【宅建業開業】保証協会に加入しないデメリットとは?リスク・営業保証金・レインズについて解説
宅地建物取引業(以下、宅建業)の開業を考え始めると、「保証協会に加入する必要があるのか」という疑問を感じることもあるでしょう。
保証協会への加入は任意ですが、加入しない場合は営業保証金として1,000万円の供託が必要になります。ほかにも、レインズの利用やトラブル時のサポートの面で不便さを感じる場面があるかもしれません。
この記事では、保証協会とは何かをわかりやすく解説したうえで、加入しない場合のデメリット、営業保証金との比較、保証協会の選び方、加入手続きの流れなどを解説します。
保証協会とは?制度の全体像をわかりやすく解説
保証協会とは、正式には「宅地建物取引業保証協会」といい、宅建業者を会員(社員)とする団体です。まずは、この協会がどのような役割を担っているのかを解説します。
保証協会は消費者保護のために弁済業務を担う団体
保証協会の主な役割は、不動産取引で消費者が損害を受けたときに、損害を弁済することです。不動産の取引は金額が大きく、もし宅建業者が倒産して手付金を返せなくなったりすると、取引の相手方は多大な損失を受けます。
そこで保証協会では、会員から集めた弁済業務保証金分担金(以下、分担金)を供託所に預け、取引で生じた損害の弁済にあてる仕組みを整えています。
弁済業務のほかにも、保証協会は会員である不動産会社への研修、取引に関する苦情の解決、宅建業の健全な発展に向けた調査・啓発など、幅広い事業を行っています。保証協会は、消費者を保護しながら、会員の業務も支援する団体と言えるでしょう。
こちらの記事では、実際に保証協会に加入した方のインタビューを紹介しています。ぜひご覧ください。
国土交通大臣が指定する団体である
保証協会は、誰でも自由に名乗れる組織ではありません。宅地建物取引業法にもとづき、国土交通大臣から指定を受けた法人だけが「宅地建物取引業保証協会」として業務を行えます。なお、現在指定を受けている2つの保証協会は、いずれも公益社団法人です。
指定を受けた保証協会は、弁済業務の運営状況などについて国土交通大臣の監督を受けます。会員から集めた分担金を原資とする弁済の仕組みが公的な監督のもとで運営されているからこそ、消費者は保証協会の会員である宅建業者と安心して取引できるのです。
保証協会に加入しなくても開業できるのか
結論からいうと、保証協会に加入しなくても宅建業を開業できます。ただし、保証協会に加入しない場合は、営業保証金(以下、保証金)を供託することが求められます。
保証協会に加入するか否かにかかわらず、消費者保護のための金銭を確保する仕組みからは逃れられないことは留意しておきましょう。保証協会に加入せずに宅建業を開業するには、以下の順序を守る必要があります。
- 営業保証金を主たる事務所の最寄りの供託所(法務局)に供託する
- 供託した旨を免許権者である国土交通大臣または都道府県知事に届け出る
- 営業開始
供託と届出を済ませる前に営業を始めることはできず、順序を守らないと監督処分などの対象になります。
供託所については、こちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
保証協会への加入が不要なケース
宅建業の免許を必要としない事業を行う場合、保証協会への加入は不要です。具体的な事業内容としては、「自分が所有する物件を自ら貸主として賃貸する」ことが挙げられます。いわゆる「大家業」は原則として宅建業にはあたらず、免許も保証金も不要とされています。
逆に、宅建業に該当する事業は、規模の大小にかかわらず保証金制度の対象になります。宅地や建物の売買・交換・賃貸の媒介(仲介)や代理を、反復継続して業として行う場合は、保証金の供託か保証協会への加入が必須です。
保証協会に加入しないデメリット・リスク
保証協会に加入しないと、開業資金の準備や日々の業務、トラブル対応などで不利を抱える可能性があります。ここでは、保証協会に加入しないデメリットとリスクを解説します。
営業保証金1,000万円の供託が必要になる
保証協会に加入しないデメリットとしてまず挙げられるのが、高額な保証金の供託が必要になることです。保証金とは、宅建業者が取引の相手方に損害を与えた場合に備えて供託所に預けておく、消費者保護のための金銭です。
