会社員は副業で宅建業を始められる?開業の流れと注意点を解説

「本業をしながら宅建業に関わりたい」「いずれは独立したいけど、いきなり会社を辞めるのは不安」という思いから、会社員を続けたまま宅地建物取引業(以下、宅建業)を副業として始められないかと考える方が増えています。

結論からいうと、要件を満たせば、法律上は本業と兼業する形で宅建業を営むことが可能です。ただし、宅建業は専門的な知識がないまま簡単にできる仕事ではありません。本業か兼業かを問わず、法令に則って業務を行う責任を負います。

本記事では、本業と兼業する形で宅建業を始めたいと考えている方に向けて、確認事項や宅建業免許取得までの手続きを解説します。本業と両立する方法も紹介するので、ぜひ最後まで読んでみてください。

会社員は副業で宅建業を始められるのか

会社員が宅建業を副業として始めることは、法律上は可能です。宅建業免許は個人でも法人でも取得できるため、会社員という立場そのものが妨げになることはありません。

ただし、宅建業免許を取得するには次のような条件をすべて満たす必要があります。

  • 事務所を設置する
  • 事務所ごとに、業務に従事する者5人に1人以上の割合で専任の宅地建物取引士(以下、宅建士)を設置する

特に、会社員は専任の宅建士の「専任性」に注意が必要です。専任の宅建士はその事務所に常勤し、もっぱらその業務に従事すること(常勤性)が求められるため、他の会社に勤務している会社員は、原則として自分自身を専任の宅建士にできません。

会社員が自分で開業する場合は、専任の宅建士を別途確保(雇用など)できるか重要です。

ほかにも、会社員が副業として始める場合は、勤務先の就業規則で副業が認められていることも事前に確認しましょう。なお、公務員は法律により営利企業の兼業が原則制限されるため、宅建業を営むことは認められていません。

参照:国土交通省「宅地建物取引の免許について」

参照:国土交通省「宅地建物取引業者検索」

参照:宅地建物取引業法第31条の3、第25条

参照:宅建業法施行規則第15条の5の3

会社員が副業で宅建業に関わる方法

ひとくちに「宅建業を副業にする」といっても、関わり方はいくつもあります。自分で宅建業免許を取って開業する方法もあれば、宅建業免許を持つ会社の力を借りて関わることも可能です。ここでは、代表的な5つの方法を紹介します。

①自分で宅建業免許を取って開業する

会社員が副業で宅建業に関わる方法としてまず挙げられるのは、自分で宅建業免許を取得し、事業主として不動産取引を行うことです。売買や賃貸の仲介を自分の事業として手がけ、収益も自分のものになります。

一方、事務所の設置や専任宅建士の確保といった開業要件を自分で満たす必要があり、初期費用もかかります。本業と兼業しながら宅建業に本格的に取り組み、将来的な独立や事業拡大を見据える方に適した方法です。

開業する流れについてはこちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。

不動産業開業準備5つのステップとチェックリスト

参照:宅地建物取引業法第25条、第64条の9、第64条の13

②不動産会社と業務委託・フルコミッション契約を結ぶ

自分で宅建業免許を取得せず、既存の不動産会社と業務委託契約を結んで案件に関わる方法です。自分で宅建業免許を取る必要がないため参入のハードルは低いものの、契約先の会社の一員として動くため、自分の事業として営むことはできません。

フルコミッションとは、固定給がなく、成約した取引の成果に応じて報酬が支払われる完全歩合制の契約形態を指します。成果を上げれば高い報酬を得られる可能性がある一方、成約がなければ報酬は発生せず、収入が安定しにくい点はデメリットです。

③エージェント会社に所属して宅建業に関わる

副業で宅建業に携わるときは、エージェント会社に所属することも可能です。エージェント会社のサポートやブランド力を利用できるため、個人で始めるより取り組みやすいのが特徴です。

エージェント会社に所属する場合は、自分で宅建業免許を取得せず、所属先の宅建業者のもとで働く形になります。副業として不動産の営業に関わりたいけど、開業の負担は避けたいという場合の選択肢になるでしょう。

④宅建士資格を活かして重説代行等のスポット業務を行う

宅建士の資格を持っている場合は、資格を活かして、重要事項説明などの業務に単発で関わる方法もあります。宅建士でなければ行えない独占業務を、案件単位で事業者の依頼に応じて担う副業の方法です。

