不動産の仕入れ営業とは?業務の内容や女性経営者になるメリットを解説

不動産の「仕入れ営業」は、戸建て・マンション・土地などの物件情報を集め、調査や条件交渉を経て、自社で物件を取得する契約までを進める仕事です。会社が扱う物件を決める出発点になるため、不動産業界のなかでも中心的な役割を担います。

近年は、仕入れ営業として活躍する女性や、その経験を土台に自分で会社を持つ女性も増えています。本記事では、仕入れ営業の仕事の内容、実務で意識すると良いこと、独立・開業などについて解説します。

不動産の仕入れとは

不動産の仕入れとは、不動産会社が自社での開発・再販・賃貸運用などを目的として、物件を取得する業務です。良い物件を安く仕入れることが、会社の収益や事業の成否を左右し、「不動産業界の花形」と呼ばれることもあります。

不動産会社で働く方だけでなく、不動産業での開業を考えている方のなかにも、女性でもできるのか、未経験でも成果が出るのかが気になっている方は多いでしょう。

不動産の仕入れには、インターネット上にない情報を掴む情報収集能力や、売主との価格交渉力、法規制を正確に把握する専門知識などが求められます。身につけるべきことはたくさんありますが、不動産会社の事業の出発点になる、非常にやりがいのあるポジションです。

不動産の仕入れ営業の仕事内容

仕入れ営業は、物件情報の収集から契約・引き渡しまでを一貫して担うのが特徴です。ここでは、主な仕事内容を4つ紹介します。

物件情報の収集

仕入れ営業の仕事は、物件情報を集めるところから始まります。レインズ(不動産流通標準情報システム)や業者間ネットワークの活用、他社の営業担当者からの紹介、地主さん・家主さんへの直接アプローチなど、情報を得られるルートはさまざまです。

インターネットに公開される前の情報をどれだけ早く掴めるかが、仕入れ営業の腕の見せどころです。そのため、デスクワークだけでなく、販売会・内覧会への参加や取引先への挨拶回りなど、外に出て人と会う時間も多くなります。

物件調査・査定

物件情報を得たら、現地調査と机上調査を行い、仕入れる価値のある物件かどうかを見極めます。登記簿や法規制の確認、建物の状態のチェック、周辺相場の調査などを通じて、利益を確保できる取得価格の上限を見極めます。

調査の精度は、そのまま会社の損益に直結します。具体的な調査項目は、後述の「不動産の仕入れ時に行う「物件調査」でチェックすること」をご覧ください。

売主との条件交渉

査定結果をもとに、売主と価格や引き渡し条件を交渉します。単に安く買うことを目指すのではなく、決済時期の調整や残置物の扱いなど、売主の事情に寄り添った提案を行い、双方が納得できる着地点を探るのが、この仕事の難しさであり面白さです。

丁寧なヒアリングで売主の本音や事情を引き出せる人ほど、良い条件で物件を仕入れられる傾向にあります。

契約・決済・引き渡し

条件がまとまったら、契約書や重要事項説明書の内容を確認し、契約を締結します。契約後も、測量や残置物の撤去、融資の手続きなど、決済・引き渡しまでのタスク管理が続きます。

1つの案件が完了するまでの期間は、数週間から数か月に及ぶこともあります。社内の宅地建物取引士(以下、宅建士)や金融機関、司法書士など、多くの関係者と連携しながら丁寧に手続きを進めていきます。

不動産の仕入れの基本|戸建て・マンション・土地のチェックポイント違いとは

不動産の仕入れの難しさは、物件の種類ごとにリスクの出方が異なることです。たとえば、戸建てで価格が安いとき、その理由がリフォームで直せる範囲なのか、再建築不可のように改善できない致命傷なのかを見極められるかで、仕入れの成否が左右されます。

戸建て・マンションの仕入れで押さえるべきポイント

戸建てとマンションは、不動産の仕入れでよく扱う物件です。同じ再販や賃貸運用を狙う場合でも、戸建てとマンションでは見るべきポイントが異なります。

戸建てとマンションの仕入れの違いは、以下のとおりです。

物件の種類 戸建て マンション
主なリスク 建物不具合・再建築不可・近隣問題 管理不全・積立不足・規約制限
優先して確認すること 構造・雨漏り・シロアリ・接道・再建築 管理状況・積立金・修繕計画・管理規約・専有部の状態
収益の作り方 リフォーム・用途変更・再販設計 リノベーションによる再販・賃料改善

