期間中であっても事業の実態や経営者本人の実質的な関与は厳しく審査されます。問題が発生する前に、現状を確認したうえで増資や常勤職員の雇用、専門家との連携を早めに着手することをおすすめします。
※経過措置の運用は随時変更される可能性があります。最新情報は出入国在留管理庁にてご確認ください。
経営管理ビザを持つ外国人が宅建業を開業する流れ
宅建業免許を取得するには、60日~70日と長い時間がかかります。宅建業免許の申請と同時進行で、会社の設立や専任の宅地建物取引士の確保など宅建業免許申請の準備を進めましょう。ここでは、経営管理ビザを持つ外国籍の方が宅建業を開業する流れを紹介します。
開業の流れはこちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
STEP1:株式会社もしくは合同会社を設立する
初めに、株式会社もしくは合同会社を設立します。会社を設立するときは、定款の事業目的に「宅地建物取引業」と明記しましょう。
2025年10月改正後の新要件では資本金が3,000万円以上必要です。開業後の安定した経営を見据えて、会社設立前から資金計画を含む準備を丁寧に進めておきましょう。
STEP2:専任の宅地建物取引士(宅建士)を確保する
宅建業免許を取得するには、宅建業法に基づき、各事務所に従業者5名につき1名以上の専任の宅地建物取引士(宅建士)を配置することが義務付けられています。「専任」とは常勤であることを意味し、パート・兼業・他社との兼務は原則認められません。
外国人経営者本人が宅建士資格を持っていない場合は、宅建士の資格を保有している人を採用する必要があります。なお、宅建士試験は国籍・学歴・年齢を問わず受験可能ですが、受験時に使用する言語は日本語のみとなっています。
外国籍の方を専任の宅建士として採用する場合は、常勤できる在留資格を持っているか確認しましょう。就労ビザを保有していても、在留期限が直近に迫っている場合は常勤が難しい場合があります。
STEP3:宅建業免許を申請する
会社の設立・専任の宅建士の確保ができたら、次は宅建業免許の申請を行います。東京都の場合、申請先は東京都住宅政策本部で、令和7年1月6日よりオンライン申請にも対応しています。法定手数料は33,000円です。
外国籍の方は、日本人が本籍地の役所で取得する「身分証明書」が発行されないため、行政庁によっては誓約書等での代替対応が必要となります。
不明な点は、事前に窓口へ相談することをおすすめします。申請から免許証の発行まで、保証協会加入の場合で約1〜2ヶ月を見込んでおきましょう。
※申請手続きおよび必要書類は変更される場合があります。申請前に東京都住宅政策本部へご確認ください。
STEP4:営業保証金の供託または保証協会への加入を行う
日本では宅建業の営業を開始する前に、「営業保証金の供託」または「保証協会への加入」のいずれか行う必要があります。万が一、事業者が契約違反や損害賠償などの債務を果たせなかった場合でも、消費者がこの保証金から弁済を受けられるようにするためです。
営業保証金を直接供託する場合は、本店で1,000万円、支店は1店舗につき500万円が必要です。全日本不動産協会東京都本部(以下、全日)をはじめとした保証協会に加入する場合は、弁済業務保証金分担金が本店は60万円、支店は30万円で済むため、初期費用の負担を大幅に軽減できます。
保証協会は外国籍の方も加入できるところが多いので、事前に準備書類やサポートの内容について確認することをおすすめします。
「営業保証金の供託」と「保証協会への加入」の違い
不動産業を開業するときは、消費者を保護するために、「営業保証金の供託」と「保証協会への加入」のいずれか一方を選択する必要があります。それぞれの違いは、以下の表のとおりです。
| 営業保証金の供託 | 保証協会への加入 | |
|---|---|---|
| 概要 | 法務局に現金・有価証券を直接供託 | 宅建業保証協会に加入し、弁済業務保証金分担金を供託 |
| 必要金額 | 本店:1,000万円/支店:500万円 | 本店:60万円/支店:30万円 |
| 手続き | 供託所への直接手続き | 協会への入会審査・手続きが必要 |
| その他費用 | なし | 入会金・年会費などが別途必要 |
「営業保証金の供託」は初期費用が高額な分、手続きがシンプルで団体への縛りがありません。一方「保証協会への加入」は必要資金が大幅に抑えられるため、開業コストを重視する事業者に選ばれています。どちらを選ぶかは、手元資金の状況や開業スピードを踏まえて判断しましょう。
全日に入会することで加入することができる「公益社団法人不動産保証協会」も、保証協会のひとつです。保証協会への加入を検討するときは、ぜひお気軽にご相談ください。
経営管理ビザを持つ外国人が宅建業を開業する時の注意点
経営管理ビザを持つ外国籍の方が、日本で宅建業を開業・継続するうえで、特に注意すべき2つのポイントを解説します。
欠格事由に該当しないか気を付ける
宅建業免許を取得するには、宅建業法第5条に定める欠格事由に該当しないことが条件です。代表的な欠格事由は、以下のとおりです。
- 拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終えた日などから5年を経過しない者
- 宅建業法や暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律等に違反して罰金刑を受けて5年を経過しない者
- 免許取消処分を受けて5年を経過しない者
など
役員・政令で定める使用人(支店長や営業所長など)が該当する場合は免許を取得できません。
ほかにも、海外での刑事罰も欠格事由の判断に影響する場合があるため、不安がある場合は宅建業免許を申請する前に行政庁へ確認しましょう。在留資格の取消や強制退去処分歴がある場合も、審査に影響する可能性があります。