金額は、本店1,000万円、支店は1か所ごとに500万円と定められています。保証協会に加入しない場合、開業する人は全額を自分で用意して、供託所(法務局)に供託しなければなりません。保証協会に加入した場合の分担金との比較は、以下の表のとおりです。
| 保証協会に加入しない場合 | 保証協会に加入する場合 | |
|---|---|---|
| 本店(主たる事務所) | 1,000万円 | 60万円 |
| 支店(従たる事務所)1か所ごと | 500万円 | 30万円 |
| お金の預け先 | 供託所(法務局)へ直接供託 | 保証協会へ納付 |
ただし、保証協会に加入する場合は、分担金のほかに入会金や年会費がかかり、初期費用は本店でおおむね100万円前後かかります。それでも1,000万円の自己負担と比較すると、開業のハードルを大きく下げられます。
レインズを使うために費用が発生する
レインズとは、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営する、不動産会社専用の物件情報ネットワークシステムです。全国の物件情報や成約事例がまとめられており、宅建業の仲介業務には欠かせません。
レインズを利用できるのは、原則として指定流通機構の構成団体である業界団体(都道府県の宅地建物取引業協会や全日本不動産協会など)に加入した宅建業者です。
保証協会は業界団体とセットで入会する仕組みになっているため、保証協会に加入すれば、合わせて入会する業界団体を通じてレインズを使えるようになります。
加入しない場合も「会員外利用」という制度で使う方法はありますが、別途の手続きと費用が必要で、保証協会に加入している業者よりも手間がかかります。営業の土台となる物件情報にアクセスするために、コストが発生する点には要注意です。
レインズで物件情報の登録・検索をするときに時間がかかる場合がある
会員外利用でレインズを使う場合、物件情報の登録や検索を自社で自由に行えず、情報の検索や登録を依頼する必要が生じるケースがあります。
会員外利用事業者によるレインズへの物件登録や物件情報の取得については、各不動産流通機構によって取り扱いが異なります。そのため、自分のタイミングで即座に物件情報を確認・登録できず、業務スピードが落ちる可能性があるのもデメリットです。
不動産の仲介では、新着物件をいち早く把握して顧客に紹介したり、預かった物件を素早く市場に流通させたりすることが、成約の可否を左右します。
レインズに掲載されている情報へのアクセスに時間がかかると、集客と仕入れ(物件の確保)の両方で不利になり、競合他社に後れを取ることもあるでしょう。保証協会・業界団体に加入して自社で直接レインズを使える環境を整えておくのは、業務効率の観点からも重要です。
トラブル時の相談・法的サポートが受けにくい
取引トラブルが起きたときに頼れる相談先やサポートが少ないのも、保証協会に加入しないリスクのひとつです。
保証協会は、苦情の解決、会員向けの研修、弁済といった業務を担っています。会員であれば、取引で問題が生じたときは保証協会へ相談したり、法律や実務に関する情報提供を受けたりできます。
保証協会に加入していないと業界団体からのサポートを受けられず、万が一紛争が発生したときも基本的には自力で解決しなければなりません。不動産取引は高額で、考慮すべき法律も多岐にわたるため、経験の浅い宅建業者が単独で対応するのは大きな負担になるでしょう。
営業保証金の供託と保証協会への加入の違い
営業保証金の供託と保証協会への加入の違いは、用意するお金の金額だけでなく、還付の受け方や支援の充実度などたくさんあります。主な違いを、以下の表にまとめました。
保証金の供託と保証協会への加入の違い(本店の場合)
| 保証金の供託 | 保証協会への加入 | |
|---|---|---|
| 必要な金額 | 1,000万円 | 60万円 |
| 保証協会への入会金・年会費等 | 不要 | 必要 |
| お金の流れ | 宅建業者→供託所 | 宅建業者→保証協会→供託所 |
| 還付の受け方 | 相手方が供託所へ直接請求 | 保証協会の認証を経て還付 |
| 戻ってくる資金か | 廃業時に取り戻せる | 退会時に返還される |
| レインズ・研修等の支援 | 自力で対応するのが基本 | 受けられる |
保証協会に加入した場合でも、取引で損害を受けた相手方は、その宅建業者が会員でなかったとしたら供託すべき保証金の額を上限に還付を受けられます。たとえば本店のみの宅建業者なら1,000万円、本店に加えて支店を1か所持つ業者なら1,500万円が上限です。