スポット業務は、個人が直接依頼を受けるよりも、宅建業者やエージェント会社からの依頼に応じて案件単位で担う形が中心です。

1件ごとに完結するため始めやすい一方、案件が安定せず継続して収入を得るのは難しい面もあります。空いた時間を活かしたい場合に向いている副業の方法といえるでしょう。

【注意】宅建士資格の名義貸しは禁止されています

宅建士資格を、自ら従事しない宅建業務のために他者へ使用させる行為(名義貸し)は、宅建業法により禁止されています。名義貸しは、宅建士本人の登録消除・業務停止処分、宅建業者の行政処分につながる重大な違反です。

⑤自分で不動産投資をして物件の売買をする

自分で物件を購入し、賃貸に出したり売却したりして収益を得る不動産投資も、広い意味では不動産に関わる副業といえます。賃貸経営や、保有物件を必要に応じて売却する程度なら宅建業免許は不要です。

一方で、自ら売主となって、転売による利益を目的に反復継続して物件の売買を行う場合は、その行為が宅建業に当たり、免許が必要になる場合があります。

なお免許の要否に関わらず、不動産投資には初期費用が必要で、物件価格の下落や空室リスクも伴います。

【参考】副業で宅建業に関わる方法の比較

ここまで紹介した5つの方法を、必要な資格・免許、初期費用、自由度、収益性、リスクの観点から整理すると、次のようになります。

関わり方 免許等の要否 初期費用 自由度 収益の性質 主なリスク
①自分で開業 宅建業免許が必要 高い 高い 成果がすべて自分の収益になる 費用・責任をすべて自分で負う
②業務委託・フルコミッション 不要 低い 中程度 成果報酬が中心 収入が不安定
③エージェント所属 不要 低い 中程度 会社の規定による 所属先に依存することになる
④スポット業務 宅建士資格が必要 低い 低い 案件単位の報酬 収入が不安定
⑤不動産投資 原則不要 物件により高額 低い 賃料・売却益 資産価値が変動する可能性がある

※実際の条件は個々の契約や事業内容によって異なります。

上記のうち、「①自分で開業」が、免許を取得して宅建業を営む方法です。以降の章では、「①自分で開業」を選ぶ場合に必要となる知識や手続きを詳しく解説します。

宅建業を副業で始めることの難しさ

宅建業は副業であっても宅建業法上の責任を負い、簡単にできるものではありません。ここでは、副業で宅建業を始める前に、難しさと責任について知っておいていただきたい点を3つ解説します。

本業か副業かを問わず宅建業法上の責任を負う

宅建業を営む以上、本業でも兼業でも、負う責任は同じです。たとえば不動産の売買では、契約が成立する前に、取引の相手方へ取引条件の重要な事項を書面で説明する義務があります。

重要事項説明と書面交付は宅建士が行う必要があり、内容に誤りや不足があれば、依頼者の判断を誤らせ、損害賠償や行政処分につながるケースもあります。

「副業だから簡単に済ませて良い」という例外はなく、むしろ時間の限られる兼業だからこそ、義務を確実に果たせる体制を整えられるかが問われます。

本業の傍らで安易な取引をすることで信用を損なう可能性がある

1回の不動産取引で動く金額は、数千万円を超えることも珍しくありません。取引の対象は、依頼者の人生のなかでも特に高額な買い物であり、生活の基盤そのものです。

十分な知識がないまま本業の合間に取引を進めると、依頼者に損害を与えるだけでなく、事業者自身の信用も失われます。

宅建業者は免許を受けた専門家として社会的な信頼を託される立場であり、副業として始める場合も、その信頼に応えられるだけの準備と姿勢が求められます。

専任の宅建士の設置をはじめとした体制面の義務がたくさんある

宅建業を営むには、体制面でも整えるべき義務が数多くあります。

代表的なのが専任の宅建士の設置で、宅建業法により、1つの事務所につき業務に従事する者5人に1人以上の割合で置かなければなりません。「専任」とは、その事務所に常勤し、専らその宅建業務に従事することを指します。