戸建ては個体差が大きく、雨漏り・傾き・シロアリ・増改築の履歴を現場で見抜けるかが成否を分けます。マンションは、管理組合の運営や修繕積立金、管理規約といった「共同体としてのルール」が価格に直結します。

また、リフォームのしやすさにも違いがあります。戸建ては自由にリフォームをして価値を上げやすい反面、解体して初めてわかる想定外の工事が出やすいのが難点です。

マンションは管理規約や構造上の制約で専有部に手を入れられる範囲が限られ、築年数が古い場合は給排水管の更新など、工事の負担が大きくなる場合があります。

土地・用地仕入れ、用地募集での注意点

土地は建物がないぶん、仕入れの流れもシンプルに見えやすいですが、実は「その土地に、どんな建物をどれだけ建てられるか」がそのまま価値を左右します。仕入れ営業は、初めに次のような法規制を調べ、建物を建てられるかを確認します。

  • 用途地域(住宅や店舗など、建てられる建物の種類の制限)
  • 建ぺい率・容積率(敷地に対して建てられる建物の広さ・階数の上限)
  • 高さ制限
  • 道路種別(接している道路が建築基準法上の道路か)
  • セットバック(前面道路が狭い場合に敷地を後退させる必要)
  • がけ条例(がけの近くで建築が制限される規制)
  • 農地法(農地の売買や転用に許可が必要な規制)

あわせて現地では、面積・接道・間口・高低差・ライフラインの引込状況に加え、隣地との境界標・越境物・擁壁の状態を確認します。特に境界が未確定だと正確な面積が出ず、いくらで仕入れるべきかを計算できません。

販売会・内覧会で確認するポイント

販売会や内覧会では、物件の状態だけでなく、売り方や現場の温度感、どのような客層がどう反応しているかを確認できます。販売会や内覧会でチェックするのは、次のような点です。

  • 来場者の属性(家族層・単身・投資家)
  • 質問内容(価格交渉か、生活動線か)
  • 滞在時間(人気度の目安になる)
  • 近隣の雰囲気
  • 騒音
  • 日当たり
  • 臭い(周辺の施設や排水の影響が出ることがある)

販売図面の表現があいまい、重要事項の説明が薄い、担当者が質問をはぐらかすといったときは、問題が隠れている可能性があります。現場で覚えた違和感は、後から必ず裏を取ります。

事業形態ごとの仕入れ時の確認項目とリスクの違い

不動産の仕入れは、開発・買取再販といった事業形態によっても、確認すべき項目やリスクが異なります。ここでは、開発と買取再販の仕入れ時の確認項目とリスクの違いを解説します。

開発

開発とは、土地や古い建物を取得し、造成や建築を経て新しい物件を生み出す事業形態です。戸建ての分譲や賃貸アパートの建築など、物件そのものを造り上げて売る(または貸す)ビジネスモデルが該当します。

開発で使用する物件を仕入れるときは、次のようなことを確認します。

  • 開発許可・建築確認などの行政手続きの難易度
  • 近隣住民の同意の要否
  • 地盤調査等の実施もしくは費用試算

開発では、地盤改良や引込工事などで費用が膨らんだり、工期が延びたりするリスクがあります。取得費や工事費を先に支払い、完成して売れるまで収入が入らないため、資金繰りと工程管理が重要です。

買取再販

買取再販とは、既存の物件を一度買い取り、リフォームや整備を施して再度市場に売り出すビジネスモデルです。売主から直接買い取る場合は仲介手数料が不要なぶん交渉の余地が生まれやすく、仕入れ時は次の点を確認します。

  • 見落とすと取得後に費用がかさむ不具合はないか(雨漏り・シロアリ・傾きなど)
  • エリアの需要・競合物件
  • 価格設定の妥当性

主なリスクは、取得前に見えていなかった不具合による工事費の増加や売却の長期化です。解体して初めて分かる劣化も多いため、仕入れ前にホームインスペクションで状態を把握しておくと、想定外の事態を避けられます。

不動産の仕入れ時に行う「物件調査」でチェックすること

仕入れには、物件や事業形態に共通して重要な視点があります。それが法務・建物・収支・エリアの4つの領域です。ここでは、4つの領域それぞれで確認すべきポイントを紹介します。