会員が納める分担金は本店60万円と少額ですが、消費者は営業保証金を供託した場合と同額まで保護されます。少ない負担で高い保証を用意できるのが、保証協会に加入するメリットのひとつです。
保証協会に加入しない場合の開業資金の目安
保証協会に加入せず保証金を供託する場合、開業資金は保証金1,000万円が中心となりますが、実際にはそれ以外にも費用がかかります。本店のみで開業する場合の主な費目と目安は、次のとおりです。
| 項目 | 目安の金額 |
|---|---|
| 保証金 | 1,000万円 |
| 宅建業免許の申請手数料 | 26,500~90,000円 ※知事免許は33,000円(電子申請の場合は26,500円とする都道府県が多い)、大臣免許は登録免許税90,000円 |
| 事務所の開設費 | 数十万円〜 ※物件により変動 |
| 備品 | 十数万円〜 ※デスク、複合機、PC、看板など |
| 宅地建物取引士の設置に伴う費用 | 変動 ※専任の宅建士の人件費・登録関連費用など |
※金額は目安です。地域・物件・事業規模によって変わります。
支店が多いほど保証協会加入の節約効果は大きい
本店だけでなく支店(従たる事務所)を設ける場合、保証協会に加入するメリットはさらに大きくなります。保証協会に加入しない場合、支店1か所ごとに保証金500万円の供託が必要ですが、保証協会に加入していれば支店ごとの分担金は30万円です。
支店の数が多くなるほど、保証金と分担金の合計額の差は大きくなっていきます。多店舗で事業を展開することを考えている場合は、保証協会へ加入する方が資金面で有利になるといえるでしょう。
保証協会の種類と選び方
宅建業を開業するときに加入できる保証協会は、公益社団法人不動産保証協会と公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会の2つです。不動産保証協会は全日本不動産協会(以下、全日)と、全国宅地建物取引業保証協会は各都道府県の宅地建物取引業協会と、それぞれセットで入会する仕組みになっており、保証協会のみに単独で加入することはできません。
いずれも消費者保護を目的として弁済業務を担う公的な団体で、基本的な役割は共通していますが、加盟後にかかる費用や会員数の規模、地域ごとのサポート体制・研修内容などには違いがあります。
加入する保証協会を選ぶときは、次のようなポイントを比較するとよいでしょう。
保証協会を選ぶときの比較ポイント
| 比較ポイント | 確認したい内容 |
|---|---|
| 入会費用 | 入会金・年会費・分担金の合計。時期による割引の有無も確認する |
| 業界シェア・会員数 | 会員数の規模や全国的なネットワークの広さ |
| 地域のサポート体制 | 開業相談や事務所調査など、地域本部・支部の支援の手厚さ |
| 研修・情報提供 | 法定研修や実務セミナー、会員向けツールの充実度 |
入会費用の安さだけでなく、開業後に受けられる支援の内容もよくチェックすることが大切です。正確な入会費用や最新のサービス内容は、加入を検討している団体の公式サイトや窓口で確認することをおすすめします。
保証協会に加入する手続きの流れ
ここでは、保証協会への加入要件と手続きの流れを解説します。手続きについては全日本不動産協会東京都本部(以下、全日東京)を例に説明します。
保証協会への加入要件
全日東京に入会できるのは、次のいずれかに当てはまる方です。
- 東京都内で新規に宅建業を開業する方
- すでに保証金を供託して宅建業を営んでいる方
これから開業する方だけでなく、保証金を供託して開業した後に「やっぱり保証協会に加入したい」と考えている方も、全日東京に入会できます。全日東京に入会を申し込めるタイミングは、免許の種類によって次のように異なります。
- 都道府県知事免許の場合:都道府県への免許申請の直後から
- 国土交通大臣免許の場合:申請受付完了の通知後から
ただし、いずれの場合も、先に宅建業免許の申請を行っている必要があります。
申込みから加入完了までの大まかな流れと期間
全日東京の入会手続きは、おおむね次のような流れで進みます。宅建業免許の申請と並行して入会手続きを進められるため、開業までの時間を短縮しやすいのが特徴です。
- 免許権者(東京都知事)へ宅建業の免許を申請する
- 全日東京へ入会を申し込む(窓口・郵送・WEBフォームのいずれか)
- 書類審査と事務所調査を受ける(代表者や専任の宅建士の立ち会いが必要)