ほかにも、標識の掲示、従業者名簿や帳簿の備付け、従業者証明書の携帯など、開業後も守るべき決まりがたくさんあります。

参照:国土交通省「宅地建物取引の免許について」

参照:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法 第三十一条の三」

本業とのバランスを取るのが難しい

副業で宅建業に携わっていると、顧客対応が本業の繁忙期と重なったり、休日が業務で埋まったりすることも考えられます。

無理を続ければ、本業・副業の双方に支障をきたし、健康を損なう恐れもあります。本業と副業の両立を続けられる範囲で業務量を調整することは、長く事業を続けるうえで欠かせません。

会社員が副業で宅建業を始めるメリット

副業で宅建業を営むことにはさまざまな難しさがありますが、一方で収入面や知識・スキルの獲得といったメリットも存在します。ここでは、会社員が副業で宅建業を始める利点を3つ紹介します。

本業の収入を確保したまま挑戦できる

副業で宅建業を始めると、会社員として給与収入を得ながら宅建業に取り組めるため、生活の基盤を保ったまま新しい事業に挑戦できます。

独立してすぐに十分な収益を上げられるとは限らない宅建業において、本業の収入という支えがあることは、精神的にも経済的にも大きな安心材料になります。

焦って無理な取引に走らず、腰を据えて事業を育てられる点も大きなメリットです。

週末・夜間などの空いている時間を活用できる

不動産の相談や内見は、平日日中に働く顧客に合わせて週末・夜間に行われることも多く、空いた時間で対応すれば、平日の仕事が終わった後や休日に相談したい顧客ニーズに応えられます。

時間の制約がある会社員にとって、空き時間を有効に活用できる点は大きなメリットといえるでしょう。ただし対応できる時間が限られる分、業務量の調整には注意が必要です。

将来的に独立するときの準備になる

副業で宅建業を営むことは、将来的に副業から本業へ切り替える際の準備にもなります。副業として取引を経験することで、業務に必要な知識・スキル・実務経験・顧客とのネットワークを少しずつ積み上げることができます。

また、本業へ移行する段階では、自身が宅建士として事務所に常勤できるようになるため、専任宅建士としての専任性を自ら担保できる点も大きなメリットです。

副業時には外部の宅建士を確保する必要があった場合でも、本業化することで体制面のハードルが下がり、より安定した事業運営が可能になります。

いきなり独立するのではなく、本業と兼業しながら小さく始めて事業の実態を確かめられるのは、副業で宅建業に携わるメリットと言えるでしょう。

会社員が副業で宅建業を始めるときの注意点

会社員が副業で宅建業を営むメリットはありますが、あらかじめ理解しておくべき注意点も存在します。ここでは、会社員が副業で宅建業を始めるときの注意点を5つ紹介します。

会社の就業規則に違反しないようにする

副業で宅建業を始める前に、必ず勤務先の就業規則を確認しましょう。会社によって副業が全面禁止になっていたり、許可制や届出制を採用していたりと、対応が異なります。

会社の規則に違反して副業を始めると、注意を受けるだけでなく、場合によっては始末書の提出・減給・出勤停止などの懲戒処分を受ける可能性があります。

宅建業者情報は公開されるため、会社に内緒で始めるのは困難です。就業規則で副業の可否を確認し、許可・届出を済ませてから準備を進めましょう。

収入が安定しない場合がある

不動産取引は1件あたりの金額が大きいですが、成約の頻度が必ずしも安定するとは限りません。特に宅建業を始めたばかりの時期は、顧客の獲得や案件の成約に時間がかかり、思うように収益が上がらないケースもよくあります。

副業で宅建業を営むときは、収入が変動しやすいことを前提に資金計画を立てておくことが大切です。

業務内容によっては一人で担う作業量が大きい

一人で開業する場合、物件の調査・顧客対応・契約書類の作成・法令に基づく各種手続きなど、幅広い業務をすべて自分で担うことになります。本業の仕事をしながら宅建業の業務も進めるには、相応の時間と労力が必要です。

特に、専門的な判断を要する業務や期限のある手続きが重なると、本業との両立が難しくなる場面も出てきます。自分一人で担える業務の量を把握したうえで、副業の事業形態を考えることが大切です。