更新を継続するための経営実態を維持する
宅建業免許は、5年ごとに更新する必要があります。経営管理ビザを更新するときも、継続的に事業が行われているかが審査の対象になります。
審査対象になる主な書類は、決算書・法人税申告書・従業員の源泉徴収票です。売上がゼロの状態や休眠状態では、更新が認められない可能性が高まります。
2025年10月の改正以降は、事業の実態や経営者本人の実質的な関与状況の審査がより厳格化されています。経過措置期間中の方も含め、増資・常勤職員の雇用・税金や社会保険の適切な履行など、経営の健全性を維持することが重要です。
※更新審査の運用は随時変更される可能性があります。最新情報は各行政窓口にてご確認ください。
開業後も外国人経営者が宅建業で成果を出す方法
外国人経営者が営む宅建業者には、多言語対応や外国人顧客のニーズへの理解など、他社との差別化ができるポイントがたくさんあります。ここでは、開業後も外国人経営者が宅建業で成果を出す方法を紹介します。
外国人経営者ならではの強みを活かす
日本語や英語、母国語などの多言語対応は、外国人顧客が多い賃貸仲介や売買仲介のサポートをするときの場面で大きな強みになります。言葉の壁を気にせずスムーズに手続きを進められるのに加え、文化的背景への理解があることで、顧客からの信頼を得やすくなります。
また、母国とのネットワークを活かした海外投資家向けの不動産投資案件の仲介も、日本人経営者にはない差別化ポイントです。インバウンド需要が回復する中、民泊・短期賃貸といった周辺領域との連携も新たなビジネスチャンスとして注目されています。
令和7年11月に国土交通省が発表した「不動産登記情報を活用した新築マンションの取引の調査結果を公表」によると、東京都内の新築マンションを取得した人のうち海外(国外)に住所がある人の割合は、2024年(通年)の1.5%から2025年1~6月は3.0%へと増加しています。
東京23区で海外居住者が取得した物件を住所地の国・地域別にみると台湾が最も多く6割超を占め、中国・香港・シンガポールが続いており、海外からの取得ニーズの高まりがうかがえます。
外国人による日本の不動産の需要は高まっているため、外国人経営者ならではの強みをサービスに取り入れることで、安定した利益を獲得できるでしょう。
行政対応を忘れず、法令遵守で長期的な経営基盤を固める
日本で宅建業を長く続けるには、行政対応を忘れず、法律を守ることがとても重要です。たとえば、宅建業免許の有効期限は5年で、満了日の90日前から30日前までに手続きを済ませる必要があります。
ほかにも、重要事項説明や37条書面の記名は宅地建物取引士が担うことが義務付けられているため、適切に業務を進める環境・体制の整備が求められます。経営管理ビザをお持ちの方は、在留期限と更新申請のスケジュール管理も経営者自身が意識しなければなりません。
自社だけで法令等に対応するのが不安なときは、全日などの業界団体に加入するのもひとつの方法です。業界団体では定期的な法令研修や最新情報の入手もでき、安定した経営基盤づくりに役立ちます。
実際に東京都で宅建業を営む外国人経営者のインタビューを紹介
全日では、東京都で宅建業を営む外国人経営者のリアルな声を伺いました。ここでは、インタビューの内容を簡単にご紹介します。
中国出身の武文斉さん|株式会社TIC
中国出身で、現在は東京都八王子市で賃貸・売買仲介を中心に営む武文斉さん。留学生として来日した際に住まい探しに苦労した経験から、「同じ悩みを持つ外国人を助けたい」と不動産業界に参入しました。
株式会社TICを設立し、多言語対応や生活習慣のサポートを通じて、入居者と家主双方の信頼を獲得しています。全日の温かいサポートに支えられながら、多文化共生の実現を目指して活動している経営者です。
台湾出身の陳乃華さん|シティキャリアコンサルタント合同会社
台湾出身で、もともとは日本で旅行業を営んでいた陳乃華さん。旅行業を38年営んだのち、コロナ禍を機に不動産業界に参入しました。台湾と日本双方の文化・言語への理解の深さを強みに、外国人向けの賃貸・売買仲介やコンサル業務を展開しています。
「はっきり伝える」スタイルが日本人顧客にも好評で、現在は訳あり物件の活用など柔軟な発想で事業を拡大中です。全日の研修や会員ネットワークを活かしながら、着実に実績を積み重ねている経営者です。
まとめ|経営管理ビザを持つ外国人が宅建業を開業するために
経営管理ビザと宅建業免許は、どちらか一方だけでは宅建業を営むことができません。経営管理ビザと宅建業免許、それぞれの要件と手続きを正確に把握し、同時並行で準備を進めることが大切です。
2025年10月の省令改正により、資本金・雇用・日本語能力・経営経験など要件が大幅に厳格化されたことにも注意しましょう。現在すでに在留中の方には3年間の経過措置がありますが、増資や専門家との連携は早めに着手することをおすすめします。
東京都で不動産業を開業するなら全日本不動産協会東京都本部!
東京都で不動産業を開業するなら、全日本不動産協会東京都本部への加入がおすすめです。開業資金の負担を大幅に軽減できるほか最新の法改正や業界知識を学べる研修会が充実しており、契約書のテンプレートや業務支援システムも利用可能です。
千代田支部・中央支部・城東第一支部・江戸川支部・城東第二支部・港支部・世田谷支部・城南支部・新宿支部・渋谷支部・中野・杉並支部・豊島・文京支部・城北支部・練馬支部・多摩北支部・多摩中央支部・多摩東支部・多摩西支部・多摩南支部・町田支部がございます。
外国人経営者の方や、これから独立を目指している方も、まずはお気軽にご相談ください。入会の流れや必要書類については、以下のフォームよりお問い合わせいただけます。
村田 よしみ