法務チェック|権利関係・境界・既存権利

法務チェックでは、その物件を「誰が・どんな権利関係のもとで持っているか」を確かめ、買ったあとに所有権や利用に支障が出ないかを見ます。

法務関連で発生しやすいトラブルと、トラブルを防ぐために確認すべき項目は、以下の表のとおりです。

発生しやすいトラブル
  • 所有者・共有者がわからない
  • 抵当権・差押え・地役権・賃借権などの権利トラブル
  • 越境・境界未確定などの境界トラブル
確認項目
  • 登記簿:所有者、共有者、抵当権、仮登記の有無などを確認
  • 境界:境界標・確定測量・越境の有無
  • 道路:接道状況、私道負担、通行掘削承諾の有無
  • 既存の権利:賃貸借、使用貸借、地役権、占有者の有無

特に土地は境界標の有無と、確定測量の実施状況が重要です。契約してから対処するのは大変危険なので、契約前に権利関係・境界・既存権利を詳細に確認する必要があります。

建物チェック|構造・築年数・耐震・修繕履歴

建物チェックでは、どれだけ手を入れる必要があるか、安全性や資産価値に関わる問題がないかを見きわめます。見えにくい部分に不具合が潜むため、見た目のきれいさだけでは安心できません。

建物に発生しやすいトラブルと、トラブルを防ぐために確認すべき項目は、以下の表のとおりです。

発生しやすいトラブル
  • 雨漏り跡
  • 床の傾き
  • 基礎のクラック(ひび割れ)
  • シロアリ
  • 配管の劣化
確認項目
  • 亀裂や雨漏りなどの不具合(瑕疵)の有無
  • 増改築の有無
  • 耐震性能
  • 専有部分と共有部の状態(マンションの場合)
  • 修繕積立金の積み立て状況(マンションの場合)

耐震性能は、建築確認日が1981年(昭和56年)5月31日以前の「旧耐震基準」か、同年6月1日以降の「新耐震基準」かで、融資の条件が変わることがあります。旧耐震の物件は担保評価を低く見られ、融資額や期間が抑えられる場合があります。

修繕履歴のない物件は、手付かずの不具合の所在をたどれず、取得後の修繕費を見積もれません。価格が安く見えても、想定外の出費が発生する可能性があります。

収支・価格チェック|利回り・想定賃料・収益シミュレーション

仕入れの判断では、その物件を賃貸に出すのか、修繕して売却するのかで、見るべきお金の項目が変わります。

賃貸で保有するなら利回りが軸になりますが、利回りだけで仕入れると、固定資産税・管理費・修繕費など保有中の費用を見落としがちです。再販なら、取得や工事の費用を売値でどこまで回収できるかが軸になります。

収益性を試算するときに確認すべき項目と、発生しやすいトラブルは以下のとおりです。

確認項目 発生しやすいトラブル
取得・工事 取得時の諸費用(仲介手数料・登録免許税・不動産取得税など)、リフォーム・リノベ費用 工事費の見積もりが甘く、利益が圧迫される
賃料 成約事例・競合物件・募集期間 募集賃料を鵜呑みにする
費用 税金・管理・修繕・空室・広告 原状回復・更新費・保険の確認漏れ
融資 金利・期間・自己資金・諸費用 融資が否決されても白紙解除できない
出口 売却想定価格・売却期間、再販時の諸費用(仲介手数料・売却益にかかる税) 相場の下落を無視、再販時の費用を織り込まない

あわせて、金利上昇や景気悪化で売値や賃料が下振れしても持ちこたえられるかまで試算しておくと、採算を数字で説明でき、交渉での信頼にもつながります。

エリア調査|周辺環境・需要・駅距離・エリア特性

エリア調査では、再販・賃貸したときに買い手や借り手がつくエリアかを見極めます。同じ「徒歩10分」でも、街の需要や将来性によって売りやすさ・貸しやすさは大きく変わるためです。

エリア調査をするときは、以下のような項目を確認します。

  • 購入・入居する人のターゲット層(単身・ファミリー・学生・法人など)
  • 近隣物件の成約単価と直近の値動き
  • 同じエリアの売り物件・貸し物件の供給量(多すぎると出口で競合する)
  • ハザードマップでの浸水想定・土砂災害警戒区域や、過去の被災履歴
  • 環境的瑕疵になりうる要素(嫌悪施設、事件事故の履歴など、価格に響く事情)
  • 再開発・新駅・路線延伸など、将来の資産価値に関わる計画