開業するときは初期費用と固定費がかかる

自分で宅建業免許を取って開業する場合、事務所の準備・免許申請・保証協会への加入など、まとまった初期費用がかかります。

営業保証金(以下、保証金)の供託に代えて保証協会に加入する場合でも、初期費用として100万円前後が必要です。

さらに、開業後は年会費や事務所の維持費といった固定費が継続的に発生します。成約がない時期も固定費は出ていくため、運転資金を含めた資金計画が大切です。

会社員が副業で宅建業を始めるには資格が必要なのか

会社員が副業で宅建業を始める場合、必ず必要になるのは宅建業免許です。免許の申請者自身が宅建士の資格を持っている必要はなく、事務所ごとに専任の宅建士を設置できれば、自分は資格を持っていなくても開業できます。

こうした前提を踏まえ、宅建業に関わるうえで取得しておくと役立つ資格を2つ紹介します。

参照:宅地建物取引業法第31条の3

取得すると良い資格①宅地建物取引士

宅建業を営むうえで、最も直接的に役立つのが宅建士の資格です。事務所には専任の宅建士の設置義務があり、重要事項説明などの独占業務は有資格者しか行えません。

自分自身が宅建士の資格を持っていれば、資格者を雇わずに済む場面もあります。ただし専任の宅建士には常勤性・専従性が求められ、他社にフルタイム勤務する会社員は原則、自分を専任にはできません。

資格を持っていても、本業の勤務形態によっては専任の宅建士を別途確保する必要がある点に注意が必要です。なお、自分が実際には勤務しないのに名義だけを貸す行為は、副業であっても宅建業法違反にあたります。

取得すると良い資格②不動産鑑定士

不動産鑑定士は、不動産の適正な価格を評価する国家資格です。宅建業の開業に必須の資格ではありませんが、鑑定評価書の作成は鑑定士の独占業務であるため、取引の場面で役立つことがあります。

ただし、不動産鑑定士は難易度が高いため、副業として宅建業を始める段階で優先して取る必要はありません。開業する場合は宅建士の資格の方が優先度が高いので、不動産鑑定士は専門性をさらに高めたくなったときに取得することを検討すると良いでしょう。

会社員の副業には「個人事業主」と「法人」のどちらに向いているのか

自分で開業する場合、個人事業主として始めるか、法人を設立して始めるかを選ぶことになります。個人事業主と法人の特徴を理解して、自分に合う事業形態を選びましょう。

個人事業主のメリット・注意点

個人事業主は法人設立のような登記の手間や費用がかからず、税務署への開業届の提出などで事業を始められます。会計や事務の負担も法人より軽いため、副業として小さく始めて感触を確かめたいときに適した形態といえます。

しかし、取引先や金融機関からの信頼度は法人に比べると劣り、事業所得が大きくなると税の負担が重くなるケースがあります。事業の拡大を見据える場合は、どこかの段階で法人化を検討することになります。

法人のメリット・注意点

法人を設立する場合、社会的な信用を得やすく、取引や資金調達の面で有利に働く傾向にあります。また、所得が一定以上になれば、個人事業主より税負担を抑えることも可能です。

一方で、設立には登記の費用と手間がかかり、宅建業を営む旨を定款の事業目的に記載する必要があります。会社員が代表者等に就任する場合は、本業の勤務先の就業規則で役員就任制限や、社会保険の取り扱いなどを確認しなければなりません。

設立後は赤字でも法人住民税の均等割が発生するなど、会社の維持費用や事務負担が続きます。

将来的に事業を本格的に拡大する予定がある場合は、開業当初から法人にするのもひとつの方法です。副業として法人で始めるかは、事業の規模や将来の計画をよく考えて判断しましょう。

会社員が副業で宅建業を始めるための手続きの流れ

ここからは、自分で宅建業免許を取って開業するときの手続きを説明します。書類の準備や審査に加え、事務所の準備や保証協会の手続きも含めると、開業を思い立ってから営業開始までにはおおむね2〜3か月程度を見込み、余裕を持って進めるとよいでしょう。