- 入会審査後、入会に係る費用と分担金を振り込む
- 免許通知の後、保証協会が分担金にもとづく弁済業務保証金を供託所に供託し、行政庁へ届け出る
- 免許証の交付を受け、社員資格証明書を受領して営業開始
手続きには書類審査や事務所調査が含まれるため、申込みから加入完了・営業開始までには一定の期間を要します。開業予定日から逆算し、早めに準備を始めることが重要です。
なお、審査の日程や必要書類は状況によって異なるため、具体的なスケジュールは協会の窓口へ相談することをおすすめします。
保証協会への加入を後回しにしがちな理由と対策
宅建業の開業準備では、事務所の確保や専任の宅地建物取引士の設置、免許申請書類の作成などが先行し、保証協会への加入手続きは後回しになりがちです。
しかし、入会には書類審査や事務所調査を含む手続きがあり、申込みから営業開始までに一定の時間がかかります。加入を後回しにすると、開業予定日に間に合わず、営業のスタートが遅れてしまうかもしれません。
宅建業を開業するときは、スケジュールを立てる段階で保証協会への加入を「開業に必須の手続き」として組み込み、宅建業免許の申請と並行して早めに着手することが大切です。
全日東京では、都道府県知事免許の場合は宅建業免許の申請直後から、国土交通大臣免許の場合は申請受付完了の通知後から、入会を受け付けています。
保証協会への加入に関するよくある質問
ここでは、保証協会への加入に関するよくある質問にお答えします。
保証協会に入らなくても宅建業は開業できますか?
はい、保証協会に入らなくても宅建業は開業できます。ただし、保証協会に加入しない場合は、本店1,000万円・支店ごと500万円の保証金を最寄りの供託所(法務局)に供託し、その旨を免許権者に届け出たうえで営業を開始する必要があります。
保証協会に加入しないことで、開業時の資金負担が大きくなる点に注意が必要です。
不動産業の開業については、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
営業保証金や分担金はあとで戻ってきますか?
どちらも、廃業や退会などの際に所定の手続き(一定期間の公告など)を経て返還されます。ただし、営業を続けている間は預けたままとなり、自由にお金を引き出して事業に使うことはできません。
保証協会の入会にかかる費用の総額の目安はいくらですか?
分担金は本店で60万円ですが、これに加えて入会金や年会費などがかかります。加入する団体の構成や入会時期によって変わりますが、本店の場合で総額100万円前後が目安です。
最新の金額や割引の有無は、加入を検討している保証協会の公式サイトや窓口で確認してください。
個人事業主でもレインズは閲覧できますか?
はい、個人事業主でも、宅建業免許を取得して指定流通機構の構成団体(業界団体)に入会すれば、レインズを利用できます。
レインズの利用要件は宅地建物取引業者であることで、法人か個人事業主かは問われません。一方、宅建業者でない一般の方が直接検索・閲覧することはできません。
まとめ|宅建業を開業するならぜひ保証協会への加入を検討してみて
保証協会への加入は義務ではないため、保証金を供託して宅建業を開業することも可能です。しかし、保証協会に加入しない場合は、本店に1,000万円の保証金が必要になったり、トラブル時のサポートを受けにくかったりと、さまざまなデメリットがあります。
保証協会に加入すれば、1,000万円の保証金が分担金60万円で済みますし、レインズの利用や研修などのサポートも受けられます。開業資金を抑えつつ業務の土台と安心を整えられるのが、保証協会に加入する魅力です。
東京都で不動産業を開業するなら全日本不動産協会東京都本部!
東京都で不動産業を開業するなら、全日本不動産協会東京都本部への加入がおすすめです。開業資金の負担を大幅に軽減できるほか最新の法改正や業界知識を学べる研修会が充実しており、契約書のテンプレートや業務支援システムも利用可能です。
千代田支部・中央支部・城東第一支部・江戸川支部・城東第二支部・港支部・世田谷支部・城南支部・新宿支部・渋谷支部・中野・杉並支部・豊島・文京支部・城北支部・練馬支部・多摩北支部・多摩中央支部・多摩東支部・多摩西支部・多摩南支部・町田支部がございます。
不動産業界での独立・開業をお考えの方は、まずはお気軽にご相談ください。入会の流れや必要書類については、以下のフォームよりお問い合わせいただけます。
村田 よしみ