現地には時間帯を変えて複数回足を運び、日中と夜間の人通りや騒音まで確かめ、データと現地の肌感を突き合わせて判断します。

不動産営業で仕入れ先を開拓する方法

良い物件を仕入れられるかは、物件を見る力と同じくらい、「良い情報がどこから入ってくるのか」で決まります。そのため、仕入れ営業の仕事は、物件そのものを探す前に、質の高い情報が集まってくる人間関係を築くことも重要です。

他の不動産会社・不動産営業マンと信頼関係を作る

良い物件情報が入るルートのひとつが、他社の担当者です。関係ができているほど、表に出る前の情報を早く、優先的に共有してもらえます。

情報を回す側が選ぶのは、「すぐに、確実に話をまとめてくれる」と思える相手です。次のような積み重ねが評価につながります。

  • 連絡をもらったら当日中に返し、すぐに動けない場合も一報を入れる
  • 紹介された物件が見送りになったときも、理由と次に期待する条件を添えて返す
  • もらうばかりでなく、自分がつかんだ情報も共有し、情報交換ができる相手になる

あわせて、NG条件や買える価格帯、決済までのスピード感など、判断の軸を絞った希望条件を日頃から伝えておくと、条件に合う情報が集まりやすくなります。

用地募集・現地販売会・内覧会に参加する

用地募集・現地販売会・内覧会は、現地の状況を確認するだけでなく、地主さんや家主さんと関われる貴重な機会です。

用地募集とは、土地の所有者が活用・購入してくれる会社を探して買い手を募る案件です。「相続で困っている」「空き家の管理が負担」といった事情をくみ取り、売り込みよりも相談を受け止める姿勢で向き合える人ほど、任せてもらいやすくなります。

一方、現地販売会や内覧会は、他社の販売現場に足を運んで情報を拾う場です。近隣住民への挨拶や雑談から、新たな売り情報につながることもあります。

ただし、個人宅への訪問や夜間の対応には配慮が必要です。訪問の時間帯や連絡体制は会社のルールに従い、単独での無理な行動は避けましょう。

業者間ネットワークを活用する

不動産の仕入れ営業では、情報を掴む早さだけでなく「裏取り」も重要です。裏取りとは、得られた情報が本当に正しいか、別の情報源や証拠に当たって真偽を確認することです。

レインズ等で公開されている情報は同業他社も見ているため、未公開の情報をどれだけつかめるかで、仕入れられる物件の幅が変わります。業者間から入る情報は売却が決まる前の話も多いので、その地域で長く営業している会社など、事情を知る相手に当たって確かめます。

トラブル回避につながる!交渉から契約までの実務の流れ

物件の情報を集め、調査を経て仕入れの見込みが立つと、商談、契約、決済へと進んでいきます。ここでは、実際にどのような流れで仕事が進むのかを、商談の準備から契約後のフォローまで順に解説します。

1.提案・商談の準備

仕入れの提案・商談をするときは、根拠をもとに話を進めるために、以下のような情報を集めたうえで商談に臨みます。

  • 相場の根拠(過去の成約事例、路線価、賃料相場など)
  • リスクの根拠(修繕の見積もり、測量費の発生など)
  • スケジュール(契約~決済までの流れ)

商談では「この価格なら買える」ではなく、「この条件なら売主にもメリットがある」という視点で交渉します。早期の決済や残置物ありでの引き渡しなど、価格以外に提示できるものは多くあります。

2.契約の締結

商談がまとまり、契約書を作成する段階になったら、契約を結ぶ前に次のような項目を確認します。

  • 契約不適合責任:免責範囲と期間、対象(雨漏り・シロアリ等)
  • 境界・越境:明示の有無、是正負担、覚書の有無
  • 引渡し条件:現況渡し、残置物、測量、解体の範囲
  • 解除条項:ローン特約、手付解除、違約金、停止条件

仕入れでは、引き渡し後の瑕疵(欠陥)への売主の責任を免除する特約が付くことが少なくありません。この場合、修繕費は自社負担となるため、将来の修繕費用を見込んで仕入れ価格を決められるかで採算が変わります。