開業する流れについてはこちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。

不動産業開業準備5つのステップとチェックリスト

ステップ1|事務所を用意する

宅建業免許を受けるには、宅建業を営むための事務所が必要です。副業として小規模に宅建業を始める場合でも、事務所の要件を満たさなければなりません。

事務所は、継続的に業務を行える形態を備え、他の用途の空間から独立していることが求められます。

自宅の一室を事務所とすることも条件次第で認められますが、居住スペースと明確に区分され、独立した出入口や事務スペースが確保されているなど、事務所としての形態を満たす必要があります。

ステップ2|専任の宅地建物取引士を確保する

事務所には専任の宅建士の設置が必要です。割合は「従事者5人につき1人以上」と定められており、自分ひとりで開業する場合は専任宅建士1人で要件を満たせます。

自分が専任の宅建士になるには、宅建士登録と取引士証の交付が完了していることが求められます。

ただし専任の宅建士は、その事務所に常勤し専らその業務に従事する必要があります。他社勤務の会社員は常勤・専従を満たせないため、専任宅建士を確保できるかを最初に検討しましょう。

ステップ3|宅建業免許を申請する

事務所と専任の宅地建物取引士が整ったら、宅建業免許を申請します。免許には、一つの都道府県内にのみ事務所を置く場合の「都道府県知事免許」と、二つ以上の都道府県に事務所を置く場合の「国土交通大臣免許」があります。

例:東京都内だけで開業する場合は、東京都知事免許を申請する

申請の窓口は、知事免許の場合は事務所を管轄する都道府県の担当課です。

東京都では、2025年1月から国土交通省の電子申請システム(eMLIT)を利用したオンライン申請も可能になっています。ただし、手数料の納付については、当面の間、窓口または郵送(現金書留)での対応が必要とされています。

参照:全日本不動産協会東京都本部「宅建業免許とは」

ステップ4|保証協会へ加入する

宅建業を始めるには、取引の相手方を保護するための営業保証金を供託することが宅建業法で義務づけられています。金額は、主たる事務所(本店)で1,000万円と高額です。

しかし、保証協会に加入して分担金を納付すれば供託は免除され、主たる事務所の分担金は60万円で済みます。

保証協会には、公益社団法人不動産保証協会と公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会の2つがあります。このうち不動産保証協会は全日本不動産協会(以下、全日)を母体とする団体で、不動産保証協会に加入するには全日グループへの同時加入が必要です。

参照:全日本不動産協会東京都本部「加入〜開業までの流れ」

参照:宅地建物取引業法施行令第2条の4、第7条

ステップ5|従業者証明書・標識・帳簿などを準備する

宅建業免許を受けて営業を開始した後も、宅建業者として継続的に整えるべきものがあります。宅建業者に必要なのは、主に次のようなものです。

  • 事務所の見やすい場所に標識(宅地建物取引業者票)を掲示する
  • 従業者名簿と業務に関する帳簿を備え付ける
  • 業務に従事する者に従業者証明書を携帯させる

上記はいずれも宅建業を開業した後の義務で、副業として営む場合も必要です。兼業で宅建業を営むときは、開業後の準備も含めて計画を立てておくとよいでしょう。

会社員が副業で宅建業を始めるために必要な資金の目安

今回は、東京都内で全日本不動産協会東京都本部(以下、全日東京)を通じて開業する場合の開業費用の目安を紹介します。内訳は次のとおりです。

項目 金額の目安
宅建業免許申請費用(東京都知事免許) 33,000円
弁済業務保証金分担金・協会入会金(4団体総額) ~972,000円※
年会費(初年度は入会月により月割り) 入会月により変動
事務所費用(賃借の場合の初期費用・内装等) 数十万円〜
(賃貸の敷金・礼金等を含む)
備品費用(机・電話・パソコン・名刺・印鑑等) ~数十万円程度

※パッケージプラン(4団体同時加入)適用の場合(適用は2027年3月31日申込受付分まで)。金額は変わることがあるため、開業時は最新情報をご確認ください。

開業後も、各団体の年会費や事務所の賃料・光熱費などの固定費が発生します。副業として小さく始めるなら、自宅を事務所にすることで固定費を抑えるのもひとつの方法です。

ただし、自宅を事務所として使用する場合は、事務所としての独立性が確保されていることが必須です。居住スペースと明確に区分されているか、事務机・書類保管スペース・固定電話などが適切に設置されているかなど、細かな要件があります。