また、口頭の約束はすべて書面に残し、「言った」「言わない」のトラブルを防ぎます。契約書と重要事項説明書は、早めに社内の宅建士へ確認を依頼しておくと安心です。

3.契約後のフォロー・成果管理・クレーム対応

契約から決済・引き渡しまでは、複数の業務が同時に進みます。ひとつでも決済日に間に合わなければ、違約や損害賠償に発展することもあるため、タスク管理表で期限と担当を明確にして進めます。

契約後に行う業務は、以下のとおりです。

  • 物件の測量
  • 越境の是正
  • 残置物の撤去
  • 賃借人への対応
  • 管理会社との引継ぎ
  • 融資の手続き

引き渡し後に「聞いていた話と違う」といった申し出を受けたときは、回答を急がず、事実関係と契約書・覚書を照らし合わせて対応範囲と期限を伝えます。早めに上長や法務担当者へ共有しておけば、社内で対応を判断できます。

仕入れの判断前に確認したいチェックリスト

ここまで解説したポイントを、仕入れの判断前に確認できるチェックリストにまとめました。契約を急ぐ前に、以下の項目を1つずつ確認しましょう。

チェック項目
法務 □ 登記簿で所有者・共有者・抵当権・仮登記の有無を確認した
□ 境界標・確定測量・越境の有無を確認した
□ 接道状況・私道負担・通行掘削承諾を確認した
建物 □ 雨漏り・傾き・シロアリ・基礎のクラックの有無を確認した
□ 増改築の履歴と耐震基準(新耐震・旧耐震)を確認した
収支 □ 取得時の諸費用・工事費まで含めて収支を試算した
□ 税金・管理費・修繕費など保有中の費用も見込んだ
□ ローン特約(融資否決時の白紙解除)の有無を確認した
□ 出口(売却想定価格・売却期間)まで試算した
エリア □ 時間帯・曜日を変えて複数回、現地を確認した
□ ハザードマップで災害リスク(浸水・土砂など)を確認した
契約 □ 契約不適合責任の免責範囲と期間を確認した
□ 口頭の約束をすべて書面化した

加えて、立場ごとに意識しておきたいことも異なります。

立場 意識すべきこと
経営者・管理職 □ 訪問時間・連絡体制など、担当者が安全に動ける社内ルールを整備する
未経験の担当者 □ 違和感を覚えた案件は1人で判断せず、上司や宅建士に相談する
独立を目指す方 □ 案件ごとの判断理由を記録し、自分の「買わない基準」を言語化しておく

女性が不動産会社の経営者になるメリット

不動産営業は男性が多い印象を持たれがちですが、仕入れ営業は人との関係づくりと丁寧な調査が成果につながる仕事です。体力や勢いだけで進む仕事ではないため、目指す女性も増えています。

経験を積むうちに、自分で会社を持ちたいと考える人も少なくありません。経営者になれば物件を選ぶ基準も時間の使い方も自分で決められ、仕入れ営業で培った目利きやネットワークが経営の土台になります。

生活者としての視点を仕入れ判断に活かせる

学区や保育園の評判、スーパーまでの道のり、夜道の明るさなど、「実際にここで暮らしたらどうか」という目線で物件を評価できることは、仕入れ判断の精度に直結します。

たとえば、ファミリー向け物件なら「通学路に信号のない交差点が多い」、女性の単身者向け物件なら「駅からの帰り道が暗い」といった気づきが、買ってはいけない物件の見極めにつながります。

経営者として仕入れの最終判断を下す立場になれば、生活者の視点をそのまま自社の仕入れ基準にできます。担当者として意見を伝えるのとは違い、会社の方針として打ち出せるのは経営者ならではです。

働き方を自分で決められる

経営者になると、営業時間・対応ルール・休暇の取り方などを自分で決められます。育児や介護と両立しやすい体制を自ら整えられるのは、雇用されて働く場合との大きな違いです。

「商談は保育園の送迎後、午前10時から」「夜の会食は受けず、オンライン面談で代替する」など、無理なく続けられる環境を整えると、同じ悩みを持つ女性スタッフが働きやすい職場づくりにもつながります。

「相談しやすさ」が信頼と紹介につながる

相続・離婚・住み替えなど、不動産の売却には話しにくい事情が伴うことも少なくありません。「女性の担当者・経営者の方が相談しやすい」と感じる売主・買主は一定数おり、丁寧に話を聞く姿勢そのものが信頼に繋がります。

顧客からの信頼が積み上がると、紹介やリピートが生まれます。広告費をかけずに売却の相談が集まる状態は、そのまま会社の収益力につながります。

女性経営者向けのネットワーク・支援が広がっている

経営者になると、担当者として働いていた時には接点のなかった経営者同士のつながりが生まれます。業界団体の女性向けの活動などを通じて同じ立場の人と知り合うことで、経営や資金繰りの相談ができるほか、案件の紹介につながることもあります。

自治体や金融機関には女性起業家向けの支援制度もあり、開業時の資金調達で選択肢が広がります。

参照:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)の概要」

仕入れ営業から不動産会社を開業するまでの流れ

経営者になる姿を思い描けても、そこまでの道のりがわからないと実際に挑戦するのは難しいでしょう。開業するときは、仕入れ営業として身につけた物件を見きわめる力や取引先との関係が、そのまま開業後の土台になります。

そのうえで、資格の取得や資金の準備、免許の申請といった段階を順に踏んでいくことになります。ここでは、仕入れ営業から独立開業までの一般的な流れを、5つの段階に分けて紹介します。

1.実務経験を積み、購入判断の基準を明確にする

開業後は、仕入れる物件を自分で判断します。案件ごとに利益が出た理由や見送った理由を記録しておくと、買える物件・避けるべき物件を自分の言葉で説明でき、経営者としての目利きにつながります。

もうひとつ開業後に活きるのが、仕入れ営業で築いた人とのつながりです。連絡をこまめに返す、見送るときも理由を添えるといった日頃の対応の積み重ねが、開業後に物件情報が入ってくるかどうかを左右します。

異業種から不動産業界への転職を考えている女性には、こちらの記事もおすすめです。ぜひご覧ください。

不動産業界への転職を考える女性へ|働きやすさ・職種・独立する方法などを解説

2.宅地建物取引士の資格を取得する

宅建業の事務所には、従業者5人につき1人以上の専任の宅建士の設置が義務付けられています。経営者自身が資格を持っていれば、開業時に有資格者を雇う必要がなく、人件費を抑えられる点がメリットです。

宅建士試験では、民法などの権利関係から法令上の制限、税金の扱いまでを体系的に学べます。契約書や重要事項説明書を自分で確認できるようになり、取引の判断も根拠を持って下せるようになります。

3.事業計画・資金計画を立てる

開業には、事務所の契約費用、免許申請の手数料、営業保証金、開業後数か月分の運転資金などが必要です。

自社で物件を買い取る事業モデルの場合は、開業費用と運転資金に加えて、物件の取得資金も用意しなければなりません。開業前から金融機関に事業計画を説明し、融資の相談を進めておきましょう。

4.宅地建物取引業の免許を申請する

不動産の取引を事業として行うには、宅地建物取引業の免許が必要です。事務所が1つの都道府県内のみなら都道府県知事免許を、2つ以上の都道府県に置くなら国土交通大臣免許を申請します。

免許の通知を受け、営業保証金の供託を届け出れば営業の開始が可能です。ただし供託額は本店で1,000万円と大きいため、保証協会への加入を選ぶ会社も多くあります。

5.不動産業界の保証協会への加入・開業

保証協会に加入すると、本店60万円の弁済業務保証金分担金を納めることで、営業保証金1,000万円の供託が不要になります。レインズの利用や、専門家への無料相談といった支援も受けられます。

開業後は、仕入れ営業時代の取引先から情報をもらいながら、区分マンションなど判断しやすい案件から実績を積むと取り組みやすいでしょう。

経営者になると、取引の一つひとつに対する責任は、会社員として働いていたときよりも重くなります。宅地建物取引業法に基づき、重要事項説明や広告表示のルールを守れていなければ、業務停止や免許取消といった行政処分の対象となり、事業の継続自体が難しくなります。

ここまで仕入れ営業として積み重ねてきた、調査・説明・書面化を丁寧に行う姿勢を続けることが、そのまま会社の信用につながります。

実際に不動産業界で開業した女性経営者のインタビューを紹介

ここでは、実際に不動産業界で開業した2人の女性経営者のインタビューを紹介します。

髙橋惠さん|惠ライフプラン株式会社

大手不動産会社で売買仲介や契約審査を経験した髙橋惠さんは、相続や空き家に悩むお客様一人ひとりと丁寧に向き合いたいという想いから独立し、東京都東村山市で開業しました。協会入会の決め手は、一人で抱え込まずに相談できる環境があったことです。