自宅事務所の可否や具体的な要件は、東京都の審査基準によって判断されますので、開業前に必ず東京都庁(不動産業課)へ確認してください

会社員が副業で宅建業を成功させるために大切なポイント

宅建業免許を取得して、開業することができても、事業として成り立たせるには、継続的な取り組みと戦略が必要です。ここでは、副業として宅建業に取り組むうえで押さえておきたいポイントを3つ紹介します。

市場調査を行ってから事業形態を決める

成功させるには地域の需要や競合を調べ、使える時間・資金と照らし合わせたうえで、取引の対象とする地域や事業形態を決めることが大切です。

売買仲介と賃貸仲介では、必要な知識も収益の作り方も異なるため、無理なく続けられる形を見極める必要があります。特に副業は宅建業の業務に充てられる時間が限られるため、対象を絞って事業を展開すると良いでしょう。

物件の仕入れや顧客のネットワークを構築する

宅建業は、取り扱う物件や顧客とのつながりが事業の土台になります。物件の情報を得る方法や、集客・顧客の探し方を、開業する前から時間をかけて築くことが大切です。

副業として始める場合、すぐに大きなネットワークを持てるわけではありません。本業で培った人脈や、地域での地道な信頼づくりを通じて、少しずつ経営基盤を広げていきましょう。

守秘義務やコンプライアンスの遵守を徹底する

本業との兼業で忙しくても、守秘義務やコンプライアンスの遵守を怠ってはなりません。取引で知り得た顧客の個人情報や取引内容を外部に漏らさないようにしましょう。

また、「自分の利益」と「果たすべき義務」が衝突し、公平な判断ができなくなる「利益相反」という状態が生じないようにすることも大切です。

宅建業は信頼が重視される事業のため、法令と倫理を守る姿勢が、長く事業を続ける基盤になります。副業だからと気を緩めることがないよう、常に意識しておきましょう。

会社員が本業と副業を両立させる方法

会社員が宅建業を副業として続ける場合、本業との両立が大きな課題になるケースがよくあります。限られた時間で2つの仕事を同時に進めるには、工夫が必要です。ここでは、本業と副業を両立させるための具体的な方法を紹介します。

時間の配分と業務の優先順位をつける

会社員が宅建業を兼業するには、本業の勤務時間を確保したうえで、副業に充てられる時間を現実的に見積もることが大切です。副業に使える時間を把握したら、次は優先すべき業務を明確にし、限られた時間を効率よく配分しましょう。

業務内容ごとに必要な時間を理解し、無理のない範囲で事業計画を立てることが大切です。

問い合わせ・内見など顧客対応を工夫する

本業がある会社員のなかには、平日日中の対応が難しい方が多いでしょう。しかし宅建業の顧客対応は、平日の日中に発生する場合もあります。

顧客対応については、問い合わせへの返信を勤務時間外にまとめて行う、内見の日程を週末に調整する、あらかじめ対応可能な時間帯を顧客に伝えておくなど、状況に合わせて工夫することが大切です。

接客の質を保つため、担当する案件の数を無理に増やしたり、事業の範囲や規模を大きくしすぎたりせず、ちょうど良い業務量を維持することも心掛けてみてください。

外注やツール活用で業務を効率化する

本業があると副業に充てられる時間は限られるため、すべての業務を自分一人で抱え込まないことも大切です。

書類作成や物件情報の管理などにITツールを使う、専門的な手続きを士業などの専門家に依頼するといった形で外部の力を活用すれば、自分が本来注力すべき業務に集中できます。

副業から本業に切り替えるときの判断基準

副業として宅建業を続けていると、本業に切り替えて独立を目指すという選択肢が出てくる場合があります。ここでは、副業から本業に切り替えるときの判断基準を3つ紹介します。

収益・顧客数・依頼の数が安定しているか

副業を本業に切り替えるか判断するときは、収益・顧客数・依頼の数の安定性を基準にしましょう。一時的に大きな取引があっても、それが継続するとは限りません。

本業にするには、長期間にわたって安定して収益が上がり、顧客や依頼の数が確保できているかを見極める必要があります。

副業としての実績を積み重ね、変動がある中でも一定の水準を維持できる状態になっているかを、判断の目安にしてみてください。

本業に切り替えても生活できるか

本業を辞めると、給与収入がなくなります。宅建業を本業にする前に、宅建業の収益だけで生活を維持できるか、当面の運転資金や生活費の備えがあるかを、具体的に確認しましょう。