相続診断士や終活カウンセラーの資格も取得し、地域の士業と連携したワンストップ体制で、高齢のお客様とそのご家族を支えています。人と人とのご縁を取り持つ「街の周旋屋」を目指し、地域に寄り添い続けています。

>>より詳しく髙橋惠さんのインタビューを読みたい方はこちら

陳乃華さん|シティキャリアコンサルタント合同会社

台湾出身の陳乃華さんは、38年続けてきた旅行業の需要がコロナ禍で減少したことを機に、2024年に不動産業を開業しました。旅行業で築いた人脈を土台に、海外や日本在住の外国人への賃貸物件の媒介を中心に事業を展開しています。

再建築不可などの訳あり物件を賃貸として活用し、家賃収入につなげた実績も特徴です。協会入会の決め手は電話対応の親切さで、現在も研修会や交流会でつながりを広げながら、日本と台湾を結ぶ事業に取り組んでいます。

>>より詳しく陳乃華さんのインタビューを読みたい方はこちら

女性の不動産仕入れ営業に関するよくあるQ&A

ここでは、仕入れ営業の仕事に興味を持った女性から寄せられることの多い質問に回答します。

Q1:未経験の女性でも仕入れ営業はできますか。

A:可能です。仕入れ営業は勢いではなく、物件を調べ、条件を整理する積み重ねが成果につながる仕事です。最初は判断しやすい物件から任され、先輩や上司の意見をもらいながら基準を身につけていきます。

Q2:女性だからと軽くあしらわれることはありませんか。

A:そうした場面も、まだあるかもしれません。ただ、相手が見ているのは連絡の早さや、約束が書面で残っているかといった点です。数字と根拠をもとに商談を進め、決めたことを書面に残せば、取引相手として信頼されます。

Q3:女性営業として不安を感じる相手を避けるにはどうしたらいいですか。

A:面談の場所や時間、連絡の取り方を、あらかじめ決めておくことが有効です。以下のような行動を心掛けましょう。

  • 日中に面談を行う
  • 連絡は会社の電話やメールを使う
  • 他の人にも同席してもらう
  • 商談の内容を書面化する

Q4:育休後に関係が切れそうで不安です。

A:休みに入る前に取引先へ連絡し、休業中の担当者と連絡先、案件の進捗状況を伝えておけば、取引が途切れる心配は小さくなります。

復帰後にまた声をかけてもらえるかどうかは、休む前までに積み重ねてきた関係によるところが大きく、日頃の仕事がそのまま支えになります。

Q5:仕入れ営業に資格は必要ですか。

A:業務自体は資格がなくてもでき、働きながら宅建士を取得する人も多くいます。ただ、契約書や重要事項説明書を自分で読み解けるようになると、実務での判断がしやすくなります。

不動産の仕入れ営業は女性ならではの不安をカバーしながら働ける

営業と聞くと、会食の席で人脈を広げる仕事を想像し、家庭との両立に不安を感じる方もいるでしょう。しかし、仕入れ営業の人脈づくりは会食が中心ではありません。

日中の短い面談や現地への同行など、業務そのものが関係づくりの場になり、オンラインでの打ち合わせでも代えられます。

産休・育休も、社内で丁寧に引き継ぎ、取引先に休業中の体制と担当者を先に伝えておけば、取引が途切れる心配は小さくなります。

不動産の仕入れは、物件を見きわめる力、人とのつながり、数字と法律の両面から判断する力が求められる仕事です。ひとつずつ身につけていけば、担当者として活躍することも、自分の会社を持つことも、決して手の届かない目標ではありません。

全日本不動産協会東京都本部は働く女性を応援しています

全日本不動産協会 東京都本部は、東京都千代田区を拠点とする不動産の業界団体です。ご入会いただいた方は、本店60万円の分担金を納めることで、宅地建物取引業を営む際に必要になる「営業保証金1,000万円の供託」が免除されます。

会員は、国土交通大臣指定の指定流通機構「東日本レインズ」を利用できます。弁護士や税理士など、各種専門家による無料相談サポートを受けられるのも、当協会の魅力のひとつです。

近年は女性の会員も増加しており、当協会の活動もより活発化しています。不動産業界での開業をご検討中の方は、ぜひ全日本不動産協会 東京都本部にご相談ください。

監修 村田 よしみ

村田 よしみ

宅地建物取引士 / 東京都知事 第248181号

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