宅建業を自分で営むと収入が変動しやすくなることを踏まえ、余裕を持った資金計画を立てたうえで本業に切り替えることをおすすめします。数か月分の生活費を確保しておくと、一時的に収益が下がったときの備えになります。

本業化によるリスクが許容範囲になっているか

本業にすると収入が不安定になるだけでなく、事業に失敗すれば初期費用を取り戻せず、負債を抱えたり生活費を圧迫したりする可能性があります。

本業に切り替えるときは、家族の生活や将来設計に照らし合わせて、どこまでであればリスクを許容できるかを考えることが大切です。

会社員が副業で宅建業を始めるときによくある質問

ここでは、会社員が副業で宅建業を始めるときによくある質問に回答します。

宅建に合格しただけで副業を始められる?登録は必要?

宅建試験に合格しただけでは、宅建士として業務を行うことはできません。試験に合格した後に、都道府県知事による登録と、取引士証の交付を受ける必要があります。なお、宅建士登録には、2年以上の実務経験または登録実務講習の修了のどちらかが必要です。

また、宅建業を営むには、資格とは別に事業者としての宅建業免許が必要です。合格は出発点で、そこから登録・免許取得の手続きが必要です。

宅建士資格がなくても宅建業の副業はできる?

宅建業への関わり方によります。不動産会社と業務委託契約を結んだり、エージェント会社に所属したりして副業をする場合は、資格がなくても宅建士の独占業務範囲外での業務に関われるケースがあります。

一方、自分で宅建業免許を取って開業する場合、事務所に専任の宅建士を設置する必要があります。

知識がないまま取引をしても大丈夫?

十分な知識のないまま取引を行うのは避けるべきです。宅建業は、宅建業法をはじめとする多くの法令に則って行う必要がある事業です。取り扱う金額は大きく、依頼者の生活に直結します。

知識不足のまま取引を進めれば、依頼者に損害を与え、自身も行政処分や損害賠償の対象になるおそれがあります。副業でも本業と同じ責任を負う以上、必要な知識を身につけ、法令に則って業務を行うことが不可欠です。

会社に副業がバレることはある?

宅建業者情報は名簿として公開され、誰でも閲覧できるため、内密に営むことは現実的ではありません。

まずは就業規則で副業の可否と必要な許可・届出を確認し、正規の手続きを踏んでから始めましょう。

不動産業界が未経験でも宅建業を始められる?

未経験でも、要件を満たせば宅建業免許を取得して宅建業を始めること自体は可能です。ただし、宅建業は専門的な知識やスキル、実務が求められる事業であるため、未経験から始める場合は、事前の学習や情報収集がより重要になります。

業界団体が実施する開業支援セミナーや研修、相談窓口などを活用し、基礎的な知識と手続きの流れをよく理解したうえで開業しましょう。

週末・土日だけ、在宅でも副業はできる?

時間については、顧客対応や内見は週末・勤務時間外でも進められます。ただし専任の宅建士には常勤性が求められるため、週末・夜間のみで満たせるかは営業体制と合わせて確認が必要です。

場所については、自宅で営むこと自体は可能です。ただし宅建業を営むには独立性のある事務所が必要で、事務所なしでは営めません。要件を満たせば自宅の一室も使えます。

まとめ|宅建業は副業でも本業と同じ責任が伴う

会社員が宅建業を副業として始めることは、要件を満たせば法律上は可能です。本業の収入を確保しながら挑戦でき、将来の独立や事業拡大への準備にもなります。

ただし、宅建業は本業の合間に手軽にできる仕事ではありません。本業か兼業かを問わず法令に則って業務を行い、依頼者の信頼に応える責任を負います。

まずは勤務先の就業規則を確認し、免許の要件・必要な資金・手続きなどを正しく理解したうえで、腰を据えて取り組めるか検討してみてください。

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不動産業界での独立・開業をお考えの方は、まずはお気軽にご相談ください。入会の流れや必要書類については、以下のフォームよりお問い合わせいただけます。

監修 村田 よしみ

村田 よしみ

宅地建物取引士 / 東京都知事 第248181号

